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第12話:

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 六月一八日、小沢機動部隊は念の為に四〇機以上にのぼる索敵機を発進させ、三段索敵を行った。
 昼過ぎ、前衛艦隊索敵機が三群で編成された米機動部隊を発見。
 富嶽率いる”雪風”の情報と全くの一致である。
 小沢は、全艦に出撃命令を発動する!
 各空母上の甲板に並んでいる艦載機の発動機が回り、搭乗員がそれぞれの愛機に飛び乗る。
 亀山も愛機である艦上攻撃機”天山”に乗り込む。
 近藤隊長も”彗星”に乗り込む。
 準備が出来た各空母から次々と離艦していく。
 小沢は、艦橋から出て帽子を振りながら見送りだしていく。
「……頼むぞ、日本の未来はこの戦いに込められている」
 全攻撃機四九八機が出撃していった。
 だが、彼らはアメリカ機動部隊の艦載機が九割以上を喪失していて精神状態が混乱及び疲労の極みにいて組織としての艦隊機能が崩壊していたことを……まだ知らない。

 時間を少し遡った六月十六日、第五八任務機動部隊の第四群を攻撃した”雪風”は水素魚雷を放った後に回れ右をして第四群から離れようとしたが軽空母”カウペンス”から発艦した四〇機が報復満々でこちらに来るのがレーダーで探知する。
「艦長、敵機がこちらにやってきます! 四〇機で後、二〇分で邂逅します」
 艦長席に座っていた富嶽は頷くと横にいる東郷に話す。
「東郷、派手にお迎えしてあげよう! 未だ使用していないが四五式自動三式弾の出番だな」
 富嶽の言葉に東郷は頷くとCICルームに四五式自動三式弾の装填を命ずる。
 四五式自動三式弾とは、砲弾の中に五〇個の超小型ミサイルが入っており予めコンピューターで目標をインプットするとAIによってその目標に命中するまで追いかけ回す兵器でタイムスリップしてこの時代に来ることを見越して生産された兵器であった。
「砲雷戦用意! 一番砲塔の片側の門のみに三式弾を装填してレールガンで撃つ!」
 ”雪風”の一番砲塔がゆっくりと右旋回して目視では見えないが敵攻撃機編隊が来る方向に砲をむける。
「一番砲塔、発射準備よし!!」
 CICルームから報告が来ると富嶽はゆっくりと頷くと砲撃命令を出す。
 轟音が鳴り、三式弾が放たれるとマッハ七の高速で一瞬にして見えなくなる。
 その瞬間、レーダーから四〇機の編隊を示す光点が消えるのを確認する。
「も、目標……消滅しました」
 ドローンが一部始終を動画で録画していたのを確認すると敵編隊の前方数百メートルで砲弾が炸裂したかと思うとほぼ一瞬で四〇機が粉々になっていく。
 艦橋内でその動画を見た一同は暫く無言状態であったが富嶽が満足そうに頷く。
「残りの機動部隊の敵機を全てこちらで引き受けることが出来たらいいのだが……。スプルアーンス提督の決断に期待したいが待っているのは性に合わない。再度、反転して挑発してやる!」
 そう言うと富嶽は再び、艦を反転する。
「再びレールガンの射程距離に入れば通常弾による攻撃を開始して第四群を混乱の極みに落とす」
 全速力でレールガンの射程距離に入ると富嶽の命令で巡洋艦や駆逐艦を狙うように伝える。
「五斉射二十発を撃ち込む! ドローンから来る映像を元に一艦につき二弾命中するようにインプットして合計十隻を葬るようにするのだ」
 
 一方、第四群ハリル少将は未だ攻撃隊から何の連絡もないので不安な表情をしていた。
「未だ、何の報告も無いのか? もう攻撃開始している時間だが?」
 ハリルの言葉に伝令兵が血相を抱えて艦橋に飛び込んでくる。
「し、司令!! レーダーから攻撃隊が突然、消えました」
「消えたとはどういう意味か?」
 ハリルの質問に伝令兵は何も答えられなかったが彼の脳裏に未知の新兵器を持つ陽炎型駆逐艦を思い浮かべると攻撃隊が全滅した事を理解する。
「ス、スプルアーンス提督に連絡だ! 何回でも送るんだ!」
 その言葉を言い終わると同時にハリルが乗艦する軽巡”マイアミ”に巨大な轟音と振動が響くと同時に船体が引き裂かれて一瞬の内にハリル少将を飲み込んで沈んでいった。
 尚、同時に防空巡洋艦”サンディエゴ” 駆逐艦七隻がハリル少将と命運を共にして海の底に沈んでいく。
 事実上、第四群は壊滅したのである。
 残りの艦は勿論、パニック状態になると同時に第七群のリー中将を思い出す。
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