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27話 カミングアウトはラブストーリー並みに突然始まる

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 どうしよう…
 どうしようどうしようどうしようどうしよう……!

 どうすれば、どうすればいい?
 考えろ、考えるんだ平本このは。今この状況をどうすれば収められる?

 でも、こんなことを考えても……

 私は前にいる1人の男子を横目で見た。

 彼はたしか、昔、私に告白してきた、
 なのに、急に記憶喪失ペテン師呼ばわりはどうなんだろう。

 ただ、彼は恐ろしくキレ者な感じがする。相手に有無を言わせない謎のオーラを纏っている。

 さあ、どうする?
 逃げ道は、黙秘以外にあるのだろうか。
 いや、それとも。元を辿れば。

 そもそも、逃げる必要があったのか?


 -------------------------


 私は、走っていた。
 元来た道を、走っていた。
 途中訝しげに私を見てくる同級生や後輩とすれ違った。声をかけてくる人もいたけど、全て無視して走り去った。

 「はあ、はあ、はあ…!」

 背中のバックが嫌に重い。踏み出すたびに上下に揺れて、鬱陶しい。もうちょっと軽くすればよかったと少し反省した。

 私は、走っていた。
 元来た道を、走っていた。
 それは、あいつへ謝罪するためなのか、記憶を無くした友達に会うためなのか、いよいよ私にはわからなかった。が、友達との楽しい帰宅をほっぽりだして学校へ戻っていくぐらい、私の中の"何か"はとても大きいものだった。

 私らしくない。実に私らしくない。こんなの、浅田萌夏がすることじゃない。強かった私が、することじゃない。

 クラスではそこそこ中心的な立ち位置にいるし、友達もいっぱいいる。でも、私はさっき気づいてしまった。私は卑怯で、弱くて、脆くて、臆病で、最低だったことに。

 そして、気づいたら走り出していた。体が勝手に振り返って走っていた。一体どこへ向かっているのか、そんなことも定かじゃないまま、ただがむしゃらに足を動かしていた。

 きっと、私の中に溜まっていた何かが、溢れに溢れ出したのだろうと、真っ白になりかけの頭で考えた。今更遅いのかもしれない。もう、戻れないから。切り開いた道をもとに戻すことの難しさは、私が1番知っているから。やり直すことも、過去を改変することも、絶対に不可能だから。

 でも、未来なら、変えられる。
 未来を変えることは、すなわち自分を変えることだから。

 あいつと仲良くするなんて、あいつに謝るなんて、ものすごく癪に触るし死んでも御免だけど。
 少しだけなら──


 私は校門をくぐり長ったらしいタイルの並木を全速力で駆け抜け靴箱にローファーを放り込み内靴も履かずに保健室へ向かう。すると、保健室の外には川本先生と松原がいた。

 「あ、あの!──君は、」

 私が口を開こうとすると、川本先生がそれを止めた。
 直後。
 保健室の中から、衝撃的な言葉が聞こえてきた。

 「おい平本。はっきり聞くけど、お前、記憶喪失じゃねえだろ?」
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