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第七章 おとぎの世界の大冒険

第二百三十四話 魔女の陰謀

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 コーネリア達と魔女の戦いが始まりを告げたが、お互い飛び出そうとせずに出方を待っていた。下手に動いたら攻撃される恐れもあるので、注意しておく事が大前提であるのだ。

(彼女が動くとしたら、指で魔術を放つのみ。何れにしても要注意である事は間違いないみたいね)

 コーネリアが心の中で魔女の動きを読み取った直後、彼女は指を真上に掲げて集中力を高め始める。この態勢こそ魔術の合図であり、コーネリアはそれを見逃さずにいた。

「今よ!シャインアロー!」

 コーネリアは光の矢を召喚し、魔女に向けて次々と放ちまくる。しかし魔女は空を飛びながら回避していくが、高齢が原因の鈍さで当たってしまう事もあった。
 何百年も生きていると、歳のせいで動きも鈍くなる。せめて若返りをすれば動きもよくなるのだが。

「いきなり攻撃を仕掛けるとは……こうなれば私も黙っちゃいられないね!パンプキン落下弾!」

 魔女も負けじと魔術を唱え始め、空からカボチャを降らせてきた。そのカボチャは人間サイズで大きくなっているので、潰されたらひとたまりもないだろう。

「こんなカボチャ!私に任せてください!」
「ジェニー、無理はしないでね!」
「了解です!はっ!」

 するとジェニーが駆け出し始め、コーネリアからのアドバイスに笑顔で頷く。同時に空から降るカボチャに蹴りを入れると、カボチャに罅が入って砕く事に成功。そのままカボチャはバラバラになってしまい、ソニアと杏が台車の箱の中に次々と入れて回収したのだ。

「カボチャを砕いた!?いくら何でもあり得んぞ!」

 魔女は予想外の展開に驚きを隠せず、口をあんぐり開けながら呆然としてしまった。まさかジェニーがカボチャを破壊するとは、思いもよらなかっただろう。
 実はジェニーはヒーローアイランドで、打撃の破壊力を高める修行をしていた。それによって岩などの破壊だけではなく、地割れを起こしたりする事も可能になった。その拳はダイヤモンドよりも更に硬くなっているので、最強の拳と言えるだろう。

「私はこの数ヶ月で修行し、最強の拳を手に入れた。だからこそ、あなたをここで終わらせる!」

 ジェニーは魔女を指差しながら、彼女を倒すと宣言。そのまま跳躍したと同時に、素早い動きで魔女に襲い掛かってきたのだ。

「小癪な!バリア展開で弾き返してくれるわ!」

 しかし魔女も黙ってはいられない。彼女はすぐにバリアを展開し、打撃攻撃を防ごうとしていた。しかし、そのバリアもジェニーの拳が直撃してしまい、あっという間に罅が入って破壊されてしまったのだ。

「そんな馬鹿な……!バリアが破壊されるとは……なんて奴だい!」
「隙あり!」
「ゲボラ!」

 ジェニーの強烈な拳が魔女の顔面に激突し、彼女はそのまま地面に墜落してしまった。これで倒れたかと思ったら、魔女はこの程度で倒れない。自力で起き上がったと同時に、ギロリとコーネリア達を睨みつけていたのだ。

「よくも私をコケにしてくれたね!こうなったら……」
「こうなったら?」

 魔女は奥の手を使うと思い、コーネリア達は冷や汗を流しながらも戦闘態勢に入る。彼女との戦いはここからが本番になると思っていて、集中力を高めながら警戒しているのだ。

「家に帰って出直すが、その前に奴の様子を見てからだ!」

 そのまま魔女は箒を呼んだと同時に、その場から飛び去ってしまう。それにコーネリア達は盛大にずっこけてしまい、ドリトン達までずっこけてしまったのだ。魔女が戦うと思ったら、まさかの敵前逃亡。それにズッコケるのも無理ないのだ。

「奥の手を繰り出すかと思ったら、逃げるのね……けど、魔女の家に行くのなら好都合ね」
「そうだが、魔女が奴の様子を見ると言っていたな。それってどんな奴なんだ?」

 コーネリアは魔女の家に行くとなると、敵の本拠地に攻め込むチャンスだと考えている。しかし、ソニアは魔女が言っていた奴が気になり、真剣な表情をしていた。
 その様子を見ていたドリトン達は大丈夫だと判断した直後、コーネリア達に近づいてきた。

「それは狼の事だ」
「あっ、あなた達は落ち込んでいたドワーフの……」

 コーネリア達はドリトン達の存在に気付き、彼等に視線を合わせる。先程まで落ち込んでいた筈なのに、その様子だともう心配はないだろうと判断する。

「わしの名はドリトン。こいつ等のリーダーじゃ。で、こいつ等は木こりのリッパー、食べ物に詳しいビストロ、力持ちのヨーゼフ、博識のベン、穴掘りが得意のバリトン、そしてこの中で若く、ドジ男のコバルトじゃよ」
「ドジ男は余計だよ!俺は弓矢や仕掛けを得意としているんだ!」

 ドリトンは自分達を紹介するが、コバルトはドジ男である事にツッコミを入れながら自らを紹介する。コーネリア達が微笑む中、ドリトンは狼について説明を始める。

「魔女は狼を部下にしていて、若い美女を捕まえろと彼に命令している。本来なら永遠の命と若さを手に入れようとしていたが、カボチャ男爵の指示によって彼に献上をしていたのじゃ」

 ドリトンの話を聞いていたコーネリアは、先程の口論を思い出す。カボチャ男爵と魔女の言い争いが起きたのは、囚われている美女達の事に違いないだろう。
 
「じゃあ、さっきのあの口論は……」
「恐らく我慢できなかった様じゃな。カボチャ男爵がリーダーである以上は逆らえなかったが、我慢ができなかったかのも無理はない」

 ドリトンの説明を聞いたコーネリア達は納得の表情をした後、これまでの事と今後の事について考えてみる。
 魔女は本来なら若さと美しさが必要であり、美女達を捕まえて永遠の命を手に入れようとしていた。しかし、カボチャ男爵がそれを許さず、狼によって捕まえた美女達は彼の下へと運ばれてしまう事に。それによって魔女のストレスは溜まっていくのも無理はなく、先程の口論が起きたのだ。
 更に魔女は家に帰る前に狼の方へ向かったとなると、狙いはエヴァ達の様だ。狼の下へ魔女が加勢に向かっていけば、エヴァ達のピンチは免れない可能性が高くなってしまう。

「となると……エヴァ達が危ないわ!すぐに魔女の野望を阻止する為にも、早く加勢に向かわないと!」

 コーネリアは危機感を感じながら推測し、それにソニア達も真剣な表情で同意する。
 恐らく魔女はエヴァ達の事も調べている可能性があるので、彼女達を攫って自分の家に帰っていくだろう。そのまま美しさを手に入れる為、とんでもない事をするに違いない。

「何れにしても魔女を止めなければ、新たな犠牲者が出てしまうからな。魔女の家については俺達に任せてくれ!」
「分かりましたが、どうやって潜入するのですか?」

 コバルトは仲間達と共に、魔女の家に潜入すると宣言。ジェニー達は魔女の家は彼等に任せるが、どう潜入するのか質問をする。するとコバルトは懐から、針金一本を取り出す。恐らくこれが潜入のカギだろう。

「心配無用!俺は針金一本でどんな扉も開けれるのさ!潜入については心配するな!」
「なら、大丈夫ですね。では、潜入お願いします!」

 コバルトの真剣な説明にジェニーは納得し、コーネリア達と共に空を飛び始める。そのままエヴァ達のピンチを阻止する為、全速力で駆け出したのだ。
 そのスピードはグンカンドリよりも速いので、この光景にドリトン達がポカンとしたのは言うまでもない。

「よし!わし等も行くぞ!」

 ドリトン達も気を取り直したと同時に、魔女の家に向かい出した。彼女達の企みを終わらせる為にも。
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