歪められた日本の歴史改竄を正す為に大東亜戦争時にタイムスリップした戦闘艦の物語

蒼焔の提督

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第21話:

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 その頃、小沢艦隊の全空母は駆逐艦十隻を伴って内地へ引き返したが残りの艦船は第二艦隊に合流すべく南下している。

 戦艦 :長門
 重巡 :妙高・羽黒・最上
 軽巡 :矢矧
 駆逐艦:磯風・浦風・雪風・谷風・秋月


 そして……主力部隊として第二艦隊が驀進している。
 司令長官:栗田健男中将
  参謀長:小柳冨次少将 

  戦艦:大和・武蔵・金剛・榛名
  重巡:愛宕・高雄・鳥海・摩耶・熊野・鈴谷・利根・筑摩
  軽巡:能代 
 駆逐隊:長波・朝霜・岸波・沖波・藤波・浜波・玉波・早波・島風


 対するアメリカ海軍もフィリピン駐留艦隊であるオルデンドルフ少将率いる戦艦部隊も加えてサイパン沖に艦隊を展開している。
   戦艦:四隻
 重巡洋艦:四隻
 軽巡洋艦:八隻
  駆逐艦:五十五隻

 両軍、航空兵器は一切ない文字通り最初で最後の純粋な艦隊決戦の幕がきっておとされていく。
 
 最初に遭遇したのは小沢艦隊から分離した艦隊とオルデンドルフ率いる真珠湾亡霊戦艦部隊である。
 ここにサイパン島沖海戦の前哨戦が開始される。

 司令官:ジェシー・B・オルデンドルフ少将

  戦艦:ミシシッピ・メリーランド・ウェストバージニア
     ペンシルベニア・テネシー・カリフォルニア
  重巡:ルイビル・ポートランド・ミネア
 駆逐艦:六隻

                       対
 
臨時司令官:城島高次少将

 戦艦 :長門
 重巡 :妙高・羽黒・最上
 軽巡 :矢矧
 駆逐艦:磯風・浦風・雪風・谷風・秋月

 日本海軍第二艦隊旗艦”愛宕”艦橋にて

「長官、”長門”から入電です」
 小柳参謀長が椅子に座っている栗田中将に声を掛けると首を動かして小柳の方を見る。
「うむ、して内容は?」
 栗田の言葉に小柳は電文の内容を伝える。
 その内容とは、前衛艦隊と思われるアメリカ艦隊を捕捉したので迎撃に移るとの事である。
 栗田は、暫く黙っていたが決意した感じで言葉に出す。
「了解したと伝えてくれ! 貴官の奮闘を期待する」
 前衛部隊の戦力は不明だがそれを迎え撃つのは長い間、国民に親しまれてそれに相応しい力を持っている武勲溢れる戦艦”長門”故、許可したのだ。
「聞けば新鋭戦艦もいると言う事、”長門”一隻では殲滅出来ないだろうよ。獲物は十分、残っている」
 栗田は、真打ちとして最終的な勝利を手に入れようと考えていた。◇

 一方、城島少将率いる艦隊は単縦陣で”長門”を先頭にして進んでいる。
 その”長門”のレーダーが敵戦艦部隊を捉えたのである。
「もう、実現しないと思っていた戦艦同士の戦いを経験できるとは……長生きをするもんですね」
 ”長門”艦長の『兄部勇次』大佐が双眼鏡を覗きながら横にいる城島少将に言うと城島も頷く。
「一番、喜んでいるのは栗田さんではないかな? 元々は水雷専門の方だし」
 その時、見張り員から伝声管を通じて敵艦発見を報告してくる。
 兄部艦長が双眼鏡を覗いてみると、戦艦:ミシシッピー・メリーランド・ウェストバージニア・ペンシルベニア・テネシー・カリフォルニアがこちらと同じく単縦陣で進んでいる。
「ふむ、真珠湾で沈んだはずの戦艦が殆どいるね? やはりアメリカの国力は凄いな」
 城島の言葉に兄部も頷く。
「確か”メリーランド”だけが長門と同じ十六インチ砲を八門を持っていて残りの戦艦は十四インチ砲十二門ですがどんな風に対峙しますか?」
 兄部の問いに城島は、先ず先頭を航行している”メリーランド”を”長門”で潰すと同時に巡洋艦と駆逐艦を突入させて酸素魚雷を以て決着をつけるという作戦を提示する。
 兄部は首を縦に振ると伝声管に口を近づけて弾着観測機を射出させる事を命令する。
 しばらくすると後部甲板から弾着観測機がカタパルトから射出されると高度を上げて上昇していく。
「敵さんも同じく弾着観測機を出したみたいだね?」
 城島が双眼鏡を覗きながら呟く。
「このまま進めば単縦陣のままで会戦する事になるな。ちと危険だが東郷さんを見習ってみるか」
 兄部は、日本海海戦で東郷平八郎が編み出したT字戦法を真似しようと思ったが敵も同じ事を考えていたようで”メリーランド”を先頭に回頭し始める瞬間を捉える。
「面舵一杯!! 敵も回頭してくる筈だ。単横陣同士で撃ち合うことになる」
 ”長門”が回頭してその後に巡洋艦と駆逐艦も続いていく。
 最も砲戦が開始されれば突入する算段である。
 ”長門”砲術指揮所で射手の『黒須剣』中尉は、一番砲塔・二番砲塔・三番砲塔・四番砲塔から送られてきた「発射準備完了」の信号を確かめる。
 そして全ての砲塔に準備完了を示す赤ランプが点いているのを確認する。
 今からの砲撃戦は間違いなくヘビー級ボクサーの殴り合いのような凄まじい死闘が待ち受けることになるだろうと思うと身震いする。
「距離三万七千で発射だ!」
 この距離は最大射程ギリギリであったが死ぬほどの猛訓練を重ねてきた者にとっては体したことはなくそれよりも敵戦艦にむけて発射できるのがとても幸せで高揚感が高まってくる。
 兄部は砲術指揮所から敵艦までの距離三万七千と聞いた時、大声で命令する。
「全砲門、撃て!!」
 命令と同時に黒須は発射ボタンを押すと四一センチ主砲×八門が轟音と共に一斉に火を噴く。
 艦全体が衝撃で揺れる。
「敵戦艦”メリーランド”からも発射された模様!」
 兄部の横で時間計測員が着弾時間を計るために時間を声にあげている。
「間もなく到達時間です」
 計測員が喋ったと同時に”メリーランド”に着弾したようで大音響と共に火柱が立つのを見る。
 ”長門”が放った初弾八発は、全弾命中したのである。
 全部甲板・第一番砲塔・艦橋・艦中央部・後楼・第三番砲塔と第四番砲塔の真ん中・後部甲板に命中した結果、全部甲板が吹き飛ばされて艦橋も粉々になって敵艦長は痛みも無く天に召されていく。
 艦中央部に命中した砲弾は突き抜けて士官室を初めとする生活空間を破壊する。
 ”メリーランド”の死の運命を決したのは第三番・第四番砲塔の真ん中に命中した砲弾で弾火薬庫に命中した為に艦尾を吹き飛ばしそこから海水が雪崩れ込んで数分で海中に呑み込まれていった。
 その時、”メリーランド”から放たれた砲弾が”長門”周辺に落ちて巨大な水柱のカーテンに包まれるが一切の被害はなくその巨砲が次の獲物を仕留めるために旋回する。
 艦橋を初めとする全乗員は歓喜の嵐で涙を流す者もいて大騒ぎである。
 敵の巡洋艦や駆逐艦が狂ったように突撃してくる。
「こちらも水雷戦隊を出撃させろ! 猛訓練の成果を見せてやれ!」
 城島が命令すると駆逐艦隊が速度を上げて敵駆逐艦隊を迎えに行く。
 その時、最悪なアクシデントが発生したのである。
「”最上”と”羽黒”が衝突しました!」
 見張り員から悲痛な声が聞こえる。
 城島と兄部がドアを出て背後を見ると”最上”の艦首が”羽黒”の左舷中央にめりこんでいる。
 両艦共、既に停止していているが二艦共、どう見ても戦線には出れる様子ではなかった。
 両艦の乗員達が大慌てで甲板を走り回っているのを確認した兄部は溜息をついたが戦闘を中止するわけもいかないので両艦を護るために駆逐艦”秋月”と”磯風”が艦隊から離れていく。
「全く、何をやっているんだ? ミッドウェイと同じ事を繰り返すとは」
 城島が憤慨しているのを兄部が宥めながら彼らもワザとじゃないので取りあえずはこの戦闘を終結させましょうと言うと城島も仕方なそうに頷く。
 その時、再び”長門”から主砲が放たれたようで艦が震える。
 ”長門”の死神の鎌に選ばれたのは”テネシー”で全弾が命中すると同時に船体が引き裂かれて巨大な黒煙を吐きながら沈んでいく。
 この時点で敵戦艦の主砲圏内に入ったようで残りの戦艦から主砲が放たれるが敵の練度は低いようで空しく周囲に落ちていく。
 重巡洋艦”ルイビル”に乗艦しているオルデンドルフ少将は改めて”ナガト”の恐ろしさに身震いする。
「ふう、これで”ムツ”もいればもっとやばかったかもしれない……。だが、近距離戦に持ち込めば勝機はあるかもしれない」
 彼の言葉はいわば願望であったが現実はそう甘くなかったのである。
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