歪められた日本の歴史改竄を正す為に大東亜戦争時にタイムスリップした戦闘艦の物語

蒼焔の提督

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第23話:

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 オルデンドルフ少将率いる戦艦部隊を撃破した城島は無線で”最上”を曳航するので横須賀に引き上げる事を連絡すると第二艦隊から了解の報国を受けて艦隊を反転させて日本に向かう。
「聞いたところ、城島君達は敵艦隊を壊滅させたみたいですね? だが、最後の敵主力戦艦は我々の獲物で誰にも渡したくありませんね?」
 小柳の言葉に栗田は頷くと戦艦同士の撃ち合いを間近に見るために”大和”に移乗する事を決意する。
 数十分後、”大和”に長官旗が翻る。
「さあ、羊共を狩りに行くぞ!」
 栗田の言葉に皆が頷く。
 これは第二艦隊全員の気持ちであった。

 その頃、サイパン島沖に停泊している大輸送船団を護衛している旧第七機動群が主力である戦艦部隊は連日、入電してくる味方艦隊の敗北に戦慄と同時に正体不明の兵器の存在に怯えていた。
 一瞬で戦艦を葬り去った謎の魚雷に数百の航空機をまるで羽虫を落とす如く殲滅した謎の砲弾。
 そして彼らを最も戦慄させたのはスプルアーンス機動部隊が殲滅されて正規空母を殆ど沈められてしまい再建にはかなりの日が必要だという事と司令官のスプルアーンスが戦死した事である。
 現在、第五八任務部隊の生き残りの空母と一部の巡洋艦はハワイまで後退していき残りの艦船はサイパン攻撃の援護部隊として任務に就いている。
 戦艦”アイオア”艦橋で臨時司令官となったマーク・A・ミッチャー中将はオルデンドルフ少将の敗北を聞いて悩んでいたのである。
 日本の戦艦部隊の主力がここに向かって進軍してきているがこれを迎え撃つのは当然だが万が一敗北したとき、この輸送船団を始めとする上陸部隊の運命は悲惨なことになるのは火を見るより明らかである。
「勝たなくてはいけない、聞けば日本に”ヤマト”と”ムサシ”という最新鋭の戦艦があると聞くが恐らく我が軍と同じく四十センチ砲だろう。全軍を以て日本艦隊と対峙する」
 戦艦”アイオワ”、”インディアナ”、”アラバマ”、”ノース・カロライナ”の最新鋭戦艦四隻を先頭にしてミッチャー艦隊はサイパン島沖から離れていく。
 その様子をサイパン島上陸部隊は不安そうに眺めている。
 しかし、その様子を眺める暇もなく日本軍の攻撃が激しくなっていたので直ぐに目の前の戦闘に集中しなければいけなかった。

 ミッチャー艦隊が出撃した数日後、栗田艦隊は着実にサイパン島に近づきつつあった。
 各戦艦の主砲関係の乗員は”長門”の活躍に士気が増大して今度はこちらがヤンキー共にこの四十六センチ砲をお見舞いしてやると騒いでいる。
 何しろ、建造当時から大和ホテルと言われて馬鹿にされ続けてきたのでこの砲撃戦の為にここまで耐えてきたのだと。
「そろそろ、敵艦隊をレーダーで捉えてもいい頃ではないかな?」
 栗田が横にいる小柳に声をかけると彼も又、頷く。
 アメリカと違って日本のレーダーは性能もいまいちで故障が多かったのであまりレーダーは重宝されていなかったのである。
 それに対してアメリカのレーダー技術は優れていて進化版であるレーダー射撃装置を全ての戦艦に搭載されている。
 そして先手で相手艦隊を発見したのはアメリカ軍であった。
 戦艦”アイオワ”のレーダーが日本艦隊の艦影を捉えたのである。
 日本艦隊は二十六ノットの速度でこちらの方角に向かっている。
「索敵機を発進させよ!」
 ミッチャー中将の命令で水上索敵機が射出される。
 戦艦”アイオワ”の後方の海上を白波を立てて航行している”インディアナ” ”アラバマ” ”ノース・カロライナ”も水上偵察機を射出する。
 暫くして水上偵察機が海上を進む日本艦隊を発見する。
 偵察機は海上を航行する巨大な戦艦二隻を捉えると至急、”アイオワ”に連絡する。
「よし、全艦レーダー射撃で日本戦艦を向え撃つ!」
 ミッチャー中将は、全艦にレーダー射撃の準備を命令すると四隻の戦艦は、四十センチ主砲とレーダーをリンクさせる。
「”ヤマト”と”ムサシ”か、四隻一斉に命中させれば撃沈出来るかも」
 それは確実ではなく願望であったが……。
 一方、”大和”の二十一号電探もアメリカ艦隊の艦影を捉える。
「敵艦隊、針路二百八十五度、速力二十七ノット、距離四万八千」
 電探室からの報告を電話員が復唱した。
 ”大和”の主砲指揮所で砲術長の『山柿信士』は双眼鏡を覗いていた。
 するとアメリカ艦隊のマストが水平線から出現する。
 戦艦が四隻、後は巡洋艦や駆逐艦と言った護衛艦が多数航行している。
 ”大和”の主砲最大射程距離は四万二千メートル、アメリカ戦艦の有効射程距離の外から砲撃を加えることが可能である。
「シルエットから見て……戦艦”アイオワ”か! 上等だ! 最高の獲物じゃないか」
 山柿は、戦闘指揮所にいる栗田中将に連絡すると共に各砲塔に命令する。
「先頭艦の”アイオワ”を狙え!」
 既に各砲塔とも『射撃準備完了』のランプが点いている。
 戦闘指揮所にて栗田と小柳も双眼鏡を覗いて”アイオワ”を確認する。
「フフフ、小柳君! 私は年甲斐も無く震えているよ……」
 栗田は体中からアドレナリンが出ているのを感じる。
 小柳も頷く。
「それはこの”大和”全員がそう思っているに違いありません!」
 一方、”大和”の三つの砲塔は発射準備を終えていつでも発射できる態勢でいた。
「砲術長、距離四万メートルで射撃開始だ! 大丈夫だ、この時の為に血反吐を吐いて猛訓練を重ねたのだから必ず命中する」
 『森下信衛』艦長が防空指揮所で答える。
「距離四万三千」
「距離四万二千」
「距離四万一千」
「距離四万!!」
 見張り員が距離を報告し、伝令がそれを復唱する。
「撃ち方はじめ!!」
 全砲門を”アイオワ”に向けた”大和”は九門同時に初弾を放つ。
 六万トンの巨体が轟音と共に震える。
 初速七百八十メートル/秒のスピードで”アイオワ”に向かっていく。
「敵艦、射撃開始しました!!」
 ”アイオワ”艦橋でミッチャー中将は目を見開いて吃驚する。
「何!? この距離でか!」
 約一分後、全弾が”アイオワ”に命中する。
 その瞬間、”アイオワ”はもの凄い轟音に見舞われると同時にミッチャー中将は椅子から跳ね飛ばされて床に叩きつけられる。
 巨弾の一発は、一番砲塔の天蓋に直撃するとそれを突き破って弾火薬庫で爆発する。
 続いて艦橋全面の構造物を突き破って艦底で爆発すると上部構造物を一つ残らず吹き飛ばす。
 至近弾として艦尾近くに落ちた砲弾は舵とスクリューを破壊する。
 ”アイオワ”は命中して数秒後に巨大な火柱を上げて真っ二つに折れてミッチャー中将をお供として海に沈んでいく。
 ”武蔵”が放った四十六センチ弾も戦艦”インディアナ”に吸い込まれるように命中する。
 その巨弾は左舷副砲に命中して跡形も無く吹き飛ばす。
 艦尾に命中した巨弾は天井を突き破って発電機室とボイラー室で爆発すると一瞬で吹き飛んでしまう。
 ”インディアナ”も又、一瞬で各船体を引き裂かれて海の底に呑み込まれていく。
 この快挙に第二艦隊全体が大歓声に沸き返る。
 ”長門”の時と同じく感動して号泣している乗員もいる。
 誰もが毎日、毎日、敵艦隊に向けて四十六センチ主砲を放ち敵艦隊に命中させる事を考えていたが遂にそれが実現した。
 それは栗田も一緒で戦艦二隻を瞬時に撃沈した一部始終を見て気がつかなかったが感激の涙を流していたのである。
 引き続き、”大和”と”武蔵”は”アラバマ”と”ノース・カロライナ”に照準を合わせると再び、第二斉射を放つ。
 轟音と共に艦全体が振動で揺れ動く。
 ”大和”の砲弾が次々と”アラバマ”に直撃する。
 海面に落ちた砲弾は跳躍して水平で喫水線下部に命中すると易々と装甲を突き破って艦底で爆発する。
 ”アラバマ”も又、船体を引き裂かれて海中に引きずり込まれてしまう。
 ”ノース・カロライナ”も又、”武蔵”の巨弾を浴びてしまう。
 砲弾が爆発したとき、艦内にいた乗員は挽肉と化してしまう。
 命中数十秒後、巨大な火柱を上げて沈んでいった。
 大歓声と号泣が第二艦隊を包み込むが喜びと同時に悔し涙を流している艦もいた。
 ”金剛”と”榛名”の二艦で砲撃可能射程に入るまでに主力の獲物が沈められたからである。
 この一方的な僅か数分の攻撃で事実上、アメリカ艦隊の崩壊が決定される。
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