太陽と月

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出逢い そして救出

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炎星会の篠崎から引き出したい情報は引き出した。

それでも突発的な予定変更の可能性がないわけではなく、もう暫くは盗聴と監視を続ける必要があるだろうとの結論が出た。

そして未だに蒴也が命を狙われていることに変わりはなかった為、幹部達も蒴也をこのアパートに軟禁…いや隠しておきたかったのだ。

盗聴器の音を拾うイヤホンからは、賑やかな夜を楽しむ酔っぱらいの声と楽しませる女の声だけが聞こえていた。

今日は大した動きは期待できないだろう。

そうなれば蒴也の意識はイヤホンよりもアパートの隣室へと向かう。

今夜も玄関のドアが開き、そして閉まる音が聞こえた。女が出掛けたのだろう。間もなく聞こえてきたのは、やはり幼い子供の声だった。
言葉として耳に届くほど鮮明ではないが、音としてはハッキリと聞こえてくる。

女は幼い子供を1人部屋に残し  毎晩どこに行っているのか。
このアパートを生活の拠点としているのだ。裕福ではないだろう。
夜の仕事をしながら子供を育てているのか。
それにしても  日中は子供の声など聞いたことがない。
大家からも女の一人暮らしだと聞いている。

他人がどうであろうと、どうなろうと気に留めることなく生きてきた蒴也が、隣から聞こえる子供の声に何故か違和感のような不安のような、今まで抱いたことのない感情を抱いていた。

もっと言えば、その声が蒴也に助けを求めているように聞こえてしまうのだ。

それはただの錯覚だろうか。

自分が何を考えているのか、考えようとしているか、珍しく混乱する蒴也だった。

夜明け近くになって、女が帰宅したのだろう。特に気を遣う様子もなく玄関のドアが開く。

子供の声と引き換えにシャワーの水音が聞こえ、
ついでドライヤーの音が聞こえる。  洗濯機の回る音と掃除機の音も聞こえる。そして間もなく静かになった。
夜明け前から、そんな音がすることを除けば至って普通の生活音だろう。

隣人の生活は日々大した変化もなく、強いて言えば女の出掛ける時間が少し早かったり、帰る時間が少し遅かったりするだけで、これと言って特筆するようなこともなく過ぎていた。

しかし、炎星会とチャイニーズマフィアの取 引であろう日が目前に迫り、蒴也がアパートから組事務所に戻ろうと言う日に事件は起きた。

夜も空けぬうちから、吾妻と運転手を務める組員、麻生が蒴也の使っていた部屋を片付けていた。
大方片付いた頃、隣室から女の金切り声と子供の鳴き声が聞こえたのだ。
しかも、いずれの声も常軌を逸したような聞いたことのないようなものだった。

炎星会絡みのアクシデントが脳裏を過ったのだろう。吾妻と麻生の視線が鋭く交わったと同時に蒴也は部屋を飛び出していた。

部屋から飛び出した蒴也は迷うことなく隣室のドアを蹴破った。
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