俺のせいで不登校になったクラスの美少女が記憶喪失になって再登校してきた件

タナ

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19話 アウトブレイク

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 俺は急ぎ足でこちらに向かってくる松原ともう1人の先生を眺めた。松原と目が合うと、俺は意味深にウインクをしておいた。松原は色々と察したらしく、あちらもウインクを返してきた。ちなみに意味は特にない。

 「ど、どうしたんですかこれー!?」

 開口一番そう言ったのは保健室の川本先生だ。川本先生は背が小さく言動もふわふわしており、おまけに貧乳であるため一部のロリコンから「天使」「川ちゃんマジ天使」「結婚してくれ」などと日々言い寄られてはやんわり断っている、マジて…優しい先生だ。

 「ああ、これですか。戦争です」
 「何の戦争!?」
 「1人の女を賭けた2人の男の悲しき戦記です」
 「ラノベみたいに言わないでくださいー!」

 と、つっこめるくらいにノリはいい。

 「にしてもめちゃくちゃ派手にやったな。やべえな…」

 俺が独り言を言うと、松原は、

 「ま、どうにかなるだろ。中田先生には徳丸が手伝ってほしいと言って来たって伝えてるし、道中確認したけど誰もここへは入ってきそうになかったから」

 と、頼んでもない後始末までしてくれていることを告げた。彼も色々と思うところがあるのだろう。

 「あ!」

 川本先生が急に奥を指差す。振り向くと、そこにはあのままの態勢でピクリとも動いていない平本がいた。

 「平本さん!どうしたの?」

 先生が駆け寄る。どうやら知り合いだったようだ。

 「──君、一体何があったんですかー!?ちゃんと説明来てくださいー!」

 もしかしたら川本先生は怒ったつもりだったのかもしれないが、語尾についた「ー」のせいで威厳が一切感じられなかった。
 別に先生に隠す理由も特にないので、一部始終を(松原の過去も含めて)話した。

 「そういうことだったんですか…」

 どこから取り出したのか、平本に毛布をかけながら先生がつぶやく。徳丸もたまに「うう…」とうなだれていた。反省なのか苦しいのかどっちかにしてほしい。

 「これは正直案件ですよー?スクールカウンセラーすくーるかうんせらーが女子生徒を暴行だなんて、とんでもない特ダネですから」

 まるで自問するように先生が言う。徳丸がもう一回うなだれた。まあ、このままいけば確実に解雇だし、下手したら裁判沙汰になるかもしれないから当然といえば当然だろう。

 「で、どうするの?」

 松原が言う。口調が元に戻っていた。

 「ま、まずは、だけど」

 よっこらせと、俺は仕切りなおすように立ち上がった。

 「徳丸」
 「・・・なんだ」

 これは元々松原の事件だ。だから、俺は松原に忖度して、はじめにこう火蓋を切った。

 「お前があの事件について、知りうる限りの情報を教えてもらおうか」
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