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第三章 真の勇者、ここにあり!

偽勇者の最期

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 バルードを倒してから数日後、王宮ではファンク達の勲章授与式が行われようとしていた。彼等は赤い絨毯の上を渡りながら、ブルータスの待つ玉座へと向かっていた。

「な、なんか緊張する……」
「私も……こんな事になるなんて思わなかったな……」
「私もですが、こんな名誉な事は滅多に無いですからね。胸を張って勲章を受け取りましょう!」
「そうね」

 アミ達は緊張するが、椿の励ましで緊張も吹き飛んでしまい、前を向いて歩く事に集中する。
 そのまま玉座の前に辿り着いた彼等は、横一列に並んで片膝をつきながら跪く。それと同時にブルータスが姿を現したのだ。

「全員揃っているな。では、これより勲章授与式を行う!」

 ブルータスの宣言と同時に、メイドが勲章を運びながら姿を現す。まずはファンクからだ。

「ファンク・エンドラーズ。お前の働きは見事だった。お前こそ真の勇者として相応しい。今後も勇者としてさらなる成長を期待しているぞ」
「はい!」

 ファンクは一礼して勲章を受け取り、拍手喝采が響き渡った。真の勇者の誕生を心から讃えていて、彼は照れ臭そうに頬を掻くのも無理なかった。

「シェリアよ。勇者のサポートは見事だった!流石はグランの孫娘だ」
「ありがとうございます!」

 シェリアも勲章を受け取って一礼し、グランはこの姿を見てうんうんと頷いていた。

(よくやったぞ、シェリア)

 グランは笑顔で頷く中、アミ達にも勲章が授けられる。彼女達は満面の笑みを浮かべながら喜んでいて、観衆に対しても一礼を忘れずに心がけた。

「真の勇者、バンザーイ!」
「新たなるヒーロー達の誕生だ!」

 観衆達からの熱いエールと喜びの声が響き渡り、ファンク達八人の功績を心から称えていた。

「パンダにされてからここまで飛躍するとは思わなかったな。でも、皆に出会えたからこそ、今の俺がいる。本当に……ありがとな!」

 ファンクの笑顔の一礼にアミ達も笑顔で返したその時、突如観衆がざわつき始める。

「何かあったのでしょうか?」
「さあ……」

 エリンと瞳が気になって声のした方を見ると、なんと右方面の向こう側に処刑台が用意されていて、その上には処刑人と神父が立っている。この様子だと、偽勇者であるバリウスと教皇達の処刑が行われようとしているのだ。

「そうか!確かバリウス達の処刑も兼ねていると言っていたな……今から行われるみたいだ!」

 ファンクはすぐにこの状態を察しながら推測し、それにアミ達はその時が来たと感じてしまう。あの偽勇者が死に処せられる瞬間がやってきたのかと思っているだろう。
 確かに彼のやる事は許されざるレベルであり、死刑されてもおかしくない。その為、民衆から嫌われるのも無理なく、因果応報というべきだ。

「確かにこの時が来たみたいね。でも、バリウス達は何処に……あっ!」

 アリアがバリウス達が何処にいるのか探したその時、彼等は手首を後ろに縛られたまま歩かされているのが見えた。着ている服はボロボロの白い一枚布であり、靴も履かずに歩かされていた。
 先頭が教皇でバリウスが二番目。その後ろは教皇の弟子達が六人いるのだ。

「バリウスがいたわ!教皇の後ろにいるみたい!」
「やはりあいつも死刑に処せられるみたいね。こうなると……もう救いようがないとしか言いようがないわ」

 シェリアの推測に皆が頷く中、バリウス達は処刑台の上に立たされてしまい、横一列に並ばされてしまう。

「これより、偽善勇者バリウス・シュナルダース並びに、教皇ボルテウス三世とその部下達の処刑を行う!彼等はバリウスを勇者に仕立て上げ、非道な行為を揉み消しただけでなく、反逆する者達を厳しく取り締まった!よって、この様になった!」

 処刑人からの説明に観衆達から歓声が響き渡る。それと同時に処刑も始まりを告げようとしたのだ。

「では、首を斬る用意を!」

 処刑人達は次々と剣を構えて罪人達の首を切ろうとする。それと同時に歓声も盛大に聞こえる中、バリウスは玉座前にいるファンクに視線を移していた。
 その姿を見たバリウスは盛大に怒りを露わにしていて、彼の手首を縛っている縄は今にも千切れそうだった。

「何故……僕が勇者じゃなく、処刑されるんだ……おかしいだろ……おかしいだろォォォォォ!!」
「「「!?」」」

 なんとバリウスは自力で手首を縛っていた縄を千切れさせてしまい、そのまま処刑台から飛び降りてファンクに襲い掛かってきた。

「狙いは俺か!こうなったら……終わらせるのみだ!」

 ファンクは勇者の剣を構え、そのままバリウスに立ち向かう。一心不乱でファンクを殺そうとするバリウスに対し、彼は冷静に判断しながら斬撃を繰り出した。

「ブレイクソード!」
「が……」

 その斬撃はバリウスを右斜一閃に斬り裂いてしまい、彼はそのまま仰向けに倒れて動かなくなった。

「バリウス・シュナルダース……哀れな男だったぜ……続きは地獄で裁かれな」

 ファンクが剣を納めた後、兵士達がバリウスの遺体を布にくるませ、そのまま墓地へと運ばれ始めた。
 こうして、バリウス・シュナルダースは勇者として崇められ、最後は偽物の勇者として処刑される事になり、ファンクに殺されてこの世を去ったのだった……
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