61 / 61
番外編:魔王のまにまに
しおりを挟む
◆本編後の二人が戯れているだけのお話
◆1話完結
******************
できるだけ大きく息を吸い込んだ後、僕は久しぶりに腹の底から声を出した。
「もおぉ――――!!魔王の馬鹿ぁあぁぁあぁぁッッ!!!」
その勢い任せに、両手で握りしめていた殴打武器を力の限り、振り下ろす。
直後、手応えのわりには異様なほど激烈な破壊音が耳を劈いた。
自分が武器を振るった瞬間から反射的に目を閉じてしまっていたことに気が付いたのは、ビリビリと痛みを訴える鼓膜に驚いてからだった。
それもそのはず、僕には元々武芸の才能なんてないんだ。
敵から目を逸らすなとか、息の根を止めたか確認しきる前に油断するなとか、頭では理解できていたとしても、体が追いつくはずないじゃないか。
だから、僕は恐る恐る目を開けるしかなくて――……薄目でちらりと確認した景色に、息を止めた。
ついで数歩ほど素早く後ずさりしてから、ようやくしっかりと目を見開いてみたのだけれど、やっぱりこの口からは情けない声しか出てこなかった。
「ひっ!……う、うわぁ……やだぁ……うぇぇ」
そこに広がっていたのは、数々の戦場を引きずり回されてきた僕でも涙目になってドン引きせざるを得ない、凄惨な景色だ。
僕がいる場所は深い深い森の中に点在する、開けた野原の一つ。
太陽の明るい陽射しが降り注ぐ緑の絨毯には、鮮血の血だまりが刻一刻と広がり、僕の足元へ迫る。
注視したくもないというのに周囲の草むらに転がる大小の肉片と、血でできた池の中央に存在するグチャッと潰れた何かが否応なく視界に入る。
濃い血の匂いが鼻をつくなか、僕はもう一度、再会を待ち焦がれている相手のことを心の限りに罵倒した。
「ほんっと……何してくれてんのさッあの魔王ッ!!なんで!?なんで僕の一撃でドラゴンが潰れちゃうわけ!?いつ!?ほんといつから!?んもおぉぉおおお!!!人の体を勝手にいじるなあの変態――!!!」
そのまま「ひぇ、ひえぇ」と小声で叫びながら生理的に無理のある元ドラゴン、現撲殺死体から更に距離をとった。
なぜ僕がこんなこと――そう、たった一人でドラゴンに殴打武器一本で挑むことになったのかというと、少し前の戦争が原因だ。
このザルツヴェストの領土を守るために、今は僕だけのお一人様国家が真正面から人間の軍隊と初めてぶつかり合ったのだ。
正直、死んだと思った瞬間もあったけど……まぁ僕を傷つけられる存在はいないという、誰かさんの言葉が証明されたことはよかったと思う。
ただね、僕自身の腕力、正確に言えば攻撃の意思を持った際の肉体強度の変化は、どう見てもやり過ぎじゃないかな。
「さすがに素手じゃないけど……戦場で拾って来たただの人間用のメイスで……ドラゴンが潰れちゃうなんて……僕をこんな怪力魔族にしなくてもよくない?」
人生で二度目の単独ドラゴン討伐という実験を無事終えたこともあり、肩から力が抜けきった僕はため息をつきながら、そう独り言ちた。
魔王と魔族たちが消えてから、もう十年……いや、まだ十年、かな。
何にせよ、十年目にして初めて知った自分の怪力さを受け止めるには、もう少しばかり時間が必要かもしれない。
「……どうりでベルちゃんを叩き起こす時に凄い音がするわけだよね。でもこれ、どうやって気を付けたらいいの?……もし、うっかりラグナまでぶちのめしたら……困るよ」
ドラゴンの返り血すらも吹き飛ばすほどの威力だったせいか、血痕一つない綺麗なままの手を握ったり開いたりしながら、僕はそう心配事を口にしていたのだけれど――。
『あぁ~~~~~……愛いッ!!』
頭の中に突如響いた懐かしい声音に、え?と顔を上げた瞬間、視界が真っ白に染まった。
そして次に僕がパチパチと目を瞬いた世界では、他でもない僕の魔王がその精悍さと美麗さが同居する顔をデレッと歪めて寝転がっているではないか。
それも、僕と同じベッドへ横になって、僕のすぐ傍で。
「……ん?え?…………あ、夢か……」
仄かに薄暗い周囲は、まだ天蓋カーテンが降ろされているせいだろう。
僕の体内時計によれば普段の起床時間よりも遅い時刻だとは思うけれど、寝過ごした焦りよりも夢見の悪さに少しだけ心臓の音が早くなる。
僕が守り続けた魔族の国・ザルツヴェストへ、真なる魔王とその眷族たちを再び迎えることができて、今日で一か月程だろうか。
一応はゆっくりと過ごさせてもらっているとはいえ、賑やかで幸せな毎日は、相変わらず時折現実感がない。
だから、ずっと独りで過ごしていた頃の夢を見るのかもしれない。
こうして僕の魔王が――伴侶であると誓約してくれた存在が傍にいてくれるのに、夢の中では当然のように僕は独りで、それが当たり前なんだもの。
片肘をついて横になっているラグナが、締まりのない笑みで僕を見下ろしている現実の方こそが夢だと言われても、多分僕は納得できてしまう。
そしてこの夢から覚めた後はきっと、「いい夢を見られたなぁ……ラグナに話すネタ追加っと」とでも笑いながら呟いて、胸を占めようとする切なさみたいなものを上手く誤魔化すんだ。
寝起きでぼんやりとした頭のまま、そう感傷的な気分に浸っていたのだけれど……僕の大好きな伴侶に、そんな空気が通じるはずもなかった。
「くっふっふっふ……いったいどんな夢見かと覗いてみれば、夢の中でも余のことばかりではないか~!」
「……人の夢まで勝手に覗いてくるとか、さすが魔王だよね。でも僕のプライバシーも尊重して?」
「其方は本当に愛い。余も、いついかなる時であろうともユーリオを『愛している』と『約定』す」
「っ何をそんな気軽に約定してるのさ!?ラグナも寝ぼけてる!?」
「おぉ、これでも魂が少し癒えるとは愛い愛い!だが……ごく僅かとはいえ、眠っている間に進んだ傷みは気掛かりであるな……」
「――っ」
常にマイペースなラグナの言葉に、朝っぱらからブンブンと振り回されている自覚はある。
でも、ツッコミ所満載の会話の途中に突然ふと真剣な表情をされて、その淡く灯る瑠璃色の双眸でひたと真摯に見つめられてしまうと、余計な口なんてきけなくなってしまう。
そこに、言葉以上に僕を想ってくれる伴侶の真意が惜しげもなく露わにされている……ような気がするからかもしれない、多分きっと。
そうこうしている間に、あ、と思った時には、僕の体は横向きに寝転がっているラグナの腕の中へ簡単に囲われていた。
「ユーリオ、愛している」
低く柔らかく穏やかに響く声音が、そんな言葉を紡ぎ――。
額の上へ、僕の髪越しに触れる唇の感触と共に、寝間着の裾からそっと入り込んだ大きな手に、背中を触れられて――。
「ぁ…ふぁ…っん」
途端に体をぽわっと包み込んでくれる穏やかな熱と、昨夜もしつこい程に与えられた快楽の余韻に、思わず鼻から甘ったるい息が抜けていく。
それが恥ずかしくないかと言えば、僕だって当然気恥ずかしい。
でも、
「ん、ラグナ……もっと……」
黒色をした薄い寝間着一枚で包まれた逞しい大きな体に抱き締められて、その温もりを実感できる『今』に、少しは素直に甘えてみたくもなる。
「愛いな?愛い愛い愛い愛いのだが愛いが過ぎないか?愛おしいと愛いの極致をユーリオと呼ぶべしと世界に定めねばならんな?うむ急ぐか」
「そこの魔王ちょっと静かにして。いい加減空気も読んで」
ふわふわとした心地良さを堪能しながら、小声で何かまくし立てている伴侶へ苦言を呈したところで、自然と目蓋も重くなってくる。
今日は僕が主体とならなければいけない予定は何もなかったはず、と頭の隅で確認を終えた僕は、そのまま自堕落な二度寝へと突入していった。
だから意識が途絶える寸前、とてもとても愉しげに囁かれた低い声音を理解するには、時間が足りなかったんだ。
「……えーっと、これから相手をするのは人間の五か国連合だから、準備に死力を尽くさなくちゃ――」
「うむ!ユーリオたん、いやユーリオの頑張りは余がしかと見届けよう!!」
「は!?え!?な、なんでラグナがここ、に……ってこれ夢!?僕の夢だよね!?また性懲りもなく昔の夢を見てる!?」
「言ったであろう?次からは夢の中であろうと其方を独りにはさせぬ、と。余はここで愛しいユーリオの愛い英姿を堪能させてもらおう。うむうむ、其方が語る話に耳を傾けるのもよいが、こうして追憶を共にするのもまた一興よ」
「え?……え?………嘘ぉお――!?」
「おっと、観客は多い方がユーリオも楽しかろう。次はウーギとサリオン辺りも呼び寄せてやるか……ふむ、これは極上の褒賞だな!」
この日から夢の中にまで出張してくるようになった魔王たちのせいで、僕の記憶は相当改竄されてしまったかもしれない。
望みを叶える未来だけを頼りに、ただ孤独を友として挑んだ千年近い年月が、ラグナと多くの仲間たちに見守られ熱い声援を受けながら過ごした時間で上書きされたようなものだもの。
勝手に過去すら塗り替えてしまう僕の魔王は、本当にもう強引で傲慢だよね。
でもこれが、あっけなく僕の全てを救って大切にしてくれる存在の愛し方だというのなら、一滴残らず享受してやる。
魔王たるラグナレノスに『伴侶』として愛されるのは、ユーリオという元人間の魔導士である僕、唯一人だけなのだから。
夢のようなこの幸福を手放す気は、僕にだってさらさらないもの。
◆1話完結
******************
できるだけ大きく息を吸い込んだ後、僕は久しぶりに腹の底から声を出した。
「もおぉ――――!!魔王の馬鹿ぁあぁぁあぁぁッッ!!!」
その勢い任せに、両手で握りしめていた殴打武器を力の限り、振り下ろす。
直後、手応えのわりには異様なほど激烈な破壊音が耳を劈いた。
自分が武器を振るった瞬間から反射的に目を閉じてしまっていたことに気が付いたのは、ビリビリと痛みを訴える鼓膜に驚いてからだった。
それもそのはず、僕には元々武芸の才能なんてないんだ。
敵から目を逸らすなとか、息の根を止めたか確認しきる前に油断するなとか、頭では理解できていたとしても、体が追いつくはずないじゃないか。
だから、僕は恐る恐る目を開けるしかなくて――……薄目でちらりと確認した景色に、息を止めた。
ついで数歩ほど素早く後ずさりしてから、ようやくしっかりと目を見開いてみたのだけれど、やっぱりこの口からは情けない声しか出てこなかった。
「ひっ!……う、うわぁ……やだぁ……うぇぇ」
そこに広がっていたのは、数々の戦場を引きずり回されてきた僕でも涙目になってドン引きせざるを得ない、凄惨な景色だ。
僕がいる場所は深い深い森の中に点在する、開けた野原の一つ。
太陽の明るい陽射しが降り注ぐ緑の絨毯には、鮮血の血だまりが刻一刻と広がり、僕の足元へ迫る。
注視したくもないというのに周囲の草むらに転がる大小の肉片と、血でできた池の中央に存在するグチャッと潰れた何かが否応なく視界に入る。
濃い血の匂いが鼻をつくなか、僕はもう一度、再会を待ち焦がれている相手のことを心の限りに罵倒した。
「ほんっと……何してくれてんのさッあの魔王ッ!!なんで!?なんで僕の一撃でドラゴンが潰れちゃうわけ!?いつ!?ほんといつから!?んもおぉぉおおお!!!人の体を勝手にいじるなあの変態――!!!」
そのまま「ひぇ、ひえぇ」と小声で叫びながら生理的に無理のある元ドラゴン、現撲殺死体から更に距離をとった。
なぜ僕がこんなこと――そう、たった一人でドラゴンに殴打武器一本で挑むことになったのかというと、少し前の戦争が原因だ。
このザルツヴェストの領土を守るために、今は僕だけのお一人様国家が真正面から人間の軍隊と初めてぶつかり合ったのだ。
正直、死んだと思った瞬間もあったけど……まぁ僕を傷つけられる存在はいないという、誰かさんの言葉が証明されたことはよかったと思う。
ただね、僕自身の腕力、正確に言えば攻撃の意思を持った際の肉体強度の変化は、どう見てもやり過ぎじゃないかな。
「さすがに素手じゃないけど……戦場で拾って来たただの人間用のメイスで……ドラゴンが潰れちゃうなんて……僕をこんな怪力魔族にしなくてもよくない?」
人生で二度目の単独ドラゴン討伐という実験を無事終えたこともあり、肩から力が抜けきった僕はため息をつきながら、そう独り言ちた。
魔王と魔族たちが消えてから、もう十年……いや、まだ十年、かな。
何にせよ、十年目にして初めて知った自分の怪力さを受け止めるには、もう少しばかり時間が必要かもしれない。
「……どうりでベルちゃんを叩き起こす時に凄い音がするわけだよね。でもこれ、どうやって気を付けたらいいの?……もし、うっかりラグナまでぶちのめしたら……困るよ」
ドラゴンの返り血すらも吹き飛ばすほどの威力だったせいか、血痕一つない綺麗なままの手を握ったり開いたりしながら、僕はそう心配事を口にしていたのだけれど――。
『あぁ~~~~~……愛いッ!!』
頭の中に突如響いた懐かしい声音に、え?と顔を上げた瞬間、視界が真っ白に染まった。
そして次に僕がパチパチと目を瞬いた世界では、他でもない僕の魔王がその精悍さと美麗さが同居する顔をデレッと歪めて寝転がっているではないか。
それも、僕と同じベッドへ横になって、僕のすぐ傍で。
「……ん?え?…………あ、夢か……」
仄かに薄暗い周囲は、まだ天蓋カーテンが降ろされているせいだろう。
僕の体内時計によれば普段の起床時間よりも遅い時刻だとは思うけれど、寝過ごした焦りよりも夢見の悪さに少しだけ心臓の音が早くなる。
僕が守り続けた魔族の国・ザルツヴェストへ、真なる魔王とその眷族たちを再び迎えることができて、今日で一か月程だろうか。
一応はゆっくりと過ごさせてもらっているとはいえ、賑やかで幸せな毎日は、相変わらず時折現実感がない。
だから、ずっと独りで過ごしていた頃の夢を見るのかもしれない。
こうして僕の魔王が――伴侶であると誓約してくれた存在が傍にいてくれるのに、夢の中では当然のように僕は独りで、それが当たり前なんだもの。
片肘をついて横になっているラグナが、締まりのない笑みで僕を見下ろしている現実の方こそが夢だと言われても、多分僕は納得できてしまう。
そしてこの夢から覚めた後はきっと、「いい夢を見られたなぁ……ラグナに話すネタ追加っと」とでも笑いながら呟いて、胸を占めようとする切なさみたいなものを上手く誤魔化すんだ。
寝起きでぼんやりとした頭のまま、そう感傷的な気分に浸っていたのだけれど……僕の大好きな伴侶に、そんな空気が通じるはずもなかった。
「くっふっふっふ……いったいどんな夢見かと覗いてみれば、夢の中でも余のことばかりではないか~!」
「……人の夢まで勝手に覗いてくるとか、さすが魔王だよね。でも僕のプライバシーも尊重して?」
「其方は本当に愛い。余も、いついかなる時であろうともユーリオを『愛している』と『約定』す」
「っ何をそんな気軽に約定してるのさ!?ラグナも寝ぼけてる!?」
「おぉ、これでも魂が少し癒えるとは愛い愛い!だが……ごく僅かとはいえ、眠っている間に進んだ傷みは気掛かりであるな……」
「――っ」
常にマイペースなラグナの言葉に、朝っぱらからブンブンと振り回されている自覚はある。
でも、ツッコミ所満載の会話の途中に突然ふと真剣な表情をされて、その淡く灯る瑠璃色の双眸でひたと真摯に見つめられてしまうと、余計な口なんてきけなくなってしまう。
そこに、言葉以上に僕を想ってくれる伴侶の真意が惜しげもなく露わにされている……ような気がするからかもしれない、多分きっと。
そうこうしている間に、あ、と思った時には、僕の体は横向きに寝転がっているラグナの腕の中へ簡単に囲われていた。
「ユーリオ、愛している」
低く柔らかく穏やかに響く声音が、そんな言葉を紡ぎ――。
額の上へ、僕の髪越しに触れる唇の感触と共に、寝間着の裾からそっと入り込んだ大きな手に、背中を触れられて――。
「ぁ…ふぁ…っん」
途端に体をぽわっと包み込んでくれる穏やかな熱と、昨夜もしつこい程に与えられた快楽の余韻に、思わず鼻から甘ったるい息が抜けていく。
それが恥ずかしくないかと言えば、僕だって当然気恥ずかしい。
でも、
「ん、ラグナ……もっと……」
黒色をした薄い寝間着一枚で包まれた逞しい大きな体に抱き締められて、その温もりを実感できる『今』に、少しは素直に甘えてみたくもなる。
「愛いな?愛い愛い愛い愛いのだが愛いが過ぎないか?愛おしいと愛いの極致をユーリオと呼ぶべしと世界に定めねばならんな?うむ急ぐか」
「そこの魔王ちょっと静かにして。いい加減空気も読んで」
ふわふわとした心地良さを堪能しながら、小声で何かまくし立てている伴侶へ苦言を呈したところで、自然と目蓋も重くなってくる。
今日は僕が主体とならなければいけない予定は何もなかったはず、と頭の隅で確認を終えた僕は、そのまま自堕落な二度寝へと突入していった。
だから意識が途絶える寸前、とてもとても愉しげに囁かれた低い声音を理解するには、時間が足りなかったんだ。
「……えーっと、これから相手をするのは人間の五か国連合だから、準備に死力を尽くさなくちゃ――」
「うむ!ユーリオたん、いやユーリオの頑張りは余がしかと見届けよう!!」
「は!?え!?な、なんでラグナがここ、に……ってこれ夢!?僕の夢だよね!?また性懲りもなく昔の夢を見てる!?」
「言ったであろう?次からは夢の中であろうと其方を独りにはさせぬ、と。余はここで愛しいユーリオの愛い英姿を堪能させてもらおう。うむうむ、其方が語る話に耳を傾けるのもよいが、こうして追憶を共にするのもまた一興よ」
「え?……え?………嘘ぉお――!?」
「おっと、観客は多い方がユーリオも楽しかろう。次はウーギとサリオン辺りも呼び寄せてやるか……ふむ、これは極上の褒賞だな!」
この日から夢の中にまで出張してくるようになった魔王たちのせいで、僕の記憶は相当改竄されてしまったかもしれない。
望みを叶える未来だけを頼りに、ただ孤独を友として挑んだ千年近い年月が、ラグナと多くの仲間たちに見守られ熱い声援を受けながら過ごした時間で上書きされたようなものだもの。
勝手に過去すら塗り替えてしまう僕の魔王は、本当にもう強引で傲慢だよね。
でもこれが、あっけなく僕の全てを救って大切にしてくれる存在の愛し方だというのなら、一滴残らず享受してやる。
魔王たるラグナレノスに『伴侶』として愛されるのは、ユーリオという元人間の魔導士である僕、唯一人だけなのだから。
夢のようなこの幸福を手放す気は、僕にだってさらさらないもの。
60
お気に入りに追加
1,965
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(40件)
あなたにおすすめの小説
【完結】欠陥品と呼ばれていた伯爵令息だけど、なぜか年下の公爵様に溺愛される
ゆう
BL
アーデン伯爵家に双子として生まれてきたカインとテイト。
瓜二つの2人だが、テイトはアーデン伯爵家の欠陥品と呼ばれていた。その訳は、テイトには生まれつき右腕がなかったから。
国教で体の障害は前世の行いが悪かった罰だと信じられているため、テイトに対する人々の風当たりは強く、次第にやさぐれていき・・・
もう全てがどうでもいい、そう思って生きていた頃、年下の公爵が現れなぜか溺愛されて・・・?
※設定はふわふわです
※差別的なシーンがあります
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令息に転生したから断罪ルート回避しようとした結果、王太子殿下を溺愛してる
琥月ルル
BL
【完結】俺は、前世で姉がプレイしていた十八禁乙女ゲームに登場する当て馬役の公爵令息・ウィリアムに転生した。ゲームでは、攻略対象の王太子・エドワードとヒロイン・セシリアの恋路を邪魔する悪役として断罪され、ウィリアムは悲惨な結末を迎える。ところが、断罪ルートを回避するためにゲームとは違う行動を重ねるうちに、エドワードに惹かれていく自分に気付く。それに、なんとエドワードも俺を特別な存在だと思ってくれているようで…!?そんな期待に胸を高鳴らせていた俺だったが、ヒロイン・セシリアの乱入で俺たちの恋は予期せぬ大波乱の予感!?
黒髪垂れ目・ゆるふわ系のフェロモンあふれる無自覚スパダリな超絶美形の悪役令息(?)と、金髪碧眼・全てが完璧だけど裏で死ぬほど努力してる美人系の王子様(攻略対象)が織りなす、切なくも甘く幸せな恋の物語。
※主人公が攻めです。王子様(受け)を溺愛します。攻めも受けもお互いに一途。糖度高め。
※えろは後半に集中してます。キスやえっちなど、いちゃいちゃメインの話にはタイトルの後に♡がつきます。
婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する
135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。
現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。
最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。
隠しキャラに転生したけど監禁なんて聞いてない!
かとらり。
BL
ある日不幸な事故に遭い、目が覚めたら姉にやらされていた乙女ゲームの隠しキャラのユキになっていた。
ユキは本編ゲームの主人公アザゼアのストーリーのクリアまで隠されるキャラ。
ということで、ユキは義兄に監禁され物理的に隠されていた。
監禁から解放されても、ゲームではユキは心中や凌辱、再監禁、共依存など、バッドエンドばかりが待っているキャラ…
それを知らないユキは無事にトゥルーエンドに行き着けるのか!?
悪役ですが、死にたくないので死ぬ気で頑張ります!!!
モツシャケ太郎
BL
両親から虐待される毎日。そんな中で偶然、街中で見かけた乙女ゲーム「蜂蜜色の恋を貴方に」にドハマリしてしまう。
弟と妹の高校の学費を払うため、ブラック企業に務める一方、ゲームをする。──実に充実した生活だ。
だが、そんなある日、両親の暴力から弟妹を庇い死んでしまう。
死んでしまった……そう、死んだ、はずだった。しかし、目覚めるとそこは、知らない場所。えぇ!?ここどこだよ!?!?
ん????ちょっと待て!ここってもしかして「蜂蜜色の恋を貴方に」の世界じゃねえか!
しかも俺、最悪の結末を辿る「カワイソス令息!?」
乙女ゲームの悪役に世界に転生した主人公が、死にたくなくて必死に頑張るお話です。(題名そのまんまやないかい!)
主人公大好き愛してる系美丈夫
×
不憫跳ね除ける浮世離れ系美人
攻めがなっっっかなか出てこないけど、ちゃんと後から出てきます( ͡ ͜ ͡ )
※中世ヨーロッパに全く詳しくない人が中世ヨーロッパを書いています。
なんでも許せる人がご覧下さい。
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。
【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。
cyan
BL
留学中に実家が潰れて家族を失くし、婚約者にも捨てられ、どこにも行く宛てがなく彷徨っていた僕を助けてくれたのは隣国の宰相だった。
家が潰れた僕は平民。彼は宰相様、それなのに僕は恐れ多くも彼に恋をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
ご感想ありがとうございます~!!
大好きと言って頂けてもうもう本当に嬉しい限りです。
ユーリオと魔王&愉快な仲間たち(笑)に最後までお付き合い下さり、本当にありがとうございました(≧▽≦)
好きの極地が詰まってる……!
この作品に出逢えたことに感謝しかありません。書いてくれて本当にありがとうございます。
こちらこそ嬉しいご感想を頂き、本当にありがとうございます!
連載中はあっち行こうかこっち行こうか(展開を)悩ましく転がっていた部分もありますが、お楽しみ頂けて心底嬉しいです。お付き合い頂きありがとうございました(*´▽`*)
嘉野先生の作品は3作拝読してます。
このお話か1番好きです!
続編気が向いたらお願いしますね。
楽しみにしています。
わーい!たくさんお付き合い頂きありがとうございます!(≧▽≦)
なかでも売却~が1番とのことでとても嬉しいです。
そのうち番外編にも手を出すかと思いますので、その際はぜひぜひよろしくお願いいたします♪