ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

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第四章 エルフの森の怪物騒動

第百十六話 女性盗賊ライカ

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 ライカはレストランに入った途端、バタリと前のめりに倒れてしまった。それを見た零夜達は驚きを隠せず、すぐに彼女の元に駆け寄り始める。

「おい、大丈夫か!?」
「しっかり!」

 零夜達がライカの元に駆け寄ったその時、彼女が倫子の胸倉を掴みながら睨みつけていた。しかもその表情は恨めしそうなくらい怖そうだ。

「アンタ……よくも私の獲物を……」
「へ?ウチなんかした?」

 ライカの睨みに倫子はキョトンとしてしまうが、すぐにジェニーが手を叩いてある事を思い出した。

「倫子さんが馬車を動かしたからですよ。お陰で私達は助かりましたが……」
「逆に恨みを買わされたみたいですね。」
「得物返せ……」

 ジェニーの説明にルリカも苦笑いする中、ライカはズルズルと倒れてしまった。どうやらあまりのダメージで力が出ないそうだ。

「ともかく助けないと!ミミちゃん、手当をお願い!」
「はい!すぐにヒーリングを!」

 ミミはライカに近付いてヒーリングを行おうとするが、零夜は彼女の様子を見てすぐに察していた。

「怪我はないが……こいつも俺達と同じく腹が減っているみたいだぞ」
「「「へ?」」」

 零夜からの説明に倫子達は呆然としてしまい、彼はすぐにAランチの追加を注文した。どうやら何も食べてなくて空腹だったに違いない。

「そうだったんだ……私、早とちりしたみたい……」
「でも、無事で良かった……」

 ミミは赤面しながら苦笑いし、倫子は安堵のため息をつきながら笑みを浮かべた。するとテーブルの上に料理が次々と置かれ、僅か三分で全て用意できたのだ。

「早いな!」
「たったの三分っておかしくない!?」
「アタイも今思ったけど、大丈夫なのか?」

 零夜達は料理が早くできた事に驚きを隠せずにいて、いくらなんでも異常すぎないかと感じていた。普通なら時間は掛かるし、用意できても十分ぐらいは掛かるだろう。

「ウチは速さと味が持ち味さ!どんどん食べてくれ!」
「マジですか……じゃあ、いただきます!」

 店長の説明に零夜は苦笑いするが、全員でそのまま昼食を食べ始めた。殆どが堪能しながら食べていたが、ライカに至っては山猫の様にガツガツと食べながら腹を満たしていたのだ。
 更に羽織っているローブを脱ぎ捨て、袖無しの赤いアラビア服姿になった。へそ出しと日焼け肌、紫のショートヘアが特徴。更にミニスカなので生脚がとても綺麗なのだ。

「助かったぜ……彼奴等、やってくれるな……」

 ライカは水を飲み干した後、ため息をつきながらアークスレイヤーを恨んでいた。その様子だと散々な目に遭ったのは確実だ。

「その様子だと他の皆はやられたのか?」
「ああ。殆どは兵士達に捕まってしまい、逃げ残ったのは私だけさ。こんなところで死んでたまるかってんだ」

 ソニアの質問にライカは真剣な表情でそう応えていて、零夜は同情しながらもハンバーグを食べ終えていた。

「そうだな……俺達も奴等に倒される理由にはいかないんだ。選ばれし戦士としての使命を持つからな……」

 零夜が決意を固めながら心臓部分に手を当てていて、その様子にライカは興味を示す様な目で見ていた。彼もまた同じ境遇だからこそ、同情する物があったのだろう。



 レストランを後にした零夜達は先に進もうとしたその時、アークスレイヤーの兵士達が姿を現していた。どうやら零夜達を捕まえに来たに違いないが、物凄く執着心が強いのだろう。

「チッ!まさか兵士達が待ち伏せされていたとはな!」
「少なくとも私達を捕まえに来たのは間違いないな。油断大敵と言えるが、戦うしかない!」

 零夜と風子は冷や汗を流しながらも戦闘態勢に入り、マリー達も後に続く。兵士達の数は百人ぐらいだが、油断は禁物と言えるだろう。
 すると兵士の数名が銃を構えて発砲するが、マリー、ルリカが盾を構えていた。

「「カウンターバリア!」」
「「「ぐはっ!」」」

 マリーとルリカのカウンターバリアが発動され、銃弾は弾き返されて兵士達に直撃。彼等はそのまま仰向けに倒れて消滅してしまった。

「おのれ!こうなったら実力行使だ!」

 兵士達はそのまま駆け出しながら零夜達に立ち向かうが、キララ達が前に出て返り討ちにしようと駆け出していく。

「そうはさせないわ!キャットクロー!」

 キララはバリバリと兵士達の顔面を引っ掻き、激痛のダメージを与える事に成功。猫の引掻きは地味に痛く、大きいサイズほどその威力は増していくのだ。

「やるわね、キララ!フレイムランス!」

 アナも両手からの魔術を発動させ、炎の槍を召喚する。そのまま槍は次々と兵士達の身体に直撃し、彼等を炎に包み込ませて塵と化してしまった。

「では、私も!強化発動!」

 メイリーは僧侶の魔術で強化魔法を発動し、味方の攻撃力と防御力を大幅に上げる事に成功。同時に敵の攻撃力と防御力も下げまくり、これで勝負は決まったのも当然だ。

「ナイス、メイリー!それじゃ、行くわよ!」

 キララが兵士達に向かって駆け出そうとしたその時、何者かが飛び出して兵士達を次々と斬り裂いていく。

「へ?ライカ?」

 そう。飛び出したのは零夜達に助けられたライカだ。彼女は盗賊の剣を二刀流に構えながら、流れる様な動きで次々と敵を倒していく。まさに踊り子の様だが、剣技の実力は見事としか言えないだろう。

「こ、こいつ……あの盗賊の……」

 兵士の一人がライカの名前を叫ぼうとするが、彼女の剣で首を斬られて消滅してしまった。残りの兵士達もライカに次々と斬られて消滅してしまい、彼女によって全滅してしまったのだ。

「凄い……あっという間に倒すなんて……」

 ジャンヌ達はライカの剣技に呆然としている中、彼女は武器を鞘に納めた後にジャンヌ達に視線を移す。

「いきなり飛び出したのは悪かったな。私は盗賊のライカだ。助けてくれたお礼として付いていくし、アンタ等にも興味あるからな」

 ライカは笑顔を見せながら零夜達に付いていくと宣言。それに彼等は断る理由はなく、勿論頷きながら承諾する。

「勿論構わないさ。今から俺達はエルフの森に行くが、アミリスのお祖父さんから話を聞かなきゃならないんだ」
「アルバータドラゴンの事だろ?」
「「「!?」」」

 零夜の説明にライカは納得しながら答えるが、彼女がアルバータドラゴンを知っている事に誰もが驚きを隠せずにいた。彼女がアルバータドラゴンを知っているという事は、ソニア達と同様過去に何かあったのだろう。

「知っているのか?」
「ああ。私も奴によってやられた……故郷と家族、仲間達が殺されたからな……!」

 ライカは怒りでアルバータドラゴンを恨みながら、拳を強く握っていく。彼女もまた、アルバータドラゴンにやられた被害者の一人であり、それを聞いた零夜達は何も言えずに同情したのだった。
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