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第五章 ハルバータの姫君

第百七十九話 プリンセスからのキス

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 紅蓮丸とネオマギアスとの戦いから数日後、ヴァルムント王国では王位継承者の発表が行われようとしていた。住民達はこの時を待っていたかと待ち侘びていて、多くがその発表に訪れていたのだ。

「今回は集まってくれて感謝する!王位継承者の争いがようやく終結した!その王位継承者を紹介しよう!アメリアだ!」

 ボリスの合図と同時にアメリアが姿を現し、国民達が歓声を上げながら祝福をする。彼女はいつもと同じドレススタイルで姿を現し、冷静な優雅さで歩いているのだ。

「改めて見ると綺麗だな……」
「ええ……凄いわね……」

 陰で見ていた零夜と美津代は、アメリアの姿に見惚れていた。彼女の正装姿はとても美しく、見惚れてしまう人が続出してしまうのも無理はないだろう。
 零夜達の傍にいるミミ達も同様に頷く中、アメリアがマイクを手に取って演説を始める。

「皆様。私が王位継承者であるアメリアです。王位継承のランクでは私が一番低かったですが、無事に乗り越える事が出来ました。必ず父上と同様に、この国を豊かな平和な国にしようと努力します!」

 アメリアの宣言に国民達の拍手と喝采が響き渡り、ボリスはうんうんと頷きながら実感する。あのアメリアがここまで成長するとは見事としか言えないだろう。

「そして、私の王位継承に協力してくれた仲間達を紹介します。来てください!」

 アメリアの合図と同時に、零夜達が壇上前に移動しながら姿を現す。更にシオン、ゲルダ、シナモン、ジャミラまでも姿を現し、彼女達は指定された位置に移動したのだ。

「ブレイブペガサスの皆様、シオン、ゲルダ、シナモン、ジャミラ、レジー、兵士達がいたからこそ、私はここまで来れた。その感謝と共に、彼等には褒美を取らせます!」

 アメリアの宣言の直後、彼女は零夜達に勲章を手渡す。彼等が勲章を受ける度に拍手が響き渡り、零夜達は国民達に対して一礼しながら返した。

「そして、私も選ばれし戦士となった以上、アークスレイヤーに立ち向かう事を決断します。シオン、ゲルダ、シナモン、ジャミラ、レジー。私と共に行動して貰えないでしょうか?」

 アメリアは選ばれし戦士となった事で、アークスレイヤーと戦う事を決断。レジー達に対して共に戦ってくれるか質問したところ、彼等は冷静に頷いていた。

「勿論ですとも!姫様を守るのは私の仕事!」
「ハインの分まで生きると誓ったからな」
「必ず力になります!」
「メルト様もそれを望んでいますからね」
「あとは偉人一人ともう一人のメンバーを集めるのみですね」

 五人はアメリアと共に戦う事を決意するだけでなく、彼女に対して忠誠を誓う。ヴァルムントに選ばれし戦士達のチームが無くなってしまった以上、今後はアメリアと共に新たなチームを立ち上げる事を決断していたのだ。
 アメリアは笑顔で了承しながら一礼し、そのまま国民達に視線を移す。同時に彼女は決意の表情をしながら前を向き、皆の前で宣言し始める。

「彼等も協力してくれる事になった以上、後は二人メンバーを集めるだけとなります。たとえどんな困難があろうとも、私達は一歩も引かずに立ち向かう!それが私達「スノーホワイト」です!」

 アメリアの宣言に大歓声が響き渡り、国民全員が彼女達の活躍を期待していた。アメリアが選ばれし戦士になった事で、ヴァルムントにおける新たな選ばれし戦士達のチームが誕生。それと同時に名前も決定し、スノーホワイトが正式に認定されたのだ。

「頼んだぞ、スノーホワイト!」
「アークスレイヤーを倒してくれよー!」
「ブレイブペガサスも頑張れー!」

 住民達の歓声に、アメリアと零夜達は手を振りながら応えていく。ヴァルムント国民の期待を裏切らない為にも、必ずアークスレイヤーを倒す事を誓いながら。
 こうして王位継承者の発表は大歓声の内に幕を閉じ、住民達はそれぞれの場所に帰ったのだった。



 それから数時間後、零夜達は元の世界に帰る事に。見送り場所である王城の中庭では、彼等の帰還をアメリア達が見送りに来てくれていたのだ。

「貴方方と出会わなければ、私の今の姿はここにいませんでした。本当に感謝しています!」

 アメリアが代表して零夜達に対し、感謝を込めながら一礼する。零夜達と出会ったからこそ今のアメリアがいて、彼等の助けがなかったら王位継承となる事はなかった。この事に関しては感謝してもし切れないぐらいだろう。

「いえいえ。アメリア姫の頑張りがあったからこそ、今の貴方がいますからね。ここからはライバル同士となりますが、お互いトーナメントに向けて頑張りましょう!」

 零夜は拳を突き出しながらアメリアに宣言し、彼女も頷きながら同意する。
 アメリアはレジー達と共に選ばれし戦士として活動する事になる為、今後は零夜達とはライバル関係になっていく。其の為、彼等の力が無くても、トーナメントに出場できるかがカギとなるだろう。

「じゃあ、そろそろ行きましょう!」

 美津代の合図と同時に、彼女達は元の世界に繋がるワープゲートの中へ次々と入っていく。アメリアとはまた会える思いを心に刻みながら、元の世界へと帰って行った。
 そして最後は零夜となり、彼もワープゲートの中に飛び込もうとしたその時、アメリアが待ったをかけて彼に近づいてきたのだ。

「待ってください。忘れ物がありますよ」
「忘れ物?」

 アメリアの掛け声に零夜が首を傾げたその直後、彼女は彼の唇にキスをしてしまったのだ。

「「「!?」」」
「むぐっ!?」
「ほう……」

 これに関してはその場にいる誰もが驚きを隠せなかったが、ボリスはほほうと納得の表情をしていた。まさか王位継承者からキスをしてくれるのは、想定外としか言えないだろう。
 当然零夜は顔を真っ赤にしていて、パニックになるのも無理はない。その様子にアメリアは微笑んでいたのだ。

「あなたのこれからの活躍、信じています。またお会いしましょう!」
「あ、ああ……」

 アメリアの笑顔に零夜は苦笑いしながらも応え、ワープゲートの中に入っていく。そのままゲートは消えてしまい、跡形もなく消えてしまった。

「姫様!今のキスはもしや……」
「ええ。また会う日を楽しみにしている意味だけでなく、本格的に好きになったかな……」
「「「ええーっ!?」」」

 レジーは慌てながらアメリアに質問すると、彼女は頰を赤らめながら零夜を好きである事を宣言。これにはシオン達も驚くしかなく、レジーは唖然としていた。

「なんて事を!そもそも零夜様には四人の彼女が……」
「だからこそ、宣戦布告したのよ」
「しかし、キスだなんてやり過ぎですぞ!」

 アメリアとレジーの言い争いが続く中、この様子にシオン達はポカンとしながら見つめるしかなかった。しかし、ボリスだけはウンウンと頷いたと同時に、晴れ渡る青い空を見上げ始める。

「あのアメリアに好きな人ができたとは……もしかすると、これは新たな風が吹くだろう……」

 ボリスはヴァルムントに新たな時代が来る事を感じながら、シオン達に対して呼びかけ始めた。同時に穏やかな風も吹き始め、太陽の日差しが彼等を照らしていたのだった。
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