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第五章 ハルバータの姫君

第百五十九話 激突!ブレイブペガサスVSシルバーファング(後編)

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 ブレイブペガサスとシルバーファングの戦いは、八対六でブレイブペガサスがリード。実力差がはっきりと分かる展開で、ざわつきを隠せないのも無理ないだろう。

「くそっ!こうなったら俺の手で倒してやる!」

 ハクロは斧である「アックスロイヤル」を構えながら、強烈な斬撃をエヴァに対して放とうとする。あの斧は高威力を持っているが、下手したら殺されるのも無理もない。

「一気に殺すつもりよ!気を付けて!」
「死ねェェェェ!!」

 コーネリアがエヴァに対してアドバイスした直後、ハクロの斧がエヴァに襲い掛かる。しかし、その攻撃は回避されてしまい、大きな空振りとなってしまった。

「空振りの隙が大きいわよ!」

 そこを見逃さなかったエヴァはハクロの手首に打撃のダメージを与え、彼の手から斧を落とす事に成功する。

「いつっ!」

 ハクロが思わず手の痛みを感じたその時、エヴァの強烈なアッパーが彼の顎を捉えたのだ。その威力はとてつもなく強力で、ハクロは当然空高く吹っ飛んでしまった。
 観客達がこの光景に驚く中、更にエヴァは跳躍して止めの技を刺そうとする。ハクロの体を上下逆さまに抱え上げて固定し、その状態から自ら座り込んでいく。しかも相手の首を足で挟みながら固定して、そのまま頭を地面にぶつけようとしているのだ。

「これで終わり!満月雪崩落まんげつなだれおとし!」
「ガハッ!」

 ハクロの脳天に地面が激突し、彼はそのまま失神して倒れてしまう。しかも目は白目となっていて、起き上がるには時間が掛かるのだ。
 そのままハクロはその場から転移されてしまい、残るは後五人になってしまった。

「おいおい。何やってんだシルバーファングは!」
「いくら何でもここまでやられるとは無いだろ!」
「ふざけるな、シルバーファング!」
「引っ込めー!」

 観客からシルバーファングに対してブーイングの嵐が巻き起こり、それにボリスは真剣な表情をしながら頷いていた。どうやらハインの名誉がここまでである事を悟っていたのだろう。

「ハイン。残念ながらこれがお前の現実だ。後は……このまま試合を見終えてからだな……」

 ボリスは真剣な表情でハインに語りかけるが、彼は呆然としたまま大量の冷や汗を流していた。まさか自分のチームが最大のピンチになっているだけでなく、住民達からのブーイングまで出てしまう事態になってしまった。これに関しては現実を受け止めなければならないだろう。


 
 試合は白熱の展開で進む中、シオンとヒカリの剣術対決が行われていた。剣術の腕前はシオンが上手だが、ヒカリも負けてはいられない。盾で攻撃を弾き返したと同時に、剣によるカウンターでダメージを次々と当てていく。次第にシオンは追い詰められていて、身体は傷だらけとなっているのだ。

「こ、こいつ!」

 シオンが反撃の斬撃をヒカリに当てようとするが、彼女は横に回避したと同時に、刃に炎を纏わせ始める。同時に剣もフレイムソードへと変化し、そのままシオンに向けて狙いを定め始めた。

「動きが読めたわ!サラマンドラスラッシュ!」

 炎の波動斬撃が刃から飛び出し、そのままシオンに直撃して炎のダメージを与えたのだ。その威力にシオンは耐えきる事が出来ず、仰向けに倒れてダウンを取られてしまった。

「くっ……この私が……ここでやられるとは……」

 シオンが敗北を悟った直後、彼女も敗者ゾーンへと転移。ヒカリは勝利を確信して笑顔を見せていた。

「すげぇ……あのヒカリという人、無茶苦茶強いぞ!」
「もしかするとこの人達、悪い奴じゃないみたいだな」
「私、ブレイブペガサスを応援したい!」
「俺もだ!負けるな、ブレイブペガサス!」

 観客席から次々とブレイブペガサスを後押しする声が響き渡り、完全アウェイから一転してホーム的感覚の声援が響き渡った。ブレイブペガサスの活躍が認められたからこそ、この様な展開が起こる事が出来たのだ。

「おーっと!これは凄い!観客達がブレイブペガサスを後押ししながら、次々と声援を送り込んでいる!完全アウェイの空気を一転させたこの展開、まさに見事としか言えない!」 

 ラビリンの実況も響き渡る中、零夜達は自分達が認められた事を嬉しく感じていた。しかし今は戦闘中。直ぐに気を切り替えて目の前の敵に視線を移す。

「皆からの声援がある以上、負けられない!残りあと四人!気を引き締めて行くぞ!」
「「「おう!」」」

 零夜の掛け声に全員が一斉に応え、彼はヴィリアン、ソニアはアッシュ、アミリスはゲルダ、ジャンヌは李舜臣に立ち向かう。ヒカリとミミは自らの陣地の護衛に向かい、倫子とエヴァは敵陣へと突入しに向かったのだ。

「くそっ!ピンチになっても俺達は諦めない!今こそエリートの意地を見せつける!ヴァルムントが誇る最強軍団の俺達だからこそ……負けられないんだ!」

 ヴィリアンはそのままスピードを上げて駆け出し、剣を持ちながら零夜に立ち向かう。しかし彼はアクロバティックな動きを駆使し、跳躍しながら回避してしまう。

「何!?」
「そこだ!」

 ヴィリアンが驚いたその時、零夜が手裏剣を投げ飛ばして彼の背中に三枚突き刺した。その威力は弱いみたいだが、激痛や状態異常を与える事ができるのだ。

「がっ!」

 ヴィリアンの身体に激痛が走ったと同時に、そのまま彼は仰向けに倒れてしまう。そのままダウンを取られてしまい、自力で起き上がる事が出来ないのだ。

「どうやら俺達を甘く見ていたのが、間違いだったみたいだな……」
「くそ……やっぱり俺達では……話にも何もならなかったか……無念……」

 ヴィリアンが悔しそうな声を出した直後、彼はそのまま敗者ゾーンへ転移される。それを見たトキコは、試合が終わった事を実感する。

「キャプテンのヴィリアンが戦闘不能!よって、勝負あり!勝者、ブレイブペガサス!」

 トキコが宣言したと同時に、試合終了のゴングが鳴り響く。同時に歓声も響き渡り、闘技場全体が最高潮に盛り上がっていたのだ。

「決まったー!ブレイブペガサスがキャプテン撃破により、圧倒的な強さで勝利したー!まさに彼等こそ、真の英雄に相応しい!完全アウェイの状況をひっくり返したのだ!」

 ラビリンの実況と同時に歓声が再び響き渡り、敗北したアッシュ達はその場から強制転移されてしまった。同時に紙吹雪が空から降り始め、零夜達の勝利を祝福していたのだ。

「勝ったのか……俺達……」

 零夜が勝利を実感しながら空を見上げると、快晴の青い空が響き渡っていた。それに零夜が笑顔になった途端、ミミとエヴァが彼の肩に手を置きながら優しく声を掛ける。

「ほら、皆に挨拶しないと!」
「勝者は皆からの歓声に応えないと!」
「そうだったな!取り掛からないと!」

 零夜はミミの声掛けに頷き、観客達に視線を移しながら歓声に応える。それと同時にヴァルムントの国民は、ブレイブペガサスを正義の戦士として認めてくれたのだ。

「一時はどうなるかと思いましたが、本当に良かったです!」
「よしよし。私も嬉しいし、こんなに最高な事は滅多にないからね」
「あれだけ戦いの前にはブーイングが起きていましたが、今では皆が認めてくれましたからね」

 ルリカに至っては嬉し涙を流していて、キララ達は彼女を慰めながら微笑んでいた。零夜達がヴァルムントの国民に認めてくれた事が、とても嬉しかったのだろう。

「さっ、皆の元に行くか!」
「俺達のヒーローを迎えにな!」
「「「おう!」」」

 トラマツとノースマンの合図にルリカ達も頷き、勝利を収めた零夜達の元へと向かったのだった。
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