上 下
214 / 270
第六章 山口観光騒動記

第二百十二話 ハンニャバルとの戦い

しおりを挟む
 ハンニャバルを目の前にしている零夜達は、真剣な表情をしながら戦闘態勢に入っていた。その姿はまさに悪魔その物で、凶悪さが十分に伝わってくる。
 更にヒカリ達やトキコ、ルリカ達も駆けつけ、一斉に戦闘態勢に入り始める。緊急事態である以上、立ち向かうしか方法はないのだ。

「観客達は大丈夫。強力バリアで防いでいるから、被害が来ない仕組みになっているの。あなた達の家族も大丈夫だからね」

 トキコは観客席に視線を移しながら、彼等の前に貼られているバリアを説明する。それはどんな攻撃も弾き返す特殊なカウンターバリアであり、戦いが終わるまで有効である仕組みになっている。当然観客達は安心して観戦できるのだ。
 
「助かります。しかし、バトルオブスレイヤーの後にこの様な事態の場合はどうすれば……」

 零夜からの質問にトキコは真剣な表情をしながら、ハンニャバルに視線を移す。バトルオブスレイヤーの後に怪物が出るのは前代未聞で、この場合はどう対処するかだ。

「この場合は特別任務として言い渡すから。あの怪物を徹底的に始末せよ!」
「「「了解!」」」

 トキコからの特別任務が発生し、彼女の合図と同時に零夜達が動き出す。そのままハンニャバルとの戦いが幕を開け、歓声も聞こえ始めた。

「零夜!この戦いこそお前達の真価が問われる!絶対に打ち倒せ!」
「おう!」

 修吾の掛け声に零夜は頷きながら応え、手裏剣を構えながらハンニャバルに狙いを定め始める。彼の手裏剣は苦無型、十字型などの様々な種類があり、場合によって投げる種類が違うのだ。

「手裏剣乱れ投げ!」

 零夜の投げた手裏剣はハンニャバルの背中に当たるが、彼は平然としながら動いていた。効果ないかと思われたが、手裏剣の色が紫色になっている事に違和感を感じ始めた。どうやらこれが今後の展開を左右するだろう。

「次はこれだ!紅蓮乱れ咲きぐれんみだれざき!」

 ソニアが炎の能力を纏ったカタールを構え、ハンニャバルに斬り裂きの攻撃を与える。しかしそちらも効果なく、彼は平然としていたのだ。

「全然効果ない!?」
「どういう事だ!?」

 予想外の展開にソニアと杏が驚く中、アミリスが真剣な表情でハンニャバルを観察する。彼女の千里眼というスキルで敵のデータが判明され、彼女の脳内に流れ込んできた。

「ハンニャバルの属性は闇だけど、普通なら攻撃が効いているわ。けど、このハンニャバルは一味違う。あらゆる攻撃を無効化してしまう特殊効果を持っているわ!」
「「「ええっ!?」」」

 アミリスからの説明にミミ達は驚いてしまい、観客席からもざわついてしまう。あらゆる攻撃を無効化するチート級は初めての遭遇であり、いくら何でも卑怯というべきだろう。

「となると、その特殊効果を消せば良いのか。それなら対策済みだぜ」
「「「!?」」」

 零夜は余裕の表情をしながら説明し、それにミミ達は驚きながらも一斉に彼の方を向いた。零夜は既に敵の能力を見極めていて、先程手裏剣を投げ飛ばしていたのだ。

「もしかして……あなたの今の行動がカギとなるの?」
「そうだ。手裏剣に特殊細工しておいたからな」

 倫子からの質問に対し、零夜は余裕の笑みを見せながら応える。するとハンニャバルが口から光線を吐き出そうとしていて、零夜達は急いで回避しようと駆け出す。

「グオオオオオオ!」
「チッ!」

 零夜達はサイドステップで回避し、光線を見事回避する。しかし、光線は地面に当たって爆発を起こし、焦げ目の跡を残していたのだ。反応が遅かったら黒焦げ確定だっただろう。

「危なかった……」

 エヴァが安堵のため息をついた途端、ハンニャバルは拳を振り上げながら彼女を殴りに掛かる。強烈な巨大拳がエヴァに直撃し、彼女は宙を舞いながら飛ばされてしまった。

「ガハッ……!」
「エヴァ!」

 零夜が叫んだ直後、ハンニャバルの攻撃は緩めない。今度はコーネリアの身体を掴み、そのままポイッと投げ捨ててしまった。

「なんで私はこんな扱いなのよ!」

 コーネリアが叫んだ直後、彼女は地面に不時着してしまう。ハンニャバルはその後も攻撃を続け始め、ヒカリ、ジェニー、ソニア、杏を左手で薙ぎ払い飛ばした。

「「「うわ(きゃ)ああああああ!!」」」
「今度は四人が薙ぎ払い飛ばされた!ハンニャバルの攻撃は手強く、ブレイブペガサスは大苦戦!果たしてどうなるのか!?」

 ラビリンの実況に観客席がざわついてしまう中、倫子達もハンニャバルの攻撃を受けて飛ばされていく。誰もが心配そうな表情をする中、修吾は冷静な目で零夜達に視線を移していた。
 ボロボロの状態である零夜達の目はまだ死んでおらず、最後まで諦めずに立ち向かおうとしている。どんなに手強い敵でも、最後まで諦めずに立ち向かう覚悟がまだあるのだ。

「零夜はここで諦めない男だからな。それに……あの手裏剣がそろそろ効果を発動する頃だろう」
「あの手裏剣?」

 修吾は真剣な表情で推測するが、文香は疑問に思いながら首を傾げている。ハンニャバルの背中に刺さっている紫の手裏剣が、何の役に立つのか疑問を感じているのだ。それに栞達も気になったその時、アミが手裏剣からオーラを発しているのを見逃さずにいた。

「そろそろ効果が発動するわ!」

 全員が手裏剣に視線を移した途端、そこから特殊な電波が発せられる。その電波はハンニャバルに直撃してしまい、彼の身体が痺れ始めたのだ。

「グオオオオオオ!」
「おーっと!手裏剣から電流が流され、ハンニャバルが痺れまくる!一体どういう事だ!?」

 突然の展開にラビリンや観客達が驚きを隠せない中、ハンニャバルの身体に激痛が流れ込んでいく。同時に彼の持つスキルも全て無効化されてしまい、一気に弱体化してしまったのだ。

「まさか……先程投げた手裏剣がカギとなったの?」

 ミミがハンニャバルの背中に刺さっている手裏剣を指差し、それに零夜はコクリと頷く。あの手裏剣こそ、ハンニャバルを倒す為のカギに違いないからだ。

「ああ。あの手裏剣は退魔手裏剣たいましゅりけん。俺が開発した手裏剣で、敵のスキルを全て無効化する能力を持っている。更に怪物などの大きめの敵には、激痛と痺れの追加効果があるのさ」
「という事は……今の状態のハンニャバルは弱体化しているとの事ね!」

 零夜からの説明にミミ達は納得し、今のハンニャバルの状態に視線を移す。退魔手裏剣によってスキルは無効化され、更に激痛と痺れで動きが鈍くなっているのだ。
 まさかあの手裏剣によって、展開が一気にひっくり返されるとは思わなかっただろう。しかし、弱体化しているからこそ、攻めるなら今しかない。

「その通りだ。さて、ここからが反撃だ。散々殴り飛ばされた分反撃しないとな!」
「そうね。ここで終わる私達じゃない。私達ブレイブペガサスは何が何でも諦めない!最後まで立ち向かう覚悟だから!」

 零夜とミミの合図と同時に、倫子達も立ち上がって戦闘態勢に入り始める。すると観客席から歓声と声援が響き渡り、その後押しによって零夜達の力も上がってきたのだ。

(まさかあの手裏剣によって、状況をひっくり返すとはね。ここからが本番となるけど、ブレイブペガサスはどう立ち向かうか。その戦いぶり、見せてもらうよ!)

 トキコは笑みを浮かべつつ、ハンニャバルに立ち向かう零夜達に視線を移していた。彼等の真価がどう定められるのかは、この戦いに全てが決まるだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。  応援していただけたら執筆の励みになります。 《俺、貸します!》 これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ) ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非! 「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」 この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。 しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。 レベル35と見せかけているが、本当は350。 水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。 あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。 それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。 リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。 その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。 あえなく、追放されてしまう。 しかし、それにより制限の消えたヨシュア。 一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。 その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。 まさに、ヨシュアにとっての天職であった。 自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。 生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。 目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。 元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。 そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。 一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。 ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。 そのときには、もう遅いのであった。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...