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第四章 エルフの森の怪物騒動

第百十五話 新たなモンスター召喚士

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 零夜達は馬車に乗りながら追手を振り切る事に成功し、彼等は安堵のため息をつきながら落ち着いていた。

「一時はどうなるかと思ったわ。皆、大丈夫?」

 美津代は皆の状態を確かめながら問いかけると、零夜、倫子、風子、夢子以外の戦士達は皆グッタリしていた。そりゃ全速力で馬車を飛ばせば、皆こうなるのは確定だ。

「最初から飛ばすなんて無茶苦茶すぎですよ……」
「死ぬかと思いました……」
「ごめんね、皆」

 日和とルリカはグッタリしながらも倫子に視線を移し、彼女は苦笑いしながら謝罪をした。

「それにしても……倫子が馬の扱いを得意としているとはな……」
「うん。馬術については数日前に仕事で経験したから。このくらいなら大丈夫かな」

 ソニアは倫子の馬術スキルに感心していて、彼女はその理由を話していた。
 倫子はプロレスラーだけでなく、女優、サロンを営業している三刀流だ。今回の馬術も女優の関係で取得していたので、先程の行為は見事としか言えなかった。

「そうだったの……アークスレイヤーが来て戦う事になろうとしたけど、上手く逃げ切れたみたいね」

 マーリンは追手がいない事を確認したその時、茂みの中からモンスターが姿を現した。しかもその数は三百匹だ。

「種族はインプとペンギンナイトか。ここは私に任せて!」

 ヒカリはバングルからスピリットを放出し、二匹のスライム、ツノラビ、ファルコス、ブラックボア、カーバンクル、ジャックライダー、トレント、ミノタウロス、パンダファイター、リトルドラゴン、リトルペガサス、バット、三匹のコマンドペンギンが姿を現した。
 風子達は彼等の姿に驚きを隠せず、ヒカリがモンスター達を使役している事を初めて知ったのだ。

「まさか彼女がモンスターを召喚するとは驚いたな……」
「ああ。ブレイブペガサスは凄い奴等がいっぱいいる物だな……」

 風子とアルビダがヒカリのモンスター召喚に脱帽する中、スライム達の猛攻でインプ達は次々とやられていた。彼等にとってはレベルが低いので、相手にならないのも無理はない。

「ヒカリ!インプ、ペンギンナイトを仲間にしろ!」
「了解!マジカルハート!」

 ミノタウロスの合図でヒカリは両手でハートの形を作り、笑顔でハートの光線を放つ。光線はそのままインプとペンギンナイトの数匹に当たり、彼等はスピリットとなってヒカリのバングルの中に入ってしまった。

「各四匹で八匹ゲット!楽勝ね!」

 ヒカリが笑顔で指をパチンと鳴らした直後、夢子が決意の表情で立ち上がり、両手でハートの形を作る。

「私もここで負けられません!マジカルハート!」
「「「!?」」」

 なんと夢子もハートの光線を放ち、各五匹のインプとペンギンナイトに直撃させる。そのまま彼等もスピリットとなって、夢子のバングルの中に入ったのだ。
 ヒカリ達はこの展開に驚きを隠せずにいたが、風子達は冷静に見ていたのだ。

「夢子、あなたもマジカルハートが使えるの?」
「ええ。私も召喚魔術を使えます!皆、出ておいで!」

 ヒカリの質問に夢子は笑顔で答え、そのままモンスター達をバングルから召喚する。するとバングルからスピリットが放出され、スライム、ファルコス、ホーンラビットファイター、サイクロプス、リトルドラゴン、カッパ、ホフゴブリン、バット、ストーンゴーレム、ケンタウロスが姿を現した。
 数は少ないが、戦力としては高レベルと言えるだろう。

「攻撃開始!」
「「「おう!」」」

 夢子の合図でサイクロプス達が動き出し、インプとペンギンナイトの軍団を次々と蹴散らした。そのまま彼等は全滅してしまい、零夜達はポカンとした表情で見ていた。

「少しやり過ぎちゃいましたね……」

 夢子が苦笑いする中、ヒカリのファルコス、ツノラビ、トレントが光り輝き、新たな姿に変わろうとしていた。

「これは……進化?」

 ヒカリがキョトンとしながら三匹の様子を見ると、彼等は新たな姿に進化した。ファルコスはマッハファルコン、ツノラビはホーンラビットファイター、トレントはウッドゴーレムとなったのだ。
 彼等が進化した姿は成長した証であり、強い雰囲気を纏っているのだ。

「どうやらレベルが一定に溜まって進化したみたいだな。実に見事な姿だぜ」

 ミノタウロスは進化した三匹に対して褒めていて、ヒカリは彼等に近付いて笑顔を見せる。

「三人共、これからも宜しくね」
「「「おう!」」」

 ヒカリの笑顔にマッハファルコン達は笑顔で応え、彼等はスピリットとなってそれぞれのバングルの中に入って行った。

「まさか進化するとは驚きました。私も負けずに精一杯頑張ります!」
「ええ。ライバルだけど、切磋琢磨しながら頑張りましょう!」

 ヒカリと夢子が笑顔で握手をし、お互いをライバルとして認め合う。その様子に皆が微笑む中、倫子はすぐに止まっている馬車を動かしに向かう。

「休んでいる暇はないし、追っ手が来る前に早く移動しないと!」

 そのまま馬車はカルスト村へと再び歩み出し、問題なくゆっくりと進む事ができた。



 それから数分後、カルスト村に到着した零夜達は辺りを見回していた。ここはいわゆる普通の村であり、平和そうな雰囲気を保っているのだ。

「エルフの森に近いのはこの村だが、アルフェリア支部基地はこの辺りには無いみたいだ」
「そうなると反対側にあるみたいね……下手をしたらエルフの森が襲撃される恐れもあるし、早めに向かわないと!」

 風子とセリアが真剣な表情で推測する中、突然キララのお腹の音が鳴る。彼女は恥ずかしさのあまり赤面してしまう。

「キララ……もしかしてお腹減ったの?」
「言われてみればそうかも……そう言えばお昼時だから……」
「気持ちは分かります。確かレストランは……あっ、ありました!」

 メイリーが指差す方を見ると、村に大きなレストランが建てられていた。しかも営業中の看板も立てられていて、全員が視線をレストランに移していた。

「今の時刻はお昼時で、お客さんも多く来るわね。そうと決まれば早速入るわよ!」
「私もお腹減りました!」
「ここにレストランがあるのは丁度いいからね!」
「私も何か食べます!」

 キララ達は席を確保する為、急いでレストランの中へ入ってしまう。この様子にトラマツ達はポカンとしていた。

「彼奴等……そんなにお腹減ったのか?」

 零夜がこの光景に呆れてしまう中、彼の腹も鳴ってしまう。その様子にトラマツ、ノースマン、サンペイ、風子、天狐はジト目で見ていた。

「主も人の事を言える立場か?」
「言い返す言葉もない……レストランに入るとするか……」
「そうだな。丁度喉が渇いた頃だ。お茶があれば十分だ」
「オイラ達も何か食べないと」

 天狐からの指摘に零夜はガックリと項垂れ、彼等もレストランの中へと入ったのだった。



 レストランの中に入った零夜達は、それぞれの席を確保して椅子に座る。しかし、彼等以外のお客さんは誰もいなかったのだ。

「お客さんがいないのが気になるけど……折角だから何か食べる?」
「そうだな。ランチは2種類なら……俺はAの絶品ハンバーグセットを頼むよ」

 ミミの質問に零夜はメニュー表を確認し、すぐにAランチを注文する。
 この店のランチメニューは、Aがハンバーグにバターポテト、サラダ、パン、ドリンクのセットとなっている。
 Bは天然サーモラスのムニエルにバターコーン、サラダ、パン、ドリンクのセットとなっている。つまり肉か魚のどちらかを選ぶという事だ。
 その結果、零夜達の選択はこうなったのだ。

A:零夜、ルリカ、エヴァ、コーネリア、ソニア、杏、風子、ポーラ、夢子、セリア、天狐、アルビダ
B:ミミ、キララ、倫子、日和、ヒカリ、ジェニー、アミリス、マーリン、ジャンヌ、マリー、アナ、メイリー、トラマツ

 因みにノースマンには狼専用の肉、サンペイは大量の野菜が与えられる事になった。

「まあ、仕方がないよな……」
「ああ……そうだね……」

 二匹がため息をついたその時、扉が突然開く音が聞こえた。全員が音のした方を見た途端……先程の女性盗賊であるライカが姿を現したのだった。
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