歪められた日本の歴史改竄を正す為に大東亜戦争時にタイムスリップした戦闘艦の物語

蒼焔の提督

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第7話:

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戦艦”ワシントン”以下他の艦船は正体不明の敵の攻撃によって八隻の駆逐艦を瞬時に失ってしまいその対処方法を考えていたのである。
「偵察機の連絡は途絶えてしまったんだね? 残りの索敵機には例の海域に向かうようには言っているのかね?」
 リー中将の言葉に艦長パール大佐は頷く。
「全速力でその巡洋艦を補足して砲撃で沈めます!」
 一方、戦艦”サウスダコタ”艦橋でニコル中佐が怒鳴っていた。
「おのれ!! 黄色い猿共めが! 厳しい調教が必要だな、この四十センチ主砲で猿共を叩いてやる」
 その言葉を言い終わった時に凄まじい轟音と共に艦全体が直下型大地震に直撃したかのような振動が襲いかかりニコル中佐はそのまま床に強くたたき付けられてそのまま天へ召されていった。
 ”サウスダコタ”に四本の水柱が上がったと同時に艦が引き裂かれて一瞬のうちに沈んでいった。
 その直後、”ニュージャージー”の側面にも四つの水柱が高々と立ち上がる。
 ”ニュージャージー”の第二番砲塔下にある弾火薬庫に命中して巨大な火柱が立ち上がると同時に大爆発と共に海中に没していったのである。
 歪められた歴史では両艦共、生き残ったが改正されていく途中で歴史を閉じる。
 退艦する暇も無く二隻の戦艦の乗員全てが海の中に呑み込まれていった……。
 僅か数分で巨大戦艦が粉々になって沈んでいく様子を見たリー中将達は顔面蒼白になる。
「な、何なんだ!? あれは魚雷だが普通の威力ではないぞ。ジャップはどんな魔法を使ったんだ?」

 富嶽は戦艦二隻が瞬時に轟沈していく映像を見て絶句していた……。
 他の乗員も同じく映像画面に釘付けになっていたがいち早く富嶽が気を取り直して第二回目の魚雷攻撃を命ずる。
「よし、このままカスター将軍に引導を渡してあげよう! 一番から四番を”ワシントン”にたたき込む」
 富嶽の命令で”ワシントン”に目標を定める。
「発射準備完了! いつでもいけます」
 富嶽は小さく頷くと大声で命令する。
「一番から四番、発射!!」
 魚雷発射管から四本の水素魚雷が発射されて”ワシントン”に向かって爆走していく。
 
「全艦、ジグザグ航行開始!!」
 戦艦”ワシントン”艦橋でリー中将が怒鳴っている。
 ジグザグ航行とは魚雷に狙われるのを阻止する航行方法であったが自動追尾する魚雷には全く効果がないがまだこの時点では有効活用として使われている。
「雷跡を見逃すな! 駆逐艦隊は爆雷戦用意、戦艦・巡洋艦は砲雷戦準備!」
 さすがはアメリカ海軍の優秀な提督であったが時空を超えてきたチートの軍艦には勝てなかった。
 リー中将が落ち着くためにパイプに火を点けようとしたときに”サウスダコタ”や”ニュージャージ-”があじわった直下型大地震を思わせる振動が”ワシントン”を直撃する。
 艦橋にいたリー中将を始めとする幹部は衝撃の勢いで艦橋内の障害物に身体全体がたたき付けられて全身の骨が砕かれる。
 激痛と共に意識が途絶える寸前、第七騎兵隊のカスターの最後が浮かんできた。
「そう……か……私は…………」
 それがリー中将の最後であった。
 一発は後部機関室で爆発してボイラーが一瞬のうちに吹き飛んでしまい艦尾が吹き飛んでしまう。
 一発は艦首部分の所に直撃して艦首を吹き飛ばす。
 残りの二発は前部弾火薬庫、後部弾火薬庫に直撃して大爆発を起こす。
 ”ワシントン”は四つに裂けて名将リー提督と共に轟音と水柱をあげて海中に没していった。
 それまでの時間は僅か一分強であった……。
 
 旗艦ワシントンが瞬時に轟沈したのを見ると他艦の艦長や船員達はパニック状態になっていて最早統率は崩壊して各艦バラバラになって逃走していく。
 その様子を偵察ドローンが鮮明な映像を送ってくる。
 富嶽以下の乗員はその様子に釘付けであったが富嶽は残りの艦船を始末しようと考えて命令しようとする寸前に稲垣が戸惑った声で報告してくる。
「艦長! 18時の方角から音速で飛翔してくるミサイルらしき物体二発を確認! 命中まで三分」
 稲垣の言葉に富嶽達は一斉に稲垣を見る。
 富嶽は例の歴史改ざんした者の仕業かもしれないと思ったが取りあえずはこの状況を打破しないといけないと考えると迎撃方法を決断する。
「間違いありません、物体の照合の結果、ハープーン対艦ミサイルです」
 稲垣の言葉に富嶽が命令する。
「対空戦闘用意!! 心配するな、自動機関砲にて迎撃する」
 CICルームのコンピューターが瞬時に計算してハープーンの針路や速度を解析してその情報が自動機関砲に入力される。
 無駄撃ちも無く一斉に自動機関砲が火を噴くと二発のハープーンが撃墜される。
「目標物、撃破!」
 稲垣の言葉に富嶽は頷くと第七群殲滅作戦を中止してこの海域を離脱すると共に、ステルス・光学迷彩シールド展開を命令する。
「艦長、羽柴です! 偵察ドローン回収完了です!」
 羽柴の言葉に満足して頷く富嶽。
「レーダー員、正体不明の敵は発見出来たか?」
「ミサイルが飛んできた方向を解析しましたが不明です。しかし、あのミサイルは海中からではなくて陸上か海上から放たれた物です」
 東郷が富嶽にその方角に艦を進めましょうか? と言うと富嶽は頷いて命令する。
「取り舵一杯!! これより当艦は正体不明の艦を探索してこれを撃沈する事にする。戦闘態勢はこのまま維持するが簡単な携帯食料を順次に配布していく」◇

「艦長! 先程の正体不明の艦がレーダーからロストしました」
 二十代の青年がレーダーを見ながら背後にいる男性に声を掛ける。
 海上自衛隊一等海佐の肩章をつけた中年の男性がレーダー員の背後から画面を覗きながら不思議そうに答える。
「峰岸三等海尉、ロストしたとはどういう事だね?」
 一等海佐の男性が答えると峰岸と呼ばれた青年は困惑しながら先程まで鮮明な光点で表示されていたのですが突然、消えてしまったが大体の意味するところは沈没してしまった事であるがハープーン対艦ミサイルが撃墜された時点で沈むとはありえないと言う。
「ふうむ……解せんな。しかも単艦で航行するとはあり得ないんだが……? 戦史を紐解いても記録が見当たらない、しかもミサイルを撃墜するとは何なんだ?」
 一等海佐の男性が考え込むと同時に副官であろう青年が答える。
「岡本艦長、アメリカ戦艦を瞬殺したあの艦はこの時代の船ではありません! 我々と同じ時代の兵器かと思われますがいかかでしょうか?」
 岡本と呼ばれた艦長は暫く考えていたが情報が少なすぎる為に正確な判断が出来なかったが長年の経験から我々がいた西暦一九九〇年の時代と同じ時代の船がタイムスリップしたのではと思う。
「神薙副官、何とかして彼らとコンタクトを取りたい、もしかするとレーダー波を反射する特殊塗料が使われているかもしれない。我々の目的を邪魔されないように味方にするか若しくは始末するかだ」
 岡本の言葉に神薙が頷くと命令する。
「錨を上げろ! 針路右六〇度、これより例の船を探索する、必ず見つけろ!」
 海上自衛隊の護衛艦であろう船がゆっくりと前進していく。
 岡本達がいるCICルームの上にはこの艦の名前が飾られている。
 ”白波”と……
「何だと!? もう一度、報告してくれないか?」
 ハワイ島統合作戦本部の一室で太平洋方面軍最高司令官ニミッツ大将が信じられないような声で報告に来たベルン参謀に答える。
「はい、エンガノ岬沖でリー中将率いる第七群が崩壊しました。戦艦”ワシントン””ニュージャージー”
”サウスダコタ”フレッチャー級駆逐艦八隻が撃沈されてリー中将は戦死しました」
 ベルン参謀の言葉にニミッツは信じられない様子で沈黙状態が数分間続いた後、ようやく口を開く。
「報告によると日本海軍の陽炎型駆逐艦と言うが巡洋艦並の大きさという。しかもそれは第七群から二百キロ以上も離れていたとの事だがそんな魚雷があるとは信じられない」
 ニミッツの言葉にベルンも頷く。
「はい、魚雷では間違いないんですが対潜ソナーも異常なかったと言う事ですのでその巡洋艦並みの駆逐艦から放たれたものであると思われます」
 ニミッツは苦虫をかみつぶしたような表情をする。
「日本にそんな魚雷があるとなれば厄介だな……。予定通りサイパン上陸は行うがスプルアーンスに索敵を通常の倍以上に広げて探索して小沢機動部隊は勿論、その巡洋艦を発見次第、直ぐに航空攻撃で沈めるように伝えるのだ!」
 ニミッツの言葉にベルンは頷いて部屋を出て行く。
「……戦艦の喪失は特に気にはしないがリーを失ってしまったのは痛いな……」
 ニミッツは淀んだ雰囲気を払うために建物の屋上に出る。
 そこから真珠湾が見えていた。
 日本海軍の真珠湾攻撃の痕も殆どが消えていて活気を取り戻している。
「……そういえばアイクの欧州方面は順調だとのことだったな」
 欧州方面最高司令官アイゼンハワーの顔を思い浮かべていた。
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