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第20話:
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巡洋駆逐艦”雪風”艦長室にて富嶽は何をするといってもなくただ、椅子に座ってボーッとしている。
叛乱騒ぎが終わったら主要兵器は使用不能で真水製造機が修復不可能で供給がされない。
「…………」
何もする気が起きなかったが艦長としての責務を果たさなければならないと思い、気合いを入れて立ち上がろうとしたとき、急に目の前が明るくなって目を閉じる。
時間にしては数十秒だと思うが富嶽がゆっくりと目を開けるとそこには黒髪ロングの美少女が微笑みながら立っていた。
「あ、天照様!? お久しぶりです、お会いできて誠に恐悦至極に存知奉ります」
慣れない挨拶というか咄嗟に出てきた挨拶であったが天照は別に笑うことも無く穏やかに富嶽に答える。
「富嶽さん、ここまで貴方の事を見せて頂きましたがよくやってくれました。高天原一同、とても感謝しています。先のマリアナ沖の勝利によって、第一段階が終了して引き続き第二段階に突入するのですが富嶽さんも承知していると思いますが、サイパン島から敵を排除せねばなりません」
彼女の言う事に富嶽は頷く。
マリナアナ諸島から完全に敵を排除した時こそがこの海域の戦いは終わるのであるから。
「今、サイパン島には皇軍が大艦隊となって向かっていますがそれに対抗する為に敵も残存艦船を掻き集めて迎撃準備にはいっている頃でしょう。私の見立てでは敵はほぼ壊滅して、我が軍は八割方残る計算ですので完勝に近いでしょうね」
富嶽は女神様が言うのだか間違いは無いと思う。
確かに米海軍が強いと言ってもこちらには”大和”と”武蔵”がいるから勝利は間違いないと思う。
しかし、彼の心は何故か晴れていなかった。
それに感づいた天照は少しだけ笑みを浮かべると優しく富嶽に答える。
「富嶽さんの悩みの原因は、叛乱に参加して海に沈められた人達の事ですね? 心配はいりません、彼達は死んではいません。最も、この世界にはいませんが」
天照の言葉に富嶽はピンとくる。
「まさか……異世界?」
富嶽の言葉に頷く天照はこの地球の世界とは別次元の世界に送り込んだとのことでそこで自分達が何をしたか? 何に迷惑を掛けたか? その答えを見つけなければならないと言ったこと。
「最も、貴方達の時代で流行っているラノベの世界みたいにチート能力は与えていませんが死ぬことはないと私が保証します。このことは東郷も分かっていたのであえてあのような事にしたのです」
ふと富嶽は前からの疑問をぶつけてみることにする。
「天照様、一つ教えて頂きたいのですが東郷は、八咫烏という日本最古の秘密結社所属ですが名字も戸籍も存在しないと何処かの書物で見ましたが?」
天照は富嶽の疑問に答えてくれる。
今回の作戦に関して彼が参加を表明して一時的に普通の日本国民として存在することになったと。
「彼は確かに冷酷な部分がありますがこの国の国体を護るためには非情にならなければならないのです」
天照の説明に富嶽は頷く。
「さて、そろそろこの空間にいれる時間が迫ってきていると同時に簡単に私も気軽に出ることは出来なくなりますのでお願いがあります。貴方達の事は、今上天皇を初めとするトップクラスの方達に最大限の協力をしなさいと言っています。あの艦の修理期間中の間に伊勢神宮まで来るのです!」
そこまで言うと天照は微笑むと同時に徐々に姿が薄くなっていき完全に消えたと同時に目の前の景色が元に戻る。
その時、ドアがノックされて東郷が失礼しますと入ってくる。
「艦長、ドローンが米国艦隊を捉えました! 映像で確認して下さい」
東郷の言葉に富嶽は頷くと艦長室から出ていくがふと足を止めて東郷の方を見ると笑を浮かべる。
「これからもよろしく頼む、補佐してくれ」
それだけ言うと富嶽は艦橋に向かっていった。
キョトンとした東郷だったが少しだけ顔を綻ばせて笑みを浮かべると富嶽の後を追いかけていく。
叛乱騒ぎが終わったら主要兵器は使用不能で真水製造機が修復不可能で供給がされない。
「…………」
何もする気が起きなかったが艦長としての責務を果たさなければならないと思い、気合いを入れて立ち上がろうとしたとき、急に目の前が明るくなって目を閉じる。
時間にしては数十秒だと思うが富嶽がゆっくりと目を開けるとそこには黒髪ロングの美少女が微笑みながら立っていた。
「あ、天照様!? お久しぶりです、お会いできて誠に恐悦至極に存知奉ります」
慣れない挨拶というか咄嗟に出てきた挨拶であったが天照は別に笑うことも無く穏やかに富嶽に答える。
「富嶽さん、ここまで貴方の事を見せて頂きましたがよくやってくれました。高天原一同、とても感謝しています。先のマリアナ沖の勝利によって、第一段階が終了して引き続き第二段階に突入するのですが富嶽さんも承知していると思いますが、サイパン島から敵を排除せねばなりません」
彼女の言う事に富嶽は頷く。
マリナアナ諸島から完全に敵を排除した時こそがこの海域の戦いは終わるのであるから。
「今、サイパン島には皇軍が大艦隊となって向かっていますがそれに対抗する為に敵も残存艦船を掻き集めて迎撃準備にはいっている頃でしょう。私の見立てでは敵はほぼ壊滅して、我が軍は八割方残る計算ですので完勝に近いでしょうね」
富嶽は女神様が言うのだか間違いは無いと思う。
確かに米海軍が強いと言ってもこちらには”大和”と”武蔵”がいるから勝利は間違いないと思う。
しかし、彼の心は何故か晴れていなかった。
それに感づいた天照は少しだけ笑みを浮かべると優しく富嶽に答える。
「富嶽さんの悩みの原因は、叛乱に参加して海に沈められた人達の事ですね? 心配はいりません、彼達は死んではいません。最も、この世界にはいませんが」
天照の言葉に富嶽はピンとくる。
「まさか……異世界?」
富嶽の言葉に頷く天照はこの地球の世界とは別次元の世界に送り込んだとのことでそこで自分達が何をしたか? 何に迷惑を掛けたか? その答えを見つけなければならないと言ったこと。
「最も、貴方達の時代で流行っているラノベの世界みたいにチート能力は与えていませんが死ぬことはないと私が保証します。このことは東郷も分かっていたのであえてあのような事にしたのです」
ふと富嶽は前からの疑問をぶつけてみることにする。
「天照様、一つ教えて頂きたいのですが東郷は、八咫烏という日本最古の秘密結社所属ですが名字も戸籍も存在しないと何処かの書物で見ましたが?」
天照は富嶽の疑問に答えてくれる。
今回の作戦に関して彼が参加を表明して一時的に普通の日本国民として存在することになったと。
「彼は確かに冷酷な部分がありますがこの国の国体を護るためには非情にならなければならないのです」
天照の説明に富嶽は頷く。
「さて、そろそろこの空間にいれる時間が迫ってきていると同時に簡単に私も気軽に出ることは出来なくなりますのでお願いがあります。貴方達の事は、今上天皇を初めとするトップクラスの方達に最大限の協力をしなさいと言っています。あの艦の修理期間中の間に伊勢神宮まで来るのです!」
そこまで言うと天照は微笑むと同時に徐々に姿が薄くなっていき完全に消えたと同時に目の前の景色が元に戻る。
その時、ドアがノックされて東郷が失礼しますと入ってくる。
「艦長、ドローンが米国艦隊を捉えました! 映像で確認して下さい」
東郷の言葉に富嶽は頷くと艦長室から出ていくがふと足を止めて東郷の方を見ると笑を浮かべる。
「これからもよろしく頼む、補佐してくれ」
それだけ言うと富嶽は艦橋に向かっていった。
キョトンとした東郷だったが少しだけ顔を綻ばせて笑みを浮かべると富嶽の後を追いかけていく。
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