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第七章 おとぎの世界の大冒険

第二百三十話 垢の化け物

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 零夜、ルリカ、マツコ、ケイコの四人は、空を飛びながら鬼ヶ島へ向かっていた。鬼ヶ島の敵は鬼だけでなく、中ボスやモンスターもいるので要注意と言えるだろう。

「モンスターもいるから要注意だけど、私達四人ならイケるよね?」
「ええ。桃太郎から修行を受けてもらったし、後はその実力を発揮して倒すのみ!」

 マツコとケイコは自信満々に鬼を倒せる事を実感するが、零夜とルリカは真剣な表情をしていた。彼等は多くの戦いを乗り越えていたからこそ、油断せずに立ち向かい続けていた。今回の鬼達の件についても、油断するとやられる恐れがあるだろう。

「マツコ、ケイコ。油断は禁物だ。奴等は何を仕掛けてくるか分からないからな」
「そうそう。二人共、そういう慢心が身を滅ぼすからね。しっかりしないと!」
「「はーい……」」

 零夜とルリカに注意されたマツコとケイコは、不貞腐れながらも了承していた。すると目の前に海が見え始め、その遠くには鬼ヶ島が見えていた。
 鬼ヶ島は二本の角らしき物が生えているのが特徴で、異様な闇のオーラを放っている。そこにいる鬼達は凶暴な奴等が多く、強盗や殺人も続出して大迷惑。其の為、桃太郎や金太郎などが討伐担当となっているが、なかなか決着が着けられない状態となっている。
 この様子だと、何時になったら終わるのかと不安になるのも無理はない。国民達も心配になっているのだ。

「あれが鬼ヶ島……要注意ですね」
「ああ。何が起こるか分からないから、ともかく急ぐぞ!」

 零夜の合図にルリカ達が頷いたその時、彼等の前に老夫婦が姿を現す。しかも彼等はとても臭く、近付いただけで倒れそうになるだろう。

「貴方方は?」
「おら達はものぐさ夫婦だ。お前さん達、鬼ヶ島へ行くんだべか?」
「はい。四天王である鬼達がいるので、早く倒さないといけないのです。奴等からおとぎの世界を取り戻す為にも」

 お爺さんからの質問に対し、零夜は真剣な表情で答える。カボチャ男爵の元に行くには四天王を倒さなければならない為、ここで立ち止まる理由にはいかないのだ。
 それを聞いた老夫婦は頷きながら納得し、彼等に対してアドバイスを始める。

「奴等のボスはおら達と同じく垢まみれだ。気を付けんと臭さでやられるだよ」
「垢まみれ……という事は……汚いのですか?」
「んだ。それにおら達の垢もまだ残っているだ。せっかくだから落としてくれだべや」

 老夫婦は零夜達にアドバイスをした直後、お婆さんは背中をボリボリ掻いて垢を取り出した。その大きさは掌一杯の大きさで、悪臭が立ち込めている。長年風呂に入らなかったからこそ、この様な垢が出てきたのだろう。
 この様子を見たルリカ達が嫌がってしまうのも無理はなく、冷や汗を流しながら老夫婦に視線を合わせるしかなかった。

「こ、この垢を落として欲しいのですか?」
「んだ」
「仕方がないかもね……そうしないと先に進めないし」
「力太郎の誕生パターン其の物かもね……」

 ルリカ達は観念したと同時に、老夫婦の身体の垢を水で流しながら石鹸でこすり始める。すると垢がポロポロ大量に落ちていき、老夫婦はますます綺麗になっていく。
 零夜は自ら率先していて、素早い動きでゴシゴシと老夫婦の垢を取っていく。彼はこの様な作業を得意としているだけでなく、興味本位で見ている事も。其の為、この様な作業はお手の物だ。

「凄い量だ!どれだけ洗ってなかったのか分かるな」

 零夜が垢の量に驚きを隠せない中、ルリカ達はお婆さんの垢を洗い流し終えていた。彼女の身体はツヤツヤで綺麗になり、前と比べて綺麗に見えているのだ。

「ありがとね。お陰で助かったよ」

 お婆さんの笑顔にルリカ達も笑顔で返したその時、零夜の方もお爺さんの垢を流し終えていた。彼も綺麗になる事ができたが、残ったのは大量の垢が山の様に置かれていた。処理しようとしても、どう処理するのか不明である。

「さて、この垢を……新たな姿に変えてやろう」

 お爺さんが指を鳴らした途端、垢は次第に形を変えて新たな姿に変わり始める。すると垢はゴリラの様な姿となり、完全に生きたモンスターになったのだ。

「垢がゴリラに!?アンタ達は何者!?」

 ケイコが老夫婦に向かって叫んだその時、彼等は今着ている服を脱ぎ捨て、新たな姿に変える。服は変わっているが、雰囲気は日本の昔話のままとなっている。しかも性格はワル其の物だ。

「ワシ等はインチキ爺さんとインチキ婆さん!イジワルして敵を倒す者!」
「垢を貯めていたのも、お前達を倒す為だよ!アカコング、やれ!」
「グオオオオオオ!」

 インチキ婆さんの合図でアカコングと呼ばれたモンスターは、胸を叩きながらドラミングをする。そのまま強烈なパンチが零夜達に襲い掛かるが、彼等は素早い動きで回避してしまった。

「よくも私達を騙してくれたわね!許さないんだから!」
「けど、この垢は落とさないとね!私の魔術で落としてやるんだから!」

 マツコは怒りでインチキ老夫婦に怒っていて、ケイコはアカコングに対して魔術で垢を落とす事を決断。するとアカコングがケイコに襲い掛かるが、彼女は魔術を既に唱えていた。

「アクアストーム!」
「グオオオオオオ!」

 ケイコは地面から強烈な水の竜巻を発生させ、アカコングに直撃する。するとアカコングの身体が水に溶けて崩れていき、垢はそのまま綺麗に流されて分解されてしまったのだ。

「爺さんや!アカコングが崩れていくぞ!」
「まずい!こうなったら逃げるしかない!」

 インチキ老夫婦は逃げようとするが、マツコが如意棒を構えながら立ちはだかっていた。しかもその表情は怒りに満ち溢れていて、自分達を騙した奴等を見逃す理由にはいかないのだ。

「よくも騙してくれたわね!乱れ連撃!」
「「ぎゃああああああ!!」」

 マツコの怒りの如意棒連撃で、インチキ老夫婦は次々とにダメージを受けてしまう。胸、腹、顔などに如意棒の連撃打を受けた彼等は、あまりのダメージに耐えきれなくなり、そのまま前のめりにバタンと倒れてしまった。
 するとインチキ老夫婦は塵となって消滅してしまい、アカコングも崩れて光の粒となってしまった。

「まさかあの老夫婦が中ボスだったなんて……」
「俺達を待っていたのは、鬼達の命令によって倒そうとしていたのだろう。それすら気付けないなんて情けないぜ……」

 ルリカはインチキ老夫婦が中ボスである事に驚きを隠せず、零夜はため息をつきながら空を見上げていた。まさか自身が敵に騙されていたとは思わず、屈辱を感じたのは言うまでもないだろう。
 その様子を見ていたケイコとマツコは零夜に近付き、よしよしと彼を慰め始める。

「大丈夫。中ボスを倒して先に進める様になったんだから」
「そうそう。むしろここからが本番!頑張っていきましょう!」

 ケイコとマツコの励ましを受けた零夜は、すぐに前を向いて気合を入れ始める。仲間からの励ましを受けたとなると、ここで立ち止まらずにはいられないのだ。

「ありがとな、二人共。全員で鬼ヶ島へ向かい、鬼達を倒しまくるぞ!」
「「「了解!」」」

 零夜の合図にルリカ達は頷き、そのまま鬼ヶ島への進行を開始した。ここで立ち止まらずに前に進む。そう心に誓いながら。
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