俺のせいで不登校になったクラスの美少女が記憶喪失になって再登校してきた件

9話 たったそれだけ

　物静かだなーというのがあいつの第一印象でした。

　確かに友達はいるんですけど、ただ頷いているだけっていうか、そこにいるだけっていう感じがしました。言葉は悪いですけど、付属品、みたいな。

　平本自体はそんなこと気にもしてなかったらしいんですけど、俺は妙に気になっちゃって。本当に楽しいのか？ってね。

　で、いつぞやの席替えであいつと同じ班になったのがすべての始まりです。

　あいつは孤立していた俺を見て「なんで独りぼっちなの？」って聞いてきたんです。信じられますか？なんでって聞いてきたんですよ。付属品で常に無表情のあいつがです。
　理解できませんでした。お前の方こそ独りぼっちじゃないかと。まるで俺だけが独りぼっちな風に話しかけてくるなと。俺、キレちゃったんです。

　でもあいつはずっと俺に話しかけてきて。どれだけ追い返しても、どれだけひどくあしらっても、話すことをやめなかった。
　あいつになんでって聞いたら、
「友達がいないんでしょ？なら、私が友達になってあげる」
　って。

　それでなんですかね。男子なんて単純だから、少し優しくされただけで惚れちゃう。チョロい生き物です。

　ま、と言うのがあの日までの経緯ですよ。
　その後はご存知の通りです。俺が告ってあいつが振った。たったそれだけ。


　たった、それだけ。


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　羽田から函館へ向かう飛行機が墜落したというニュースは、日本だけでなく全世界に衝撃を与えた。

　墜落した飛行機を開発していたのはアメリカの某大企業で、性能面でも安全面でも他社の追随を許さない、絶大な信頼を持つ企業だった。

　だが、その信頼は一瞬にして瓦解してしまった。

　その飛行機に向かって送られた一種の妨害電波。たったそれだけのために、乗客乗員の殆どが命を落とし、一つの企業の株価が暴落し、果ては航空産業の信頼までも失墜させた。

　被害者の遺族は裁判を起こすための会を立ち上げ、全面的に勝訴した。
　莫大な慰謝料、国を挙げての謝罪、世間からの祝福の声。

　果たしてそれは、本当に遺族の心を満たすのだろうか。

　そう、例えば、あのたった一人生き残った少年のように。