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18話 救出

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 俺は走って平本を探しに行った。
 あまり体力には自信がないから、早く見つけられたらいいんだけど……

 「広いな……」

 俺は呟いた。校舎とだけあって、とても広い。さらに複雑に入り組んでいるし、瓦礫は落ちているし、道は狭いしでとても全速力では走れない。
 と、

 「さっさと脱げって言ってるだろ!」

 男の声が聞こえた。明らかに文言からして徳丸だった。
 俺は声のする方へ向かって走る。
 3階の角(?)らへんへ着くと、はたしてその奥に2人はいた。

 徳丸は平本を押し倒そうと必死だった。平本は「え、ちょっと、あの」とか言いながら拒絶していたが、あの様子では犯されるのは時間の問題だろう。

 俺は携帯を取り出しカメラモードを起動した。
 こういう場合、証拠がないともし裁判になったときとかに立憲できないから、ものすごく不本意だが少しだけ徳丸にやらせることにした。
 ガタンと変な音がして、平本がこける。その上に徳丸がのしかかるように覆いかぶさった。

 「な、先生、やめてください!」

 平本が悲痛に叫ぶが、徳丸は興奮と性欲で聞こえていないようだった。
 カメラが小刻みに手ブレしてるのは気のせいだろう。

 「前からずっと気になってはいたんだが…」

 徳丸が平本の手を押さえつけながら言う。

 「こんなエロい体持て余して、誘ってたんだろ?あ?」

 平本は恐怖で抵抗できない様子だった。

 そして、ついに徳丸が平本の制服をビリッと破ったところで、俺の理性が死んだ。

 -------------------------

 「はいどうもこんっにっちわー!!!」

 大声で叫びながら徳丸に後ろから掴みかかると、強引に引き剥がして投げた。

 「てめえよくもやってくれたなこのクソカウンセラーが!!冥土の土産に一発持ち帰れやオラッ!!」

 とりあえず顔面に一撃入れて怯ませる。その隙に平本を抱えて隅に逃がせた。

 「平本、大丈夫か?」

 大丈夫なわけないが、一応聞いておいた。平本は唐突な第三者の介入に混乱していたが、外傷はそんなに目立っていなかった。

 「あとで保健室に連れてってやる。そこでおとなしくしてるんだぞ」

 俺は言い終わると、振り返って徳丸の方へ向いた。
 気のせいだったかもしれないが、後ろから小さく「ありがとう」と聞こえてきた。


 俺は人生の中で最高にノッていた。
 まず起き上がって殴りかかってきた徳丸の拳をしゃがんでかわし、そのままの体勢で股間を思いっきり蹴り上げる。あいつが悶絶している間に立ち上がり、反転して後ろ回し蹴りを顔面に叩き込む。ヨロヨロと千鳥足になった隙にアイアンクローをかけ、そのまま地面に投げ捨てる。鈍い音がすると同時にのしかかって胸倉を掴んだ。

 「どういうつもりだ?」

 俺が頭を冷やしながら問う。徳丸は完全にピヨっていた。

 「お、おおおおお俺はた、ただ……」

 上手く脳が働かないのか、凄く片言で喋ってきた。

 「ただ?」
 「い、い一時のふらふらふらふら不埒なあれというか、よよ欲望がおお抑えきれなかっttたというか、」
 「犯して束縛して罵倒してめちゃくちゃにしたかったんだろ?」
 「うう……」

 もはや苦しいからなのか答えに詰まっているからなのかわからないし俺の質問も意味不明だったが、俺はとりあえず聞いておく。

 「どうして、それを抑えられなかった」
 「おえっぷ……そ、それは、」
 「フェチか?」
 「ま、まあそんなところだ。実は俺結婚してなくてさ…」
 「つまり、筆おろしってことか?」
 「俺、昔から少しロリコン趣味があって、高校のときとかテスト週間に禁欲したら終わった途端に抑えられなくなるんだ」

 頭が働いてきたのか、徳丸が流暢に言い始める。
 質問も受け答えも支離滅裂で、何を話しているのか傍から見たら全くわからなかっただろうが、何故か会話が成り立っていた。

 「だからと言って、生徒に手を出すのはやばいだろ」
 「……ああ。昔ここで強姦事件があったことも知ってる。だけど、みんなもう忘れてるかなって」
 「当時からいる先生も大勢いるじゃないか」
 「だけど、俺の担当じゃなかったから」

 徳丸が言った。

 「とにかく、俺は性的嗜好が特殊でよ。はあ……」

 徳丸が溜息をつく。

 「とんでもないことをやってしまった……君に殴られて我に返ったよ。すまない」
 「謝るならあっちに謝れ」

 俺は平本を指差して言った。

 「……そうだな。すまない」

 徳丸が隅で縮こまっている平本に言った。
 平本は未だ怯えているように見えた。

 「多分、俺と一緒にお前に気づいた友達が保健室の先生を呼んでるはずだ」
 「保健室?」
 「さっき目で合図した」
 「いや、そうじゃなくて、」

 徳丸が何かを言いかけたが、俺が手で制した。

 「何も言うな。これは俺達の都合だから」

 俺はそう言って、階段を登ってくる親友を眺めた。

 終始徳丸と俺の言動がおかしかったのは、決して軽い脳震盪を起こしてたからとかただ単に三半規管が弱いからとか、断じてそういうのではないからこれ味噌な。
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