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第七章 おとぎの世界の大冒険

第二百二十九話 奪還へのスタート

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 王様から与えられた試練をこなしてから翌朝、零夜は朝日を浴びながらストレッチをしていた。 
 零夜は毎朝ストレッチを必ず行うのが日課なので、この後は腕立て、腹筋、スクワット、ランニングも控えている。プロレスラーと選ばれし戦士としては欠かせないアップだからこそ、継続する事に意義があるのだ。

「よし!次はスクワットだ!」

 零夜はすぐにスクワットをしようとしたその時、倫子が彼の下に駆け付けてきた。彼とは別の班で行動する事になるので、何時ものスキンシップをお願いしに来たのだろう。

「倫子さん、おはよう御座います!」
「おはよう、零夜君。いつものお願いしてくれるかな?別行動になるからしておきたいの」
「別に構いませんが……」

 倫子からの頼みに零夜は問題なく承諾し、彼女をムギュッと抱きしめていく。憧れの人からお願いされる事は誰もがラッキーだと思っているが、零夜としては仲間として放っておけない部分もあるのだ。
 お互いの温もりが伝わり合う中、倫子は零夜の手を自身のデニムつなぎ服の尻ポケットの中に入れていく。こうする事で密着度を少しでも増す事が出来るが、興奮度が高まってしまうのも当然であるのだ。

「ん……温かみが伝わったかも。お尻が痒いから掻いてくれないかな?」
「あ、はい……」

 倫子の指示を受けた零夜は、彼女のお尻をゆっくりと掻き始める。それによってお尻の痒みが軽減されていき、快感による気持ちよさで倫子が笑顔になっていた。
 このまま続くと思ったその直後、零夜の頭にエヴァが突然ガブリと噛み付いてきた。どうやら今の行為を見ていた様で、背後から零夜に襲い掛かってきたのだ。

「ぎゃああああああ!!」

 零夜は当然悲鳴を上げてしまい、倫子は慌てながら彼から離れてしまう。エヴァの乱入でお願いは中断となってしまい、当然不満な表情になるのも無理はない。その証拠に頬がぷくーっとなってしまい、風船の様に膨らんでいるのだ。

「せっかく良いところなのに……」
「そんな事言ってる場合じゃないですよ!エヴァ、お願いされているのに邪魔するな!」
「だって良い展開だったから!倫子ばかりずるいんだもん!」

 零夜からの注意に対し、エヴァは噛みつきながら反論する。自身はその様な事をされていないので、嫉妬が出るのも当然の展開。自身もやりたいと駄々をこねるのも時間の問題で、噛みつく行為も永久に終わらないだろう。

「分かった!エヴァにもやらせてあげるから!噛み付くのは止めてくれ!」
「分かった。じゃあ、今すぐやろう!」

 零夜からの懇願を聞いたエヴァは嬉しそうな表情をしながら、噛み付きを止めて彼から離れる。同時に零夜をムギュッと抱き締め、自身のジーンズの尻ポケットに彼の両手を入れた。
 その温もりによってエヴァは笑顔になり、その証拠に尻尾をブンブンと降っているのだ。

「むう……」
 
 それを見た倫子はムスッとしてしまい、零夜の背後に抱き着いてしまう。まさにサンドイッチ状態となってしまい、零夜の顔は益々赤くなってしまう。最早倒れてしまうのも時間の問題であろう。

「ん?もしかして倫子……零夜の事が好きなの?」

 その様子を見たエヴァが疑問に感じた直後、彼女からの指摘に倫子は背筋を伸ばしてドキッとしてしまう。顔は夕焼の様に赤く染まっていて、零夜から素早く離れてしまった。
 指摘された事で余程恥ずかしかったに違いないが、倫子は首を横に振りながら否定していた。

「いや、別にそんな関係じゃ……」
「零夜に抱き着いていた時、満面の笑顔になっていたじゃない。お尻を掻かせてもらった時、凄く喜んでいたし」
「うう……バレていたかもね……」

 エヴァからの指摘を受けた倫子はガックリと項垂れ、白状するしかないと断念する。確かにあの表情を人に見られていたら、バレるのは当然と言えるだろう。

「ウチがダイナマイツから脱退した時、情緒不安定になっていたからね……それで零夜君が落ち着かせてくれたから、すっかり依存症になっちゃって……」
「だから戦う前に零夜に抱き着いていたのね」

 倫子の説明を聞いたエヴァは納得の表情をしていて、戦いの前に零夜に抱き着いている理由に納得する。
 エルフの森に行く前、倫子は黒田、室山と共に、ドリームレッスルバトラーズの六人タッグタイトルに挑戦していた。しかし結果は敗北。零夜は怒りで黒田と室山を殴り飛ばし、倫子を連れて去ってしまった。これによって倫子はダイナマイツを脱退してしまい、今に至るという事だ。
 もし倫子がダイナマイツを去らなかったら、この様な行為は無かったと言えるだろう。

「まあ、気持ちは分かるわ。私も零夜がいてくれたからこそ、今の私がいるからね。今後ライバルとなりそうだし、絶対に負けないから」
「ウチも。後で皆に話しておかないとね」
(また恋人候補が増えてしまったか……この苦労は終わらないな……)

 エヴァと倫子は笑顔で微笑み合う中、零夜は心の中で複雑な思いを抱いていたのは言うまでもない。倫子が零夜を好きだという事が判明したせいで、恋人候補がまた増えてしまった。これで六人が零夜の事を好きになり、彼の本当の花嫁はどうなるのかに注目だ。



 それから一時間後、朝食を食べ終えた零夜達は王座の元に集まり、彼から話を聞く事に。おとぎの世界の奪還作戦がメインとなっているのだ。

「良いか!今から我々はわしの城を奪還し、カボチャ男爵達を倒す事だ!奴等の我儘はもう我慢ならん!奴等を倒す事こそ、我々の使命!何としてでもカボチャ男爵を倒すぞ!」
「「「おう!」」」

 王様の演説に桃太郎達は拳を上げながら同意し、カボチャ男爵を倒す事を決意。国民達も一致団結しているので、この世界の為に戦う覚悟は既にできているのだ。

「国民達が一致団結している……これが裸の王様のカリスマ性か」
「うん。確かに見事としか言えないわね……」

 零夜達は裸の王様の演説を聴き、そのカリスマ性に感心の表情をしていた。彼は国民の為に頭を使い、どうすれば豊かになるかをいつも考えている。更にプロレス団体を立ち上げるなど大胆な事をしている為、彼のカリスマ性が高いのは当然であるのだ。

「そしてブレイブペガサスも協力してくれる。彼等は四天王を倒しに向かうが、カボチャ男爵についてはジャンヌとマリーが助太刀をする。国民よ!城への道が開かれたと同時に、わしに続いてこの世界を取り戻すぞ!」
「「「うおおおおお!!」」」

 王様の宣言に国民達は叫びまくり、士気高揚は最高潮まで達していた。そのまま彼等は武器を取りに急いで駆け出し、桃太郎達も戦いの準備に向かい出した。

「よし!俺達の役目は四天王の討伐だ。カボチャ男爵については王様達の役目だから、できる限りサポートに専念しないとな」
「そうね。ここから先はそれぞれのチームに分かれて行動だけど、何があっても私達なら問題ないわ!」
「そうと決まれば進むのみよ!時間が惜しいし、早速行動開始よ!」
「皆、気をつけてね!必ず生きて帰るのよ!」

 零夜、ルリカ、マツコ、ケイコの四人は、鬼達のいる鬼ヶ島へ。コーネリア、ジェニー、ソニア、杏の四人は、魔女のいるお菓子の家へ。エヴァ、ヒカリ、倫子、ヒヨリの四人は、狼のいる洞穴へ。そしてミミ、アミリス、マーリン、キララの四人は赤ずきん達と共に、鎧騎士のいる呪いの塔へ向かい出した。
 ジャンヌ、マリー、美津代、トラマツ、ノースマンの三人と二匹は、王様達と共に行動する事になっている。其の為、四天王を倒す零夜達を見送っているのだ。

「四天王については零夜達に任せて、カボチャ男爵の討伐はジャンヌとマリー、美津代の役目だ」
「自ら立ち向かう以上、責任は重大となる。三人共、頼んだぞ!」
「「「了解!」」」

 トラマツとノースマンの指示を聞いたジャンヌ達は頷きながら応え、自らの責任を果たす事を決意した。同時におとぎの世界を本格的に奪還する戦いが、ここから始まりを告げられたのだった。
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