5 / 30
4話 正直
しおりを挟む
早くも半日が過ぎ、時間は昼休憩に入ろうとしていた。
俺がいつものように他クラスに行こうと準備していると、どこからか女子達がこちら側へ歩いてくる。よく見たら、今朝、平本を囲んで尋問していた奴らだった。
先頭にいるのは浅田。彼女は俺の机の前で立ち止まり、凄い形相で睨んでくる。やっぱりかわいい顔が台無しだった。
「んだよ」
俺は浅田たちの方を見向きもせずに言う。
浅田が表情を少しも変えずに言った。
「先生の話、聞いた?このは、記憶喪失なんだって」
俺は何も言わず、ただ黙々と昼食を準備する。
「このは、自分のキャパシティをオーバーさせてしまったんだって。ストレス溜め過ぎたって。聞いてた?」
「聞いてたさ。よくあることなんだろ?」
心なしか自分の口調が厳しくなっている気がする。
「そうみたいだね」
浅田は呆れるような、怒っているような、なんとも言えないため息を吐いた。
「でさ、私考えてみたんだよ。なんでこのはがあんなことに、」
「前置きが長えんだよ。さっさと要件だけ伝えろ」
俺がキレ気味に言うと、浅田は一瞬怯んだ後、声を荒げて激昂した。
「な……な、何なのよあんた!犯人のくせに、このはを苦しめたくせに、何よ!もう少し反省しなさいよ!!」
「犯人って何だよ。俺は犯罪者じゃねえぞ」
「ふざけないで!!」
浅田が机をバン!と叩く。クラスメートたちの視線が痛い。
「あんたが……あんたが……!」
俺は浅田が一体誰に向かってキレているのかわからなかった。
「あんたがこのはにとどめを指したのよ!あんたがあのときあんなことを送らなければ、このははこんな風にならなかった!」
「あんなときとかあんなこととか知るかよ」
「とぼけないで!」
浅田が俺の胸ぐらを掴んだ。息ができない。苦しい。
というか、後ろの奴らは何しに来たんだ。
「あんたにとっては軽い気持ちのことだったのかもしれないけど、このはにとっては凄く辛いことだったんだよ!どれだけ悩んで返信したか……あんたにはそれがわかってるの!?」
遂に他クラスの奴等まで野次馬に来た。そろそろやめてほしい。
「で、俺は何をしろと?」
「きっ……」
浅田が黙った。歯ぎしりの音が聞こえる。
「とどめだが何だか知らんけど、俺は別に平本を苦しめたつもりはない。もういいか、松原達が2組で待ってんだけど」
俺はそう吐き捨てて、さっさとその場を後にした。
人は皆、素直にはなれないものだ。
俺がいつものように他クラスに行こうと準備していると、どこからか女子達がこちら側へ歩いてくる。よく見たら、今朝、平本を囲んで尋問していた奴らだった。
先頭にいるのは浅田。彼女は俺の机の前で立ち止まり、凄い形相で睨んでくる。やっぱりかわいい顔が台無しだった。
「んだよ」
俺は浅田たちの方を見向きもせずに言う。
浅田が表情を少しも変えずに言った。
「先生の話、聞いた?このは、記憶喪失なんだって」
俺は何も言わず、ただ黙々と昼食を準備する。
「このは、自分のキャパシティをオーバーさせてしまったんだって。ストレス溜め過ぎたって。聞いてた?」
「聞いてたさ。よくあることなんだろ?」
心なしか自分の口調が厳しくなっている気がする。
「そうみたいだね」
浅田は呆れるような、怒っているような、なんとも言えないため息を吐いた。
「でさ、私考えてみたんだよ。なんでこのはがあんなことに、」
「前置きが長えんだよ。さっさと要件だけ伝えろ」
俺がキレ気味に言うと、浅田は一瞬怯んだ後、声を荒げて激昂した。
「な……な、何なのよあんた!犯人のくせに、このはを苦しめたくせに、何よ!もう少し反省しなさいよ!!」
「犯人って何だよ。俺は犯罪者じゃねえぞ」
「ふざけないで!!」
浅田が机をバン!と叩く。クラスメートたちの視線が痛い。
「あんたが……あんたが……!」
俺は浅田が一体誰に向かってキレているのかわからなかった。
「あんたがこのはにとどめを指したのよ!あんたがあのときあんなことを送らなければ、このははこんな風にならなかった!」
「あんなときとかあんなこととか知るかよ」
「とぼけないで!」
浅田が俺の胸ぐらを掴んだ。息ができない。苦しい。
というか、後ろの奴らは何しに来たんだ。
「あんたにとっては軽い気持ちのことだったのかもしれないけど、このはにとっては凄く辛いことだったんだよ!どれだけ悩んで返信したか……あんたにはそれがわかってるの!?」
遂に他クラスの奴等まで野次馬に来た。そろそろやめてほしい。
「で、俺は何をしろと?」
「きっ……」
浅田が黙った。歯ぎしりの音が聞こえる。
「とどめだが何だか知らんけど、俺は別に平本を苦しめたつもりはない。もういいか、松原達が2組で待ってんだけど」
俺はそう吐き捨てて、さっさとその場を後にした。
人は皆、素直にはなれないものだ。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

平凡な高校生活を送る予定だったのに
空里
恋愛
高校生になり数ヵ月。一学期ももうそろそろ終わりを告げる頃。
僕、田中僚太はクラスのマドンナとも言われ始めている立花凛花に呼び出された。クラスのマドンナといわれるだけあって彼女の顔は誰が見ても美人であり加えて勉強、スポーツができ更には性格も良いと話題である。
それに対して僕はクラス屈指の陰キャポジである。
人見知りなのもあるが、何より通っていた中学校から遠い高校に来たため、たまたま同じ高校に来た一人の中学時代の友達しかいない。
そのため休み時間はその友人と話すか読書をして過ごすかという正に陰キャであった。
そんな僕にクラスのマドンナはというと、
「私と付き合ってくれませんか?」
この言葉から彼の平凡に終わると思われていた高校生活が平凡と言えなくなる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる