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第Ⅰ章 幕間

章間1 出会い

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 とある闇夜。
 この日、1人の少年と王が出会った。

 少年は王に剣術と魔法を習い、王は少年に高度な文明を習った。

 王は、己の悲願を叶えるために。
 少年は、ある少女を取り戻すために。


★★★


 ラグナは集中していた。
 両手を前に突き出し、掌をゆっくりと重ねあわせると、目をつぶり呪文を唱える。
「獄炎は天地万物を紅蓮に燃やし、すべてを無に帰す業火となる…」
 ラグナの手から赤色の光が輝く。
「ヘルガイア!」
 ラグナは開眼し掌に力を込めた。が、掌からは火球程度の威力のものしか繰り出されなかった。
「はあ…また失敗だ…」
 ラグナは喘いだ。
 元々ラグナは魔力が高く、魔法使いに向いていた。まだ魔術検定を受けてないから、白魔術適正なのか黒魔術適正なのかは不明だが、あの時代に黒魔術適正の人間は99.9%存在しない。したがって、自動的に学校で白魔術を学ぶことになる。
 ラグナは持ち前の魔力の高さを生かし、持久戦や守り勝つことが得意だった。
 しかし300年前となると話が変わってくる。
 この時代の魔物は攻撃力が非常に高く、一撃必殺や即死攻撃を平気で連発してくる。そのため防戦一方だといつの間にかやられてしまうのだ。
 学校でほとんど攻撃系の授業を受けなかったラグナにとって、攻撃魔法は未知の世界であるため、手探りで会得しなければならなかった。
「くそ…何でうまくいかないんだ…」
 ラグナは己の才能を悲観した。

「苦戦してるみたいだな、少年」
 そこへ、1人の男が声をかけた。
 長く伸ばした髪と高い鼻。服の上からでもわかる、隆々と鍛えぬかれた筋肉。
 そして何よりも、美しい碧眼金髪。
 ラグナはその人物が何者か、一発で見抜いた。
「ユ、ユーサー…!」
 ラグナはその男の名を口にした。

 古代ブリテン王ユーサー。
 遥か昔、西洋一帯を完全に支配し、大陸の殆どを我のものにした絶対的帝王。
 その圧倒的な権力は後世まで伝わっている。

「ほう?私の名前を知っているのか」
 ユーザーが言う。
 やっぱりそうだ、と胸が高鳴った。
「な、なぜここにブリテン王が…」
「私の領土に旅人が来たと連絡が入ってな。一体どんな輩なのか気になってね」
「は、はあ…」
「ふふ。そんなにかしこまらなくていいさ」
 ユーザーは優しく微笑んだあと、今度は不敵に笑ってみせた。
「少年よ、もしやそれは魔法の練習か?」
「え、ええ。ですが、あまりうまくできなくて…」
 ラグナはつぶやく。
 それを聞いた王は、ラグナに一つ提案を持ちかけた。
 ユーサーはラグナに言った。
「少年よ、黒魔術師になってみないか?」
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