歪められた日本の歴史改竄を正す為に大東亜戦争時にタイムスリップした戦闘艦の物語

蒼焔の提督

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第3話:邂逅、そして頼み

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突然、雪風を襲った巨大な光の束……
 富嶽を始め艦内全員が気を失ってしまうが何処からともなく聞こえてくる女性の声で順々に目が覚めていく。
「う~ん……皆、無事か? 艦内各所……!!?? これは?」
 富嶽は損傷箇所及び乗員の無事を確認するために声を出したが彼の目の前には室内ではなく何も無い空間に立っている。

 周囲を見渡すと東郷を初めとする各分隊長及び全乗員が摩訶不思議そうに辺りを眺めている。
「艦長、ご無事でしたか?」
 東郷が富嶽の元に駆けつけた時に富嶽は東郷に問いかけるというか尋問するような口調で尋ねる。
「東郷、正直に答えろ! これは貴様の組織の仕業か?」
 富嶽の問いに東郷は数秒間の沈黙後、首を振る。

 富嶽の言葉に他の乗員は東郷の方を一斉に見るが東郷は特に慌てない様子で答える。
「全てが正しくはありませんがこういう状況を作ったのは私達の組織です。詳細は女神様が教えて頂けます」

 東郷が喋り終えると同時に富嶽達がいる空間が黄金色に染まっていくと同時にその一画から古代日本神話に出てくる服装をした女性が出現する。



 光の空閑から出てきた女性は富嶽達を見渡すとにっこりと微笑む。
 東郷は九十度の礼を以てその女性に挨拶すると天津祝詞を唱える。

 高天原に神留坐す
 神漏岐神漏美の
 命以ちて
 皇親神伊邪那岐の大神の
 筑紫日向の橘の小門の
 阿波岐原に
 禊祓ひ給ふ時に
 生坐
 祓戸の大神等
 諸々禍事罪穢を
 祓へ給ひ清め給ふと
 申す事の由を
 天つ神地つ神
 八百万神等に
 聞食せと
 畏み畏みも白す

 東郷の素晴らしい天津祝詞を富嶽達はいつのまにか真剣に聞いていたのである。

 それは他の乗員もである。

 東郷が読みあげを終わると再度、お辞儀をする。




「素晴らしい祝詞、感謝します! 所で皆様、驚かせて申し訳ありませんでした、私は高天原を治める女王である天照アマテラスと言います。日本神話が得意な方は聞かれた事があると思いますが」

 天照は右手を上げて何か呪文を唱えると空間に巨大なスクリーンみたいなのが出現する。
 そこには現在進行形で起きている世界規模の災害や戦争の風景が写されている。
「これが今、起きている現状です……」
 日本では今この瞬間、南海トラフ、東海大地震が発生したと同時に津波が太平洋岸に濁流となって押し寄せる様子が流れている。

 アメリカではイエローストーンが破局大噴火を開始、想像を絶する火山弾が四方八方に飛び散っていく。
 アジアに目を向けると再度、M九クラスの大地震が発生して治安は崩壊して最早国家として成り立たなくなっているのが現状である。
 中東ではイスラエルとアラブ連合が激突して核兵器による報復攻撃が行われる。
 欧州では急速に治安が悪化して各国で大暴動が起きる。

「……人類の危機じゃないか、この惨状は」
 榊原が呟くと横にいる杉本も頷く。

「一年前まではこんなことは予測も出来ていなかったのにな……」
 各乗員も全て何か思うところもあるようでじっと画面を見つめていたが天照の言葉に我に返る。

「今から言う事は恐らく貴方達にとっては信じられないかもしれませんがそれが真実なのです……。時には残酷な面もありますが聞いて下さい」
 そう言うと静かに彼女は語り始める……。



「この世界の歴史はある年から本来、進むべき道ではなく歪められた道を歩み始めたのです。本来の歴史はこの日本がアジアをリードする存在です。いわゆる大東亜共栄圏です……がご存じのとおり日本は戦争に完膚なきまでに敗れてしまい日本古来からの良き文化・理念が失われました。その結果、今の堕落した世界になったのです」

 ここまで言うと天照は先程の世界規模での災害等が写っている描写を消すと新たな景色が映し出されるがそれは大東亜戦争時の景色である。

「ここからが重要ですがある年代において未来の世界から何者かに干渉されて本来の歴史が変わったのです。それは昭和十九年六月十八日から起きたマリアナ沖海戦と言われている戦いです。本来ならこの戦いで日本海軍は前代未聞の大戦果を遂げて昭和二十年八月十五日に連合軍との講話が締結されて大東亜共栄圏が完成されるのですが現実は硫黄島・サイパン島陥落して軍は玉砕、そしてフィリピンが陥落して日本海軍の誇る連合艦隊は壊滅、沖縄で唯一の本土決戦、そしてとどめは原子爆弾です……。ここまでの一連の出来事は軍部の作戦誤りや暗号の漏れ、そして無能な提督の集まり……と言われていますが全てはあのマリアナ沖海戦の結果です」
 天照の説明に戦史の事を知らない乗員は??? の状態であったが富嶽は納得したのである。

「本来の歴史でのマリアナ沖海戦では空母を初めとする半数の艦船を撃沈破してスプルーアンス提督を葬り去るのです。その勝利の後、半年間戦線は膠着します。アメリカは半年間掛けて戦力を補充して再度、攻め込みますがそのときには防衛を固めた日本軍の抵抗に再び膠着状態に陥りますがその時のアメリカ機動部隊最高司令官ハルゼーの奢りと判断の誤りで彼は戦死します。それをきっかけにして米軍は作戦全体の変更を決定して矛先をフィリピンに変更することを決定しますがそこである出来事が発生します。欧州ではナチスドイツが敗北しますがそこで米軍とソ連軍がベルリンで激突して戦火が拡大してしまい終止がつかなくなります。その戦いでパットンは戦死してしまいそれに激怒した米軍を初めとする連合軍はソ連軍と全面戦争に突入したのです。最早、ヤルタ会談の決定事項は破棄されて事態は混迷の状況に陥ります。着地点が見つからない欧州の出来事に時の首相である東条英機は皇室を巻き込んで連合軍との講話を決定します。マリアナ沖海戦での大勝利で彼の政権は安定して強固な陣営を築き上げるのに成功します。それと同時にこの戦争を描いたルーズベルト大統領は亡くなり戦争終結に積極的であったトルーマンが大統領になると講話の実現に向けて加速して八月十五日に戦争は終結します。以上が何者かに歴史介入されなかった場合でしたが残念ながら何者かに日本機動部隊の位置や詳細な構成がアメリカ側に筒抜けになり……終わりました」
 そこまで言うと天照は富嶽の方を向いて再び、喋る。

「ここまで言えばおわかりだと思いますが富嶽よ、本当の美しい日本を取り戻すために歴史介入している不届き者を始末して雪風の戦闘能力を以てアメリカ機動部隊を殲滅しなさい! 其方なら既に分かっていると思いますが八咫烏の裏天皇三羽鳥の一人である東郷を貸しますので遠慮なく扱き使って下さい。ちなみに歴史介入している存在は残念ながら現代日本の人物です、必ず始末するのです、頼みますね」

 そう言うと天照は姿を消していく。










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