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第八章 激闘!トーナメントバトル

第二百六十話 姫君の涙

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 一回戦の第一試合から、後楽園ホール内では大歓声に包まれていた。激しい戦いを繰り広げたのは勿論だが、ココアの活躍に皆が興奮しているのだ。
 三上達はリングの上に移動し、ココア達の周りに集まりながら勝利を喜ぶ。敗北したアメリアはレジーに背負われながらリングを後にし、シオン達も後に続きながら入場口へと向かい出した。

「やったな、ココア!まさかスリーカウントを取るとは!」
「私だってやる時はやるんだからね!何はともあれ準決勝進出!さっ、ミミ達に報告しに向かわないと!」

 ココアは素早くリングを降りた後、急いでミミ達に報告しに向かう。それを見たアーニャとサーシャもエヴァに報告しようと考え、すぐにリングを降りて後を追いかけ始めたのだ。

「あの三人、まだまだ元気ね……」
「うん。其の辺に関しては凄いとしか言えないけどね……」

 鶴姫とアケミはこの光景に唖然とするのも無理なく、ライカ、ベルは苦笑いをしていた。プロレスをしたにも関わらず、共に過ごした仲間の事になると倒れている理由にはいかない。其の辺に関しては元気なのは良い事だが、それを戦いにも活かして欲しいのが本音であろう。

「まあ、準決勝に進出したのは良い事だけどな。俺達も戻るとするか」
「そうね。次の試合を待たせる理由にもいかないし」

 三上の合図で彼等もリングから降り始め、そのまま入場口へと向かい出す。こうして一回戦の第一試合が終わりを告げられ、次はプロレスの試合が行われようとしていたのだ。

 ※

「まさかココアが逆転勝利を収めるなんてね。やるじゃない!」

 控室ではミミとココアが試合を振り返りながら、楽しく談笑をしていた。準決勝で戦える事がとても嬉しく、良い試合になると予感しているのだろう。

「一時はピンチになるかと思ったけど、空中技で何とか倒す事ができたわ。あの技がなければ、負けたかもね」

 ココアは苦笑いしながら、スカイシューターで倒した時の感想を話していた。アメリアを倒す事ができたのは、頭の回転力でこの様な閃きを生み出す事ができた。もし、それすら考えていなかったら、タップアウトで敗北を喫していたのだろう。

「でも、勝ったから良いじゃない。準決勝では負けないからね!」
「こっちこそ!」

 ミミとココアはお互い握手しながら、準決勝での戦いは良い勝負にしようと意気込み。友でありながらライバルであるからこそ、お互い負けられない気持ちが芽生えているのだ。

「サーシャ、アーニャ。無事に勝って良かったわ。怪我はない?」
「へっちゃらよ。このぐらいは慣れているからね」
「後は準決勝に備えて休むのみだから!」

 エヴァもサーシャとアーニャが勝った事に喜んでいて、三人でお互い抱き合いながらスキンシップを楽しんでいた。エヴァは同郷の仲間が勝利した事はとても嬉しさを感じていて、彼女達を抱き締められずにはいられなかったのだ。

「そうね。私とは準決勝で戦う事になるけど、その時は全力で相手になるから!」
「勿論!私達だって負けられないからね!」
「諦めの悪さ、見せてあげるから!」

 エヴァ、アーニャ、サーシャも準決勝では良い試合にする事を誓い合い、その様子を零夜と三上が微笑みながら見ていた。ミミ達とエヴァ達はお互い良い戦いにしようと決意していて、その様子に自分達も負けられないと心の中で決意しているのだろう。

「準決勝で戦う事になるが、今の俺達は一味違う。やるからには良い勝負にしようぜ」
「ああ。俺達だって因縁の相手と戦う為にも、絶対に負けられないからな!」

 三上と零夜もお互い良い勝負をしようと、拳をぶつけ合いながら誓い合う。以前は同僚関係だったが、選ばれし戦士となるとライバルの関係になっていた。準決勝では二人のプライドがぶつかる激しい戦いとなりそうで、盛り上がる展開になるのは間違いないだろう。
 すると扉が突然開かれ、全員がその方を向く。そこにはレジーが立っていて零夜に視線を移していた。

「零夜様。姫様があなたをお呼びです。すぐに来てくれませんか?」
「アメリア姫が?すぐに向かいます」

 零夜はレジーと共にアメリアのいる控室に向かい出し、それを見たミミ達はコクリと頷いたと同時に追跡し始めた。絶対に何が起こると嫌な予感を感じながら……

 ※

「失礼します。アメリア姫……大丈夫ですか?」

 零夜はアメリアのいる控室の中に入ると、彼女は椅子に座りながらヒックヒックと泣いていた。自らが敗北してしまった事が、とても悔しいのだろう。

「零夜様……私、国民の期待を背負っていたのに、無様な形で負けてしまった……うう……」

 アメリアはボロボロと涙を流しながら、ブルブルと身体を震わせている。自身が負けてしまった事でチームは敗退を喫してしまい、国民の期待を裏切ってしまった。自身を期待していた彼等に対し、どう責任を取ってお詫びすれば良いのか分からなくなるのも無理はないだろう。
 その様子を見た零夜はアメリアに近付き、彼女の頭を優しく撫でる。彼なりの優しさが伝わったと同時に、流れる涙も止まり始めた。

「大丈夫ですよ。国民の皆はあなたを攻めてなんかいませんよ」
「えっ?それって……」

 アメリアが疑問に感じながら言い切ろうとしたその時、彼女のバングルに通信が入る。すぐにアメリアは通信に応じてウインドウを起動すると、画面にはボリスが映っていた。

『アメリア。試合は見たが残念だったな……』
「父上……私は不甲斐ない結果となってしまい、申し訳ありません……」

 アメリアは俯きながらボリスに謝罪をするが、画面上に映る彼は首を横に振る。その様子だと彼女を責めたりはせず、他に理由があるのだろう。

『謝らなくて良い。お前の活躍を国民が見ていて、勇気を貰ったとの声が聞こえている。感動の涙を流した者もいれば、自身も強くなる為に前に進もうとしているそうだ』
「えっ!?じゃあ、私の戦いは……無駄ではなかったのですか!?」

 ボリスからの報告にアメリアだけでなく、零夜も驚きを隠せずにいた。まさか彼女の活躍が国民達に勇気を与えただけでなく、その後の行動にまで影響していたのは想定外としか言えないのだ。

『そうだ。わしはお前を娘として、次期女王として誇りに思う。今後の更なる活躍を信じているぞ!』
「はい……!」

 アメリアは嬉し涙を流しながら、頷きながら返事をする。零夜は優しく微笑みながら、彼女が落ち着くまで背中をポンポンと叩き始めた。

 ※

「取り敢えず姫様の件についてはバッチリだが……」

 控室の入口前では、三上がアメリアの様子を盗み聞きしながら確認していた。彼女は零夜に任せておけば、立ち直るのはそんなに時間が掛からないだろう。
 しかし、後ろの方をよく見ると……ミミ達がレジーによって気絶して倒れているのが見えた。彼はアメリアのお世話係を担当しているので、彼女のピンチには黙っていられないだろう。

「暫くはこのままにしておきましょう。今日一日は零夜様の側に寄り添う必要があるので」
「そうですか……にしても零夜の奴、姫様まで手玉に取るとはな……今後がどうなるか心配だぜ……」

 三上はレジーの行動に苦笑いしながらも納得するが、零夜の恋愛関係には半分呆れるしか無かった。彼の真の花嫁は、何時になったら決まるのだろうか……
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