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第三章 真の勇者、ここにあり!

決戦の幕開け

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 修行を終えてから翌朝、ファンクはゴブレット村の跡地にある広場にいた。
 そこには殺された村人達の名前が刻まれた碑が置かれていて、ファンクはその前に立っているのだ。

「村の皆、君達の仇は俺達が取る。だから……ずっと見守ってくれ」

 ファンクが一礼した直後、アミ、フローラ、椿、アリア、エリン、マリス、シェリア、瞳の8人が駆け付けてくる。

「お待たせ!ファンク、戦う覚悟はできている?」
「準備万端だ。アルドラ火山での戦いは避けられない戦い。必ずグリーザを倒すだけでなく、魔族も倒しておかないとな!」
「そうね。グランさんの修行がなかったらここまで来る事はなかった。それを無駄にせず全力で戦わないと!」
「そうね。じゃあ、早速向かいましょう!」

 シェリアの合図で彼女達はそのままアルドラ火山に向かおうとしたその時だった。


「まさかここで出会えるとは……」
「その声……バリウス!」


 シェリアはすぐに声の正体に気付いて後ろを向くと、なんとバリウス、オットー、ボルスが姿を現した。
 しかも彼等は異様な雰囲気を漂わせていて、ファンクは危機感を感じる。

「その様子だと……お前も魔族との戦いに向かおうとしているのか」
「その通りだ。魔族の真の居場所に関しては既に調べ済みだ。奴等との因縁を終わらせる為にも、行かなければならない」
「あれから俺達は精一杯強くなったからな……もう怖い物は何も無い」
「天下無敵の俺達なら何だってやれるからな!」

 ファンクの質問にバリウス達がそう答えるが、シェリアはある事に気付いて彼等の方を向く。

「それで……強くなる武器は手に入れたの?」

 シェリアの質問にバリウス達は突如黙り込んでしまう。気まずい雰囲気が漂ってしまうのも無理ない。

「そ、それは……今から……」
「やっぱり嘘ね。その様子だと強くなってないじゃない」

 シェリアはすぐにバリウス達の嘘を見破り、彼女はファンクに近付く。

「それに比べてこっちは強くなっているわ。更に……ファンクに至っては勇者の剣を手に入れたからね」
「何!?あの勇者の剣を手に入れただと!?」

 シェリアの説明にバリウスが驚いたその時、ファンクは勇者の剣を鞘から引き抜き、彼等に対して剣先を向ける。しかも彼の目は鋭く、獲物を狙うような目となっているのだ。

「そうだ。俺はグランさんから真の勇者と認められた。勇者は心優しき正義の味方でなければ、その資格を名乗る事はできない。バリウス……今のお前は勇者なんかじゃない!只の偽善者だ!」

 ファンクの鋭い宣言にアミ達が共感する中、指摘を受けたバリウスは歯を食いしばりながら睨みつけていた。
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