ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

文字の大きさ
上 下
97 / 277
第三章 花咲くロベリア革命

第九十五話 約束からの大災難

しおりを挟む
「そんな事があったなんて……」

 そして現在……ポーラからの話を聞いた零夜は驚きを隠せず、彼女は彼を抱きしめたまま涙を流していた。元気を失った衝撃はあまりにも大きく、彼女に精神的なダメージを受けたのも無理はない。

「全て事実よ。そこからは先程話した通り。私がサポートすれば、元気を救う事ができたのに……ヒッ……うええ……」

 ポーラは我慢できずにヒックヒックと泣いてしまい、零夜は彼女を強く抱き締めながら身体を震わせていた。

「絶対に許さないぜ、ベルザル……そこまでやらかすなんて外道過ぎるぜ……」
「零夜?」

 零夜の様子にポーラは泣くのを止めてしまい、彼の方を見る。その表情は怒りとなっていて、ベルザルの非道な行為に対して許せない怒りを感じていた。
 更に零夜はポーラの話を聞いた以上は放ってはおけず、彼女の為にも戦う覚悟を示しているのだ。

「女性達を奴隷にするだけでなく、子供まで殺してしまうとは……俺はあいつを絶対に倒してみせる!」
「零夜……」

 零夜の熱き決意にポーラは涙を流しながらも、彼の顔をじっと見る。そのまま何かを決意したと同時に、彼の手を強く握りしめた。

「お願い!元気の仇を取る為にも、ベルザルを倒して!」
「お任せください。必ず約束を果たし、仇を取りに向かいます!」

 ポーラからの涙ながらの依頼に、零夜は真剣な表情で勿論承諾。すると……彼女は彼の唇にキスをしたのだ。

「ポーラさん!?」

 いきなりポーラからキスをされてしまい、零夜は慌てながら彼女から離れてしまう。すると彼女は彼に近付き、優しい笑みで彼の頭を撫で始める。
 
「エール代わりのキスよ。あなたを信じているわ」
「は、はあ……どうも……」

 ポーラの笑顔に零夜はキョトンとする中、彼女はすぐに彼を再び抱き締める。そのまま背中をスリスリと撫でながら、再び彼にやすらぎを与えていくのだ。

(なんか……気持ちよくて眠くなりそう……そう言えば、前にもこんな事があった様な……)

 零夜の目が虚ろになって眠くなりそうになるが、ポーラはすぐにある事を思いつき、すぐに彼から離れる。

「そうだ。今からお風呂を用意するから、あなたも来てね」
「お風呂ですか!?けど、裸では流石に……」

 ポーラからの提案に零夜は顔を赤くしながら恥ずかしがるが、その様子に彼女は笑顔で微笑んでいた。
 
「指定された水着があるからそれを着用してね。因みに女性の水着はオーバーオールスタイルだから。それじゃ」

 ポーラはお風呂の用意をしに部屋から出た後、零夜は思わずキョトンとしてしまう。まさかの混浴とは想定外としか言えず、ここまでサービスされるとは驚きを隠せなかっただろう。

(取り敢えず情報を収集する事が出来たが、お風呂は流石にな……いや、他にもアークスレイヤーについての現状を知る為にも我慢あるのみだ!)

 零夜は心の中で自身に問い聞かせた後、すぐに風呂場へと向かい出す。選ばれし戦士としての使命を果たす為にも、ここで引くわけにはいかなかったのだ。



 浴室に着いた零夜はすぐに水着に着替え、浴室前の扉に移動する。因みに水着姿は青いスポーツスイムパンツとなっている為、動きやすさが充実しているのだ。

(確かここは大浴場だったが、しばらくはゆっくりとするか……最近戦いで疲れが溜まっているし)

 零夜は心の中で思いながらも、すぐに扉の取手を掴んで開けようとする。ポーラは既に入っていると聞いているので、後は扉を開けて彼女と話を続けるのみだ。
 因みにロベリアの浴場は大理石で、浴槽には既に石鹸も入れている。つまり、浴槽の中で体を洗うという事だ。

「よし。そろそろ行くか」

 零夜は決意を固めたと同時に扉を開き、そのまま前を向きながら視線を移す。

「失礼しま……おわァァァァァァ!!」

 零夜は前を向いた途端、目の前の光景に驚きを隠せずにいた。
 なんと浴室にいたのはポーラだけでなく、宿屋にいるはずのミミまでいたのだ。しかも笑顔の裏にはどす黒い物があるので、近付いたら危険な展開に遭うだろう。

「何故私がここにいるのかな?」

 ミミは笑顔で零夜に声をかけ、彼は思わず冷や汗を流してしまう。因みにミミとポーラの衣装は、デニム生地のオーバーオールスタイル水着となっているのだ。
 
「どういう事だ!?なんでミミ姉がここに!?」

 零夜は慌てながらミミに質問をすると、彼女は目を光らせながらそれに答え始める。

「トラマツから脅迫で話を聞かせたけど、まさかアンタが娼館に行くなんてね……」
「まさか!?」

 零夜がキョロキョロと辺りを見回すと、トラマツ、ノースマンは宙吊りにされてボコボコにやられていた。その様子だとどうやらバレてしまったのだろう。

「ごめん、零夜……」
「俺達が甘かった……」
(彼奴等……)

 ズタボロになったトラマツとノースマンの姿に零夜が唖然とする中、それだけではすまなかった。
 
「酷いです、零夜様」
「!?」

 零夜が声のした方に視線を移すと、ルリカやエヴァも姿を現していた。彼女達も頬を膨らましながら嫉妬していて、彼にそのまま近付いてくる。その様子だと怒っているのは無理ないだろう。

「黙っていくなんてあんまりだから!」
「いや、これは情報収集を……」

 零夜は慌てながら事情を説明しようとするが、ミミが彼の目の前に移動して、そのまま圧力をかけながら彼に接近する。近くて怖いのも無理ないが、自業自得である。
 
「情報収集したのはいい事だけど、こういうお店に行くのは良くないと思うわ。こうなったら少し荒療治をしないとね。皆、出てきて!」

 ミミが手を叩きながら合図をした途端、壁や床から倫子達が姿を現した。神出鬼没な忍者の登場みたいだが、今は緊張感を漂わせているのでそれどころではない。
 そのままミミ達は零夜と共に浴槽の中に入り始め、彼の周りに集まってくる。

「今から強烈ゴシゴシを始めるわ。嫌になるほど皆で抱き着くから覚悟してちょうだいね?」
「おい!それは勘弁してくれ!いくらなんでも……」

 零夜は慌てながら止めようとするが、ミミ達は一斉に彼に抱き着いて体をこすり始める。
 この行動は汚れが落ちるのは効果的だが、精神的にきついのであまりオススメできない。しかも、零夜の場合は女性に対する耐性が普通より少し下なので、かなりの精神的ダメージを受けてしまうのだ。
 
「お助けェェェェェェ!!」

 零夜の叫びは室内に響き渡り、彼の今宵の夜は最悪な結末となってしまった。娼館に立ち寄らなければ、こんな結末は避けられたのかも知れなかったのだろう。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南
ファンタジー
十二才の少年コウヤは、前世では病弱な少年だった。 それは、その更に前の生で邪神として倒されたからだ。 今世、その世界に再転生した彼は、元家族である神々に可愛がられ高い能力を持って人として生活している。 コウヤの現職は冒険者ギルドの職員。 日々仕事を押し付けられ、それらをこなしていくが……? ◆◆◆ 「だって武器がペーパーナイフってなに!? あれは普通切れないよ!? 何切るものかわかってるよね!?」 「紙でしょ? ペーパーって言うし」 「そうだね。正解!」 ◆◆◆ 神としての力は健在。 ちょっと天然でお人好し。 自重知らずの少年が今日も元気にお仕事中! ◆気まぐれ投稿になります。 お暇潰しにどうぞ♪

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

不死王はスローライフを希望します

小狐丸
ファンタジー
 気がついたら、暗い森の中に居た男。  深夜会社から家に帰ったところまでは覚えているが、何故か自分の名前などのパーソナルな部分を覚えていない。  そこで俺は気がつく。 「俺って透けてないか?」  そう、男はゴーストになっていた。  最底辺のゴーストから成り上がる男の物語。  その最終目標は、世界征服でも英雄でもなく、ノンビリと畑を耕し自給自足するスローライフだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。  設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。

聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!

山田みかん
ファンタジー
「貴方には剣と魔法の異世界へ行ってもらいますぅ~」 ────何言ってんのコイツ? あれ? 私に言ってるんじゃないの? ていうか、ここはどこ? ちょっと待てッ!私はこんなところにいる場合じゃないんだよっ! 推しに会いに行かねばならんのだよ!!

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

異世界転移! ~幽霊的な何かになってた件について~

業火
ファンタジー
ギザのピラミッドを見に来ていた俺、堀内陸也(24)は一時は考古学者を目指していた事もあり、とても興奮していた。帰り、タクシーで帰った俺は気が抜けていたのか寝てしまった。そして眼が覚めると、窓の外には森が広がっていたのである。(ピラミッドあまり関係なし。かと思えばそうでもないのだけど今は保留) ※異世界転移ものです。主人公は異世界の人には見えていません。一番分かりやすく言うと幽霊に近い存在です。物は持てます。他人に憑依すると凄く強くなる...かもしれません。魔法は無し。超常現象有り。文明レベルは場所によって変わります。 ハーメルンにも「神隠し ~知られることのない英雄~」というタイトルで投稿しております。

処理中です...