歪められた日本の歴史改竄を正す為に大東亜戦争時にタイムスリップした戦闘艦の物語

蒼焔の提督

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第5話:

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   富嶽と小沢中将の会談は実に六時間もの長い時間となる。
 二人は何故か意気投合して会談は大成功に終わりこれからの事を話して帰途についたのである。
 富嶽は彼が帰った後、話の内容を思い出していた。

 予想通り小沢中将は二日前、執務室で天照様により神託を受けて未来からやってくる者と共に協力して来る戦いに勝利せよとの事を伝えられる。

 驚いた小沢中将は天照様より教えて頂いた地点に向けて無線を送り直に飛んできたとのこと。
 小沢中将は、富嶽から本来は大勝利になる筈の戦いが大敗北をしてそれから起こる敗戦への道について詳しく語ると真剣な顔をして富嶽が話し終わると溜息をついて言葉を発す。

「まさか……古賀長官が行方不明になった時に書類が全てアメリカの手に渡っていたとは……な」
 小沢中将が溜息をついた内容は、山本五十六連合艦隊司令長官が戦死した後に就任した古賀峰一司令長官が嵐に遭って行方不明になった時に日本海軍の全ての行動が記された書類が敵の手に渡った事件である。

 司令部はまさか書類が敵の手に渡っていることは夢にも思わなかったのでそのまま実行となる。
「しかし、それでも本来なら後に起こるマリアナ海戦に勝利する筈が我々の時代の者が敵に情報を流した為に立ち直れない大損害を受けてしまう事になったのです」

 富嶽が自分たちの時代の人間が過去にタイムスリップして歴史改変をした事を詫びると共にその者を見つけて始末する事が任務の一つだという事を話す。
 万が一、この雪風の戦闘力を以てアメリカ機動部隊を叩き潰すかもしれないと言うと小沢中将は感謝をしながらもその勝利は我々の時代の者がしないといけない事を伝える。

 取りあえず、富嶽達よりも前にタイムスリップした同時代の者を探して始末する事が重点目標となりそれと並行して小沢中将率いる第一機動部隊がタウィタウィ泊地に進出するのでパイロット達の訓練をきっちりとするために雪風の力を以て邪魔な敵潜水艦を片づける事で一致する。
 小沢中将は、見た目には日本海軍の駆逐艦雪風そっくりな艦船が想像を絶する性能を持つ事を説明されると驚愕すると共に全てが終わればゆっくりと見学させて欲しいとの事で一致する。
 勿論、富嶽達に”瑞鶴””翔鶴””大鳳”と言う主力空母を見学させることも約束する。
 それと”大鳳”が沈没した原因を伝えると小沢中将は直ちに対策を立てることを伝えて二人は固い握手をして会談は無事に終わる。
 小沢中将が搭乗している二式大艇がみえなくなるまで甲板上でずっと見送っていたのである。

 会談が終わった後で富嶽は艦橋の艦長席に座ってこれからの事を考える。
「さて……と、先ずは潜水艦退治なんだけど確かあの海域には相当数のアメリカ潜水艦が潜んでいた筈で確かガトー級潜水艦……」
 富嶽の言葉に東郷は日本艦船を一番沈めたクラスの潜水艦ですね? と言うと富嶽は頷く。
「さあ、海の狼共を退治しに行こうか! 最大戦速、針路をタウィタウィ泊地へ!」
 核融合炉がエネルギーを放出して”雪風”の速力が上がっていく。

 五月十六日、小沢中将率いる第一機動部隊は、予定戦場に近いタウィタウィ泊地に進出する。
 それと同時に”雪風”も又、付近の海域に到着して対潜水艦ソナーにて探索を開始していた。
「うじゃうじゃいますね? 泊地周辺近海域に二十八隻を確認していますがいかがしますか?」
 海上自衛隊で潜水艦勤務に就いていた広野佳久が富嶽に尋ねる。

 彼は、海上自衛隊に五年間、潜水艦勤務していて潜水艦の恐ろしさを十分に分かっていたのでもし富嶽が甘い考えをしていたら具申しようと思っていたが富嶽の言葉で安心する。
「決まっているではないか? 全艦、撃沈せよ! 先ずは”ハーダー”と”ヘイク”を狩って史実の再現を阻止しよう。過去の戦史に記録されていたらこことここの地点で哨戒活動をしているからね?」

 既に二十八個の赤い点がスクリーンに展開されていて各潜水艦の名前が記されている。
 富嶽が言う”ハーダー”と”ヘイク”にマーカーがつけられる。
「この二隻が何かするのですか?」
 東郷の問いに富嶽は頷く。

「六月六日から九日にかけて日本駆逐艦四隻が沈められるからね?」
 成る程と東郷は頷く。

 アメリカ潜水艦”ハーダー”艦橋内にて……
「副長、ジャップの艦隊が泊地に到着したとの事だが出てきたら始末せよと本部から連絡があったよ」
 艦長アーノルド中佐が副長のマーカー少佐に潜望鏡を覗きながら話し掛ける。
 アーノルド中佐は一兵卒からの叩き上げで今年で五十歳になる予定である。
「艦長、この戦いが終わったら私は本国へ戻って退役です、そこで余生をゆっくりと過ごしたいですね」
 マーカー少佐は定年をとうに過ぎていたが艦長アーノルドの信頼を受けていたために退役の時期が延びたがさすがにそれは無理だと本部が決定したのでこの戦いが最後になるのである。
 アーノルドが再度、潜望鏡を覗くと特に何も視界に入らなかったので潜望鏡を下ろしながら答える。
「ま、この戦争が終われば又、君の奥さんのピザを食べに行かせてもらうよ」
 二人の会話が終わると同時にレーダー員が叫ぶ。
「か、艦長!! 計測不能の速さで本艦にロケット弾らしき物が二発が向かってきます!!」
 レーダー員の叫び声にアーノルドが叫ぶ。
「急速潜航!!」
 ”ハーダー”に海水が注入される時に二発の物体が直撃する。
 凄まじい轟音と同時に大量の海水が雪崩れ込んできて船体は粉々に折れて沈んでいく。
 乗員にとって幸いなことは痛みも苦しさも感じずに艦長以下全乗員が天に召されたことである。
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