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◇後日談&番外編
頭のネジが何本か行方不明中だったんだ(と主張する)
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◆番外編R18:カナタが記憶を取り戻して以降、一番暴走していた頃
あぁ、もう毎日が幸せ過ぎて仕方ない。ロイのことを思い出せてから、俺は一秒一秒がとてつもなく満たされていて、幸せで、もう絶好調に幸せだった。
なんでロイを忘れていられたのか、二度も記憶喪失を起こした俺自身を本気でぶん殴りたいほどに幸せだ。ん?よく意味がわからないな?まぁいっか。
それに俺の記憶喪失の原因も、大体自分でわかってるしな。
結局、俺が自分の記憶を魔力に変換する、とかいう方法を思いついて実行したせいだ。一度やったことだから、無意識にもう一度同じことをやりかけたんだ。自分の魔力が足りない時にどうしたらいいか、体が覚えていたのだろう。もしかしたら、癖になっていたのかもしれない。
…………まぁそれだけロイの『行き先は発動した魔術自体に聞いてくれ』のノーコン全力魔術を制御するのに、俺の魔力が消費されたってことだけど。
記憶を取り戻したから言えることだけど、ほんっと、なんでロイってあんなに制御下手くそなんだろうな?あぁ、でも今はもうそんなこと、どうでもいいんだ。ロイは少し気にしているみたいだけど、それはまた今後の課題ということで、追々俺と二人で解決していけばいい。
『今の俺』なら、全力でロイの制御訓練にも付き合えるし、俺の持てる限りの知識と魔力でサポートだって出来るからな。
我ながらなんて俺って、便利なんだろう!!素晴らしい!!いくらでもロイの役に立てるじゃん!!よっし!!早速明日から、いや今からでも――――
「どうした、カナタ?随分と楽しそうだな。それほどまで、ダーウィル辺境伯が恋しいのか?」
喉の奥で笑いながら、そう囁くように告げる低く柔らかな声音に、俺は勢いよく顔を上げた。
そうだった、今は不可抗力でご無沙汰になっていた近況報告を、マーリちゃん宛に認めている所だったんだ。
近々世界中のお偉いさんたちを集めて、色々お知らせする席を設ける予定だけど、そこで公にする前にお世話になりっぱなしのマーリちゃんやウーウルさんには、是非とも先に知らせておきたい。
「違うって!むぅう……わかってるくせに。ロイは俺のですー、ってあらかじめお知らせするための手紙なのに……」
そう、ロイに余計な虫がつかないよう、きちんと俺のだってことを宣言しておくことにしたのだ。ふふふふ、それも、『伴侶』という形で!!
伴侶、つまり、結婚!いやー、かなりの年の差婚だけど、まぁ俺がこうなっているせいか、ロイのことはそんなに年下だとは思えないんだよな。
むしろ今の俺にとってロイは、世界で一番頼りになる少し年上の大好きな男、という印象が大きい。昔の記憶も大体戻ってるはず、なんだけどな?なんでだろ。
それだけ俺がロイを好きだってことかな?うん、きっとそうだ。むふふ……これで名実ともにロイは俺のモノかと思うと、口元がにやけきるのが止められない。
そして嬉しさのあまり、推敲中だった手紙をぐしゃりと握りつぶしてしまった。あ、とその事態に声を上げるよりも先に、小さなテーブルを挟んで向かいの席に腰を落としていたロイがまた控えめに、笑う。
「なかなか集中できておらぬようだな?気分転換が必要か?」
とろりと甘く眇められた紫色の瞳を見つめる中、手の中にあった紙片をその指先に取り上げられる。ちらりと一瞬だけ文面を追った後、またロイの視線はすぐに俺へと戻された。
今の時刻は、そろそろ夕方に差し掛かろうかという頃で。この部屋は、俺の巣と言っても過言ではない深奥宮殿のいつもの、寝室で。
…………いいのかな?最近は特にロイとくっついている自覚はあるんだけど、時と気分によっては少々強引に、その、ロイを誘っ……うん、いいやもう。
「必要、デス」
思わず天蓋付きベッドへと視線を向けてしまった時点で、俺の願望はダダ漏れだろうし。ロイもそういうつもりで、多分口にしてるんだろうし。
まだ明るい室内でロイに手を取られて立ち上がれば、すぐに優しく抱き寄せられた後、触れるだけのキスがそっと唇に降ってくる。
その温もりと、至近距離で輝く紫水晶に、俺の頭はあっさりとロイ一色に染まった。
そのまま二人でベッドの上に移動して、ロイが天蓋カーテンを下ろしてくれようとしたのを、止めた。止めて、しまった。
「カナタ?」
いいのか?と言外に含まれる問いに、これもなぜか、俺は頷いていた。
ロイの瞳が少しだけ驚愕に染まるのは、今まで俺が明るい場所での行為を望んでいなかったためだ。だから、ロイはいつだって俺の望む環境をちゃんと作ってくれていた。なお、色々と一人で画策してくれやがった、某国での馬車の件は除く。
そりゃやっぱり明るい所で、っていうのは変わらずちょっと抵抗あるけど、でも今はさ……
「ん、早く。」
もうさっきから、正確に言えばロイに手を取られた時から、胸がうるさくて仕方ない。まだ触れられてもいないのに、躰の奥からじわりと熱が生まれてくる。
思えば最近ずっとこうで、ちょっとばかり、困る。いつでもどこでも、ロイが欲しくなるなんて。
ロイの一級品のシャツのボタンに指を掛けながら、頬に集まる熱には気づかない振りをして、いそいそと手を動かしていたんだけ、ど……気づいた時には、背中からシーツの上に寝転がっていた。
「――最初から煽るとは、覚悟はいいのだろうな。」
俺を見下ろしてそう嫣然と笑む男の色香と、その瞳にちらつく欲の光を見咎めた瞬間、幸せ絶好調中の俺は、ほぼ無意識にその首元に腕を回して、口走っていた。
「ロイこそ、俺を煽り過ぎ。覚悟し――」
覚悟しろよ?という台詞を最後まで口にできなかったのは、そのまま深い深いキスで息まで奪われたからだ。
その段階ではまだ頭の片隅で、あれ?これってもしかしてちょっと早まったか?と自問自答する余裕はあった。
ただなぁ……言い訳じゃないけど、いやむしろ言い訳でしかないけど、俺の躰って昔の件でかなり感度良くされてるからさ、もうすぐグズグズになっちゃうわけだよ。
ディープキスされながら、大好きな手や指に敏感な所を余すことなく触れられたら、頭おかしくなるくらい、すぐ気持ち良くなるんだよ。それもこれも、ロイが事あるごとに「愛してる」と囁くせいだ。言葉にせずともその瞳で、一瞬も休むことなく、俺を愛していると言い続けるせいだ。
だったら俺も、と思ってしまったじゃないか。
その結果、
「んっ……ふ、んぅ…っ」
「カナタ、無理をせずともよいが……」
「い、いからっ……動く、な、よっ?」
ベッドに仰向けで横たわるロイの上で、膝立ちになっている、わけだけど。
(は、早まった、気がする……強制じゃない……自分から望んで、き、騎乗位とかっ……初めてだし!思い出したくない、けど、経験したのも昔過ぎて、ろくに覚えてないしっ……できる、か?)
いつものように一度イクくらい散々慣らされたから、受け入れる態勢はしっかり整っているんだけど、どうしても腰を落としきれない。
(っ大体!やっぱりロイのデカすぎだって!今更だけど、ほんっっと今更だけど!!)
自分のとは明らかにサイズの違う屹立をそこに押し当てるたびに、くちっと淫靡な音が上がる。それを支える手に伝わる熱と硬質さに、眩暈すらしそうだ。
「ぁ……はっ……あっ」
それでも何度か同じことを繰り返していると、少しずつ少しずつ、ロイの熱を飲み込み始めれた。でも、段々と躰を暴かれていく感覚が、いつもと違う。そりゃそうだ、全部自分でやっているんだから。
(っっ俺、がロイのっ……自分で……いれ、て……っ!!)
やめておけばいいのに、ついそう意識してしまえば、頭と躰の奥の熱が一段階また上がった気がする。これ、もしかして俺イキそうになってない?え?マジで?
がくがくと小さく足が震える中、どうにか少し気持ちを落ち着かせようと、顔を上げた。その先でじっと俺を視姦するように見つめるロイと、目が合った途端、
「っあ!?」
「残念だが時間切れだ、カナタ」
あっという間に腰を掴まれたと思ったら、ズプンッという音がやけに艶めかしく響いて、下から強く突き上げられていた。
「ふぁっ……ぁ、あ?え?なっ……――――――っ!!」
その直後、一瞬で背筋を駆け抜けた甘い痺れと、目の前に白く星が散るような強烈な感覚にろくに息が出来なくなる。
(あ、あ、イってる……の、全部ロイに、見られっ…て……うにぁあっ!!)
自分の腹に粘ついた液体の不快な感触を覚えながらも、俺としては初めての騎乗位で、しかもこんなあっさり達したばかりか、それを明るい室内でじっくり観察されているという状況に、もう、頭がパンクした。
「っ好き、好きだ、ロイっ!もう、全部好き、大好きだ!」
ロイの胸の上にへにょっと倒れこみ、荒い息の合間に口からついて出る言葉を繰り返しながら、躰の中で脈打つ熱の塊りを知らず、きつく締めあげてしまう。それだけで、また凄まじい快感が足元からせり上がってきて――
「ふ、ふあっぁあっ!ろい、ろいっ……あ、あぁっん!」
「っだから煽るなと……あぁもうよいか、好きにするぞ?」
「ぁ、ふっ…して、好きにしていいからっ、もっ……ロイが好きっ!!」
必死に首を伸ばして、拙いだけのキスを仕掛けて、それから後はまたいつものように、ドロドロに溶かされていった。
もうロイの為なら喜んで何でもする、俺に出来る事なら何だってやる。ぶっちゃけ世界が欲しいとか言われたら、簡単にやる。どんな手を使ってでも、やる。
それくらいロイが好きで、好き過ぎて頭の中がブワッとなっていたんだが……多分、思っていたことが全部、口から出ていたみたいだ。
それなのにロイは、たった一つしか俺に願い事を言わなかった。
「ならば私が終わるその時まで、傍にいさせてくれ。」
その言葉に、また俺のロイへの想いが爆発したのは必然だった。
もうほんっと!何度も言うけど、ロイって神様か!!俺の神様か!!絶対、もう二度と俺から放してなんてやらないからな?!ロイ本人がそう言おうと絶対ダメだからな!?もうロイは俺のだし!俺のだって世界相手に宣言するんだからなー!!ロイ、大好きだッッ!!!
と、言葉になり切らない想いを、また啼きながらまくし立てた気もする。
最近、こういうのが恒例化してきたようなと頭の隅で思いながらも、その日もそうしてロイを堪能してしまった。書きかけの手紙のことが、完全に頭から失踪するくらいに。
そんな感極まり過ぎた幸せな日々は、結局それからしばらく続くことになった。それは俺が、古い古い知り合いに『残念だ』とお灸をすえられて、我に返る日まで。
そして、我に返った結果――……
「カナタ、今宵は灯りもそのままでよ―――」
「っダメだ!絶対消して!頼むから消してくださいお願いしますっ!!」
自分がやったあれやこれやに対して、今更揺り戻しのように羞恥が襲ってきて、ハジメテの時以上にしばらく恥ずかしがることになったとかアホか。
ロイはそんな俺を愉しんでいるみたいだったけど、でも仕方ないだろ!まさかちょっと前の自分が、無意識でテンションMAXに暴走してたとか、どんな黒歴史だよ!?
………………きっと、頭のネジがどっか行ってたんだよ。うん、絶対そうだから!
【後書き】
頭が完全にお花畑in楽園でひゃっほーぃ中のお子様でした
次話はカナタの過去編予定です
あぁ、もう毎日が幸せ過ぎて仕方ない。ロイのことを思い出せてから、俺は一秒一秒がとてつもなく満たされていて、幸せで、もう絶好調に幸せだった。
なんでロイを忘れていられたのか、二度も記憶喪失を起こした俺自身を本気でぶん殴りたいほどに幸せだ。ん?よく意味がわからないな?まぁいっか。
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結局、俺が自分の記憶を魔力に変換する、とかいう方法を思いついて実行したせいだ。一度やったことだから、無意識にもう一度同じことをやりかけたんだ。自分の魔力が足りない時にどうしたらいいか、体が覚えていたのだろう。もしかしたら、癖になっていたのかもしれない。
…………まぁそれだけロイの『行き先は発動した魔術自体に聞いてくれ』のノーコン全力魔術を制御するのに、俺の魔力が消費されたってことだけど。
記憶を取り戻したから言えることだけど、ほんっと、なんでロイってあんなに制御下手くそなんだろうな?あぁ、でも今はもうそんなこと、どうでもいいんだ。ロイは少し気にしているみたいだけど、それはまた今後の課題ということで、追々俺と二人で解決していけばいい。
『今の俺』なら、全力でロイの制御訓練にも付き合えるし、俺の持てる限りの知識と魔力でサポートだって出来るからな。
我ながらなんて俺って、便利なんだろう!!素晴らしい!!いくらでもロイの役に立てるじゃん!!よっし!!早速明日から、いや今からでも――――
「どうした、カナタ?随分と楽しそうだな。それほどまで、ダーウィル辺境伯が恋しいのか?」
喉の奥で笑いながら、そう囁くように告げる低く柔らかな声音に、俺は勢いよく顔を上げた。
そうだった、今は不可抗力でご無沙汰になっていた近況報告を、マーリちゃん宛に認めている所だったんだ。
近々世界中のお偉いさんたちを集めて、色々お知らせする席を設ける予定だけど、そこで公にする前にお世話になりっぱなしのマーリちゃんやウーウルさんには、是非とも先に知らせておきたい。
「違うって!むぅう……わかってるくせに。ロイは俺のですー、ってあらかじめお知らせするための手紙なのに……」
そう、ロイに余計な虫がつかないよう、きちんと俺のだってことを宣言しておくことにしたのだ。ふふふふ、それも、『伴侶』という形で!!
伴侶、つまり、結婚!いやー、かなりの年の差婚だけど、まぁ俺がこうなっているせいか、ロイのことはそんなに年下だとは思えないんだよな。
むしろ今の俺にとってロイは、世界で一番頼りになる少し年上の大好きな男、という印象が大きい。昔の記憶も大体戻ってるはず、なんだけどな?なんでだろ。
それだけ俺がロイを好きだってことかな?うん、きっとそうだ。むふふ……これで名実ともにロイは俺のモノかと思うと、口元がにやけきるのが止められない。
そして嬉しさのあまり、推敲中だった手紙をぐしゃりと握りつぶしてしまった。あ、とその事態に声を上げるよりも先に、小さなテーブルを挟んで向かいの席に腰を落としていたロイがまた控えめに、笑う。
「なかなか集中できておらぬようだな?気分転換が必要か?」
とろりと甘く眇められた紫色の瞳を見つめる中、手の中にあった紙片をその指先に取り上げられる。ちらりと一瞬だけ文面を追った後、またロイの視線はすぐに俺へと戻された。
今の時刻は、そろそろ夕方に差し掛かろうかという頃で。この部屋は、俺の巣と言っても過言ではない深奥宮殿のいつもの、寝室で。
…………いいのかな?最近は特にロイとくっついている自覚はあるんだけど、時と気分によっては少々強引に、その、ロイを誘っ……うん、いいやもう。
「必要、デス」
思わず天蓋付きベッドへと視線を向けてしまった時点で、俺の願望はダダ漏れだろうし。ロイもそういうつもりで、多分口にしてるんだろうし。
まだ明るい室内でロイに手を取られて立ち上がれば、すぐに優しく抱き寄せられた後、触れるだけのキスがそっと唇に降ってくる。
その温もりと、至近距離で輝く紫水晶に、俺の頭はあっさりとロイ一色に染まった。
そのまま二人でベッドの上に移動して、ロイが天蓋カーテンを下ろしてくれようとしたのを、止めた。止めて、しまった。
「カナタ?」
いいのか?と言外に含まれる問いに、これもなぜか、俺は頷いていた。
ロイの瞳が少しだけ驚愕に染まるのは、今まで俺が明るい場所での行為を望んでいなかったためだ。だから、ロイはいつだって俺の望む環境をちゃんと作ってくれていた。なお、色々と一人で画策してくれやがった、某国での馬車の件は除く。
そりゃやっぱり明るい所で、っていうのは変わらずちょっと抵抗あるけど、でも今はさ……
「ん、早く。」
もうさっきから、正確に言えばロイに手を取られた時から、胸がうるさくて仕方ない。まだ触れられてもいないのに、躰の奥からじわりと熱が生まれてくる。
思えば最近ずっとこうで、ちょっとばかり、困る。いつでもどこでも、ロイが欲しくなるなんて。
ロイの一級品のシャツのボタンに指を掛けながら、頬に集まる熱には気づかない振りをして、いそいそと手を動かしていたんだけ、ど……気づいた時には、背中からシーツの上に寝転がっていた。
「――最初から煽るとは、覚悟はいいのだろうな。」
俺を見下ろしてそう嫣然と笑む男の色香と、その瞳にちらつく欲の光を見咎めた瞬間、幸せ絶好調中の俺は、ほぼ無意識にその首元に腕を回して、口走っていた。
「ロイこそ、俺を煽り過ぎ。覚悟し――」
覚悟しろよ?という台詞を最後まで口にできなかったのは、そのまま深い深いキスで息まで奪われたからだ。
その段階ではまだ頭の片隅で、あれ?これってもしかしてちょっと早まったか?と自問自答する余裕はあった。
ただなぁ……言い訳じゃないけど、いやむしろ言い訳でしかないけど、俺の躰って昔の件でかなり感度良くされてるからさ、もうすぐグズグズになっちゃうわけだよ。
ディープキスされながら、大好きな手や指に敏感な所を余すことなく触れられたら、頭おかしくなるくらい、すぐ気持ち良くなるんだよ。それもこれも、ロイが事あるごとに「愛してる」と囁くせいだ。言葉にせずともその瞳で、一瞬も休むことなく、俺を愛していると言い続けるせいだ。
だったら俺も、と思ってしまったじゃないか。
その結果、
「んっ……ふ、んぅ…っ」
「カナタ、無理をせずともよいが……」
「い、いからっ……動く、な、よっ?」
ベッドに仰向けで横たわるロイの上で、膝立ちになっている、わけだけど。
(は、早まった、気がする……強制じゃない……自分から望んで、き、騎乗位とかっ……初めてだし!思い出したくない、けど、経験したのも昔過ぎて、ろくに覚えてないしっ……できる、か?)
いつものように一度イクくらい散々慣らされたから、受け入れる態勢はしっかり整っているんだけど、どうしても腰を落としきれない。
(っ大体!やっぱりロイのデカすぎだって!今更だけど、ほんっっと今更だけど!!)
自分のとは明らかにサイズの違う屹立をそこに押し当てるたびに、くちっと淫靡な音が上がる。それを支える手に伝わる熱と硬質さに、眩暈すらしそうだ。
「ぁ……はっ……あっ」
それでも何度か同じことを繰り返していると、少しずつ少しずつ、ロイの熱を飲み込み始めれた。でも、段々と躰を暴かれていく感覚が、いつもと違う。そりゃそうだ、全部自分でやっているんだから。
(っっ俺、がロイのっ……自分で……いれ、て……っ!!)
やめておけばいいのに、ついそう意識してしまえば、頭と躰の奥の熱が一段階また上がった気がする。これ、もしかして俺イキそうになってない?え?マジで?
がくがくと小さく足が震える中、どうにか少し気持ちを落ち着かせようと、顔を上げた。その先でじっと俺を視姦するように見つめるロイと、目が合った途端、
「っあ!?」
「残念だが時間切れだ、カナタ」
あっという間に腰を掴まれたと思ったら、ズプンッという音がやけに艶めかしく響いて、下から強く突き上げられていた。
「ふぁっ……ぁ、あ?え?なっ……――――――っ!!」
その直後、一瞬で背筋を駆け抜けた甘い痺れと、目の前に白く星が散るような強烈な感覚にろくに息が出来なくなる。
(あ、あ、イってる……の、全部ロイに、見られっ…て……うにぁあっ!!)
自分の腹に粘ついた液体の不快な感触を覚えながらも、俺としては初めての騎乗位で、しかもこんなあっさり達したばかりか、それを明るい室内でじっくり観察されているという状況に、もう、頭がパンクした。
「っ好き、好きだ、ロイっ!もう、全部好き、大好きだ!」
ロイの胸の上にへにょっと倒れこみ、荒い息の合間に口からついて出る言葉を繰り返しながら、躰の中で脈打つ熱の塊りを知らず、きつく締めあげてしまう。それだけで、また凄まじい快感が足元からせり上がってきて――
「ふ、ふあっぁあっ!ろい、ろいっ……あ、あぁっん!」
「っだから煽るなと……あぁもうよいか、好きにするぞ?」
「ぁ、ふっ…して、好きにしていいからっ、もっ……ロイが好きっ!!」
必死に首を伸ばして、拙いだけのキスを仕掛けて、それから後はまたいつものように、ドロドロに溶かされていった。
もうロイの為なら喜んで何でもする、俺に出来る事なら何だってやる。ぶっちゃけ世界が欲しいとか言われたら、簡単にやる。どんな手を使ってでも、やる。
それくらいロイが好きで、好き過ぎて頭の中がブワッとなっていたんだが……多分、思っていたことが全部、口から出ていたみたいだ。
それなのにロイは、たった一つしか俺に願い事を言わなかった。
「ならば私が終わるその時まで、傍にいさせてくれ。」
その言葉に、また俺のロイへの想いが爆発したのは必然だった。
もうほんっと!何度も言うけど、ロイって神様か!!俺の神様か!!絶対、もう二度と俺から放してなんてやらないからな?!ロイ本人がそう言おうと絶対ダメだからな!?もうロイは俺のだし!俺のだって世界相手に宣言するんだからなー!!ロイ、大好きだッッ!!!
と、言葉になり切らない想いを、また啼きながらまくし立てた気もする。
最近、こういうのが恒例化してきたようなと頭の隅で思いながらも、その日もそうしてロイを堪能してしまった。書きかけの手紙のことが、完全に頭から失踪するくらいに。
そんな感極まり過ぎた幸せな日々は、結局それからしばらく続くことになった。それは俺が、古い古い知り合いに『残念だ』とお灸をすえられて、我に返る日まで。
そして、我に返った結果――……
「カナタ、今宵は灯りもそのままでよ―――」
「っダメだ!絶対消して!頼むから消してくださいお願いしますっ!!」
自分がやったあれやこれやに対して、今更揺り戻しのように羞恥が襲ってきて、ハジメテの時以上にしばらく恥ずかしがることになったとかアホか。
ロイはそんな俺を愉しんでいるみたいだったけど、でも仕方ないだろ!まさかちょっと前の自分が、無意識でテンションMAXに暴走してたとか、どんな黒歴史だよ!?
………………きっと、頭のネジがどっか行ってたんだよ。うん、絶対そうだから!
【後書き】
頭が完全にお花畑in楽園でひゃっほーぃ中のお子様でした
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