上 下
243 / 266
第七章 おとぎの世界の大冒険

第二百四十一話 呪われた古城

しおりを挟む
 ミミ、キララ、アミリス、マーリン、赤ずきん、ロバ、犬、ニワトリの5人と三匹は、鎧騎士のいる古城の前に立っていた。そこから異様な雰囲気が漏れ出ていて、お化けも出る可能性も高いだろう。

「この古城に鎧騎士がいるみたいね。ミミ、あなたは大丈夫……ん?」

 キララがミミに視線を合わせた途端、彼女は頭を押さえながらガタガタと震えていた。どうやら何かに怖がっているに違いないが、気になったキララはミミの前に立って心配そうな表情をする。

「どうしたの?何か怖い物でもあるの?」
「私……実は……お化けが大の苦手なの……」
「「「ええっ!?」」」

 ミミからの衝撃の告白に、キララ達は一斉に驚きを隠せずにいた。面倒見がとても良く、頼りになるダンサーなミミ。しかし、お化けが怖くて苦手なのは想定外と言えるだろう。

「一体何が原因でこうなったの?詳しく聞かせて」
「うん……小学六年の時に零夜と一緒にお化け屋敷に行ったけど、とても怖くて泣いてしまって……」
「だからお化けが苦手となったのね」

 ミミからの話を聞いたアミリス達は、納得の表情をしながら頷いた。
 小さい頃に怖い経験や痛い思いをしてしまうと、それがトラウマとなって大人になっても忘れなくなる。こうなると克服するのには時間が掛かるのも無理ないだろう。

「まあ、お化けがいるかも知れないが、もしもの時にはアタシが付いているから安心しな。」
「ありがとう、赤ずきん」

 赤ずきんはミミの頭を撫でながら優しく慰め、彼女は笑顔でお礼を言う。姉御肌である赤ずきんは頼りがいがある存在で、誰もが憧れるのは当然と言えるのだ。

「それじゃ、早速中に入ろう!先頭は僕が行くよ!」

 イヌが自ら先頭に立ち、古城の扉を開いて入っていく。それにロバ達も後に続き、全員が城の中に入ったのだ。



 古城の中に入ったミミ達は、辺りを見回しながら警戒態勢に入る。そこは薄暗くて不気味さが漂っており、何が出るか分からない恐怖を感じるだろう。
 
「何か出そうな気がするわね……」
「でも、ここまで来た以上は鎧騎士を倒さなきゃいけないわ」
 
 キララとアミリスは警戒しながらも前に進み、ミミ達も二人の後を追いかける。すると、彼女達の目の前にモンスター達が姿を現した。その数はなんと百体ぐらいだ。

「敵はゴーストだけど……ここのゴーストってリアル過ぎるみたいね……」

 アミリスの目の前にいるゴーストは、顔が骸骨で長い爪が生えているのが特徴だ。はっきり言って怖いのは当然である。
 普通の異世界のゴーストは可愛い感じのする物が多いが、おとぎの世界ではリアルに再現されている。世界によって異なるのは当然と言えるだろう。

「となると、ミミは……」

 マーリンがチラリとミミに視線を移した途端、彼女はしゃがみ込みながらガタガタと震えてしまった。赤ずきんとキララが苦笑いしながらあやしているが、何れにしても戦う事は不可能だろう。

「無理もないわね。ここは私達三人で行くわ!赤ずきん達はミミをお願い!」
「任せろ!」

 キララ、アミリス、マーリンの三人はゴースト達に立ち向かい、赤ずきん達は今でもガタガタ震えるミミの面倒を見る事になった。戦えるのは三人となってしまったが、この状態が続けば鎧騎士との戦いは苦戦するだろう。

「これでも喰らいなさい!スカーレットクロー!」

 キララはガントレットに赤いオーラを纏わせ、強烈なクロー攻撃をゴーストに仕掛けた。ゴーストは引っ掻きのダメージを受けてしまい、そのまま消滅して金貨と素材になってしまった。

「よし!ゴーストにもクロー攻撃が効くわね!」

 キララがガッツポーズを取った直後、ゴースト達はまだ無限に出てくる。いくら何でもキリがないと言えるのは当然だ。

「まだ出てくるわね。そうなると……元を倒さないと駄目みたい」
「それなら私に任せて!鷹の目で敵を探し出すわ!」

 アミリスは鷹の目のスキルを発動させ、ゴーストを出す元凶がいないか探し始める。しかし、そう都合の良い物ではない為か、中々見つからない。

「いない……どこにいるの?」
 
 アミリスが困った表情を見せた途端、彼女の前にゴーストが現れたのだ。どうやら元凶は目の前にいるらしい。

「見つけたわ!覚悟しなさい!」

 アミリスは弓矢を構えながらゴーストに狙いを定め、そのまま弓矢を放つ。しかしゴーストは回避したと同時に、真の姿を見せたのだ。
 その姿は頭と身体が壺の形をしていて、両腕まで生えている。更に右手には縦笛を持っているのだ。

「まさか俺が元凶だと良く分かったな」
「あなたは?」
「俺はマジシャンボット。この古城の中ボスだ。鎧騎士を倒そうとしているのだが、そうはいかん!」

 マジシャンボットが手に持っている笛を吹いた途端、二人の敵が現れた。一人は骸骨の狩人で、もう一人はアンデッドの鎧武者だ。二人の姿を見たアミリスはその正体をサーチアイで探り出し、そのデータに驚きを隠せずにいた。

「ちょっと待って!この二人……狼と魔女の元にいる筈の中ボスじゃない!」
「「「ええっ!?」」」

 アミリスからの衝撃の事実に、マーリン達は驚きを隠せないのも無理はない。まさか狼と魔女の中ボスがここに居るのは想定外であり、あっという間にピンチとなってしまったのだ。

「そうだ。魔女と狼と少し話をしてね。それで奴等の中ボスを借りて強化したのさ。ドクロハンターとアンデッドサムライとして!」

 ドクロハンターは弓矢を構え、アンデッドサムライは刀を構えながら戦闘態勢に入る。彼等の目は赤く光り輝き、獲物を狙う目をしているのだ。

「くっ……!やるしかないわね……!二人共、援護をお願い!」
「任せて!」
「一対一の状況を作り出さないとね!」

 アミリスは弓矢を構えながら、マーリンとキララに指示を飛ばす。二人はそのまま格闘の態勢に入り、ドクロハンターとアンデッドサムライを睨みつけながら戦おうとしていく。
 その一方、赤ずきんがミミに優しくあやし続けながら慰めていた。その甲斐があってかミミは少しずつだが落ち着きを取り戻している。
 
「大丈夫か?」
「……うん……ありがとう」
「良かったぜ。アタシが側にいるから安心しろ」

 赤ずきんは優しく微笑みながらミミの頭を撫で、その様子にロバ達は安心した。やはり頼りになる存在で、姉御肌なのも納得である。

「それにしても……鎧騎士ってどんな奴なんだ?魔女や狼と手を組むなんて……」
「そうね……私も気になるわ」
 
 イヌとニワトリは鎧騎士の正体が気になり、ロバも真剣な表情で考え始める。どんな奴なのか気になるのも無理なく、考えても悩むばかりだ。
 するとミミが立ち上がりながら決意の表情を固め、すぐにリングブレードを構える。その様子を見た赤ずきんは彼女に近付き、左の肩に手を置いた。

「その様子だと大丈夫なのか?」
「ええ。落ち着きを取り戻した以上、私も戦う覚悟はできている。幽霊なんかに怖がっている暇はないし、仲間の危機には黙っていられないからね」

 赤ずきんからの質問にミミは笑顔で答え、それに彼女は納得の表情をする。ミミが戦う覚悟を見せた以上、言葉は不要。自身も戦う覚悟を示しながら、両手に銃を構え始めた。

「それなら心配不要だな!よし!アタシ等も立ち向かうぞ!」
「了解!」

 赤ずきんの合図と同時に、彼女とミミもアミリス達の手助けに向かい始める。その様子を見たロバ達は微笑んだ後、安全な場所に隠れ始めたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...