上 下
131 / 266
第四章 エルフの森の怪物騒動

第百二十九話 襲来のアルバータドラゴン

しおりを挟む
 フリードからのまさかの報告に全員が驚きを隠せない中、風子は冷静さを取り戻して彼に視線を移していた。彼女も驚きを隠せない事もあるが、すぐに切り替えて冷静に対処する事が可能である。まさにリーダーとしては相応しいだろう。

「報告感謝するが、奴は何処にいるのか気になるな」
「アークスレイヤーのアジトのある方角から来る。敵の様子も確認したが、このエルフの森を滅ぼそうとしていそうだ」
「となると……戦うしか方法はないみたいだな」

 フリードからの報告に風子は冷静に対処し、即決にアルバータドラゴンと戦う事を決断した。訓練が終わった後の襲撃は予想外としか言えないが、エルフの森を守る為には戦わなければならないのだ。

「そうですね……けど、アルバータドラゴンが単独で向かうのには何か裏があります。恐らくアークスレイヤーの支部基地から脱走したんじゃ……」

 零夜が真剣な表情でアルバータドラゴンの行動を推測する中、アミリスは千里眼を駆使しながらアルバータドラゴンの様子を観察し始める。すると、彼女の脳内にアルバータドラゴンの情報が流れ込んできた。

「分かったわ!アルバータドラゴンは支部基地から脱走したのは勿論、自身を倒した者達に復讐をしようとしているの!」
「逆恨みという事か……本当に懲りない奴だぜ……」

 アミリスからの情報を聞いたソニアは、ワナワナと震えながら拳を強く握りしめる。
 元はと言えばアルバータドラゴンが悪事を犯していて、最終的には多くの戦士達によって討伐されてしまった。しかしヒューラーによって復活を果たし、彼等を根絶やしする為に復讐の行動に出たのだ。
 これに関しては零夜達も黙ってはいられないだろう。

「ともかく、急ぐぞ!奴等の好き勝手にさせない為にも、俺達で止めるしかない!」
「そうですね。すぐに急ぎましょう!」
「これ以上奴等の好き勝手にはさせない!全員向かうぞ!」
「「「おう!」」」

 ブレイブペガサス、美津代、サンペイは急いでアルバータドラゴンの暴走を止めに向かい、すぐさま部屋から飛び出した。アークスレイヤーが関わるとなると、奴等の悪巧みを止める為に動くしかないだろう。

「我々も行くぞ!零夜達に遅れを取るな!」
「ええ!それにしても零夜達は行動力が早いみたいね」
「私達も見習わないとね……」

 風子達も後に続いて部屋から飛び出し、ポーラとセリアは零夜達の行動に苦笑いをしていた。彼等の反応速度はトラマツとノースマンに鍛えられていて、人のレベルを既に超えているのだ。恐らく風子達も負けじと練習をする可能性があり得るだろう。

「おい!待ってくれよ!」

 フリードも自身も戦う決意を固めつつ、慌てながら零夜達の後を追いかけ始めた。



 零夜達は飛空術で空を飛びながら、アルバータドラゴンの元へ向かっていた。するとアミリスが危機感を察し、動きを止めてしまう。

「アミリス、その様子だと……アルバータドラゴンが来たのか?」
「ええ……来ると思っていたけど……早く来るのは想定外だけどね……」

 アミリスが真剣な表情で指差す方を見ると、アルバータドラゴンが姿を現した。見た目は前と同じままであるが、復讐心によって邪悪のオーラが溢れていたのだ。

「こいつがアルバータドラゴン……!アタイ等の故郷を滅ぼした奴か……」
「実物はでかいが、まさかこれ程までとはな……こりゃ、たまげたとしか言えないな……」

 アルバータドラゴンの姿にソニアと杏は冷や汗を流すが、零夜達も同様になっていた。大型モンスターは恐竜と同じくらいであり、ドラゴンもそのクラスに入っているのだ。

「実際の大きさだと十五メートルはあるみたいね。ティラノサウルスと同じくらいかしら?」
「けど、油断は禁物だ!零夜、上手くやれよ!」

 美津代はアルバータドラゴンの大きさを確認し、サンペイは零夜達に掛け声をしながらアドバイスを送る。敵は前と比べてそう簡単に倒せないが、コツさえ掴めれば必ず倒せる筈だ。

「了解……戦闘開始だ!行くぞ!」
「「「おう!」」」

 零夜の合図と同時にミミ達も動き出し、彼等はそのままアルバータドラゴンに立ち向かう。それを見た風子達も一斉に頷き、そのまま後に続いた。

「ほう……貴様等がわしの復讐の邪魔をするのか。選ばれし戦士であろうとも、返り討ちにしてくれる!」

 アルバータドラゴンは口から光のブレスを吹き始め、そのまま零夜達に襲い掛かる。そのブレスはとても白いが、当たれば大ダメージは確定と言えるだろう。

「全員躱せ!」

 零夜の合図で全員が回避するが、回避されたブレスは砂の様に消えてしまった。この光景に見惚れる者もいる筈だが、今は戦闘中なのでそれどころではないのだ。

「凄い威力だ……あのブレスに当たっていたら大ダメージだろうな……」

 零夜は冷や汗を流したまま、アルバータドラゴンを真剣に睨みつける。このブレスで多くの人達を殺したのは間違いなく本物であり、改めて敵の恐ろしさを実感しただろう。

「回避したか……なら、貴様から喰い殺してくれる!」
「くっ!そう来たか!」

 アルバータドラゴンは口を大きく開きながら、零夜を喰らおうと襲い掛かる。この展開に零夜は驚きつつも、すぐに回避しようと移動を開始する。

「そうはさせないわ!こいつを喰らえ!」

 しかし、それ以前にエヴァがアルバータドラゴンの元に移動していて、降り下ろしからの強烈な鉄槌でダメージを与える事に成功したのだ。

「ぐおっ!」

 同時にアルバータドラゴンは怯んでしまい、風子達はチャンスと同時に攻撃を仕掛け始める。怯んだ時こそ集中攻撃できるチャンスであり、少しでもダメージを与えておかなくては意味ないだろう。

「疾風斬!」

 風子は素早い風の斬撃を繰り出し、アルバータドラゴンに斬り裂きのダメージを与える。更に追い討ちをかける様にアナが魔術を唱え始めた。

「アイススピアー!」

 アナの魔術で氷のニードルが姿を現し、次々と発射されてアルバータドラゴンに直撃する。ドラゴンは基本的に氷が苦手なので、効果は抜群なのだ。

「援護します!やっ!」

 更にメイリーも弱体化魔術を使い、アルバータドラゴンのステータスをガックリと下げていく。しかしその魔術は効果がなく、むしろ平然としていた。

「お返しだ!」

 アルバータドラゴンはお返しとばかりに、自らの尻尾を振り回しながらメイリーを弾き飛ばしてしまった。

「キャッ!」
「メイリー!」

 キララはメイリーのピンチを感じ取り、素早く駆け出して彼女をキャッチする事に成功。反応が遅かったら地面に墜落していただろう。

「ありがとうございます……弱体化魔術が効果ないなんて……」
「それ程恐ろしい敵という事ね……」

 メイリーとキララだけでなく、誰もが緊迫感を持ちながらアルバータドラゴンを見ていた。どうやらこの戦いは簡単に勝たせてくれないと思いながら……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...