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第三章 花咲くロベリア革命

第八十三話 アンジェリックの家出の真相

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「この娘がアンジェリック……」
「意外と可愛い……」

 零夜達はエヴァ達と合流し、彼女達はアンジェリックの姿に興味津々に湧いていた。写真で見ると可愛らしさもあり、興味が湧くのも無理はないだろう。

「そこまでにしてください。シスターコルディも心配していますからね」
「えっ?お祖母ちゃんに出会ったの?」

 ルリカは苦笑いしながら皆に注意する中、アンジェリックは彼女達がコルディと出会っていた事に驚いてしまう。

「はい。なんで家出をしたのか気になります……」
「そう……私は絶対に戻らないから。それに……あの時の事は忘れられないわ」

 ルリカは気になる表情で質問し、アンジェリックは納得しながらも帰る事を断固拒否している。そのまま彼女はその時の事を思い浮かべながら、零夜達に家出の真相を話し始めた。



「あっ、アンジェリック姉ちゃん!」

 その日の午後、アンジェリックは祖母であるコルディの手伝いで荷物を運び終えた後、ノア達の元に駆け寄った。この頃は革命前なので、ノア、ジャン、カトリーヌの三人となっている。

「良い子にしていた?」
「うん。それよりもミュージシャンになるって本当なの?」

 アンジェリックが笑顔で質問する中、ノアも笑顔で返す。すると彼は気になる表情で質問を投げかけ、彼女は冷静にコクリと頷く。

「そうなの。今、孤児院がピンチだし、私は自身の夢であるミュージシャンになって、支援したいの。それに老朽化しているからね」
「何処にも壊れてないと思うけど……」

 アンジェリックの説明を聞いたカトリーヌは、疑問の表情をしながら壁に手を触れた。すると……何故か壁の一部分が押されて貫通してしまった。

「「「へ!?」」」

 ノア達が驚くのも無理なく、ポカンとした表情となってしまった。施設が老朽化しているから無理ないと思うが、普通はこの様な展開はあり得ないだろう。
 
「築七十年は経っているからね」
「「「いやいや、普通はそうならないから!!」」」

 アンジェリックの説明にノア達が盛大にアホな顔でツッコんだ直後、施設の中からコルディが姿を現して歩み寄ってきた。

「お祖母ちゃん!」

 コルディの姿を見たアンジェリック達は、一斉に彼女の方を向く。コルディは真剣な表情でアンジェリックの方を向き、それに彼女は疑問の表情で首を傾げる。

「アンジェリック。ミュージシャンになるのは良くないわ。無駄な事は止めなさい」

 コルディは前からその話を聞いているが、ミュージシャンになる夢は反対していた。孤児院支援をする目的はいいのだが、ミュージシャンになれば孤児院の跡継ぎがいなくなり、残されたジャン達はどうなるのか不安になる。
 その事をコルディは心配しているが、アンジェリックは自身の叶いたい夢を優先しているのだ。
 
「いいじゃない!お祖母ちゃんだって踊り子として活動していたじゃない。気色悪くて引いていたけどね……」

 アンジェリックが不満な表情でコルディの秘密をバラしてしまい、それにノア達はガタガタ震えながら後退りしてしまう。
 同時にコルディの右ストレートが、アンジェリックの腹に直撃してしまった。しかもその威力はプロ並みだ。

「ぐほ……」

 コルディによる強烈なボディストレートが炸裂し、アンジェリックは思わず腹を押さえて片膝を地面に着いてしまった。年寄といってもそこまで強いのはあり得ないが、どうやら格闘技を習っていたのだろう。

「秘密をバラさない様に」
「いつつ……もう良いわよ!そっちがその気なら、こんな孤児院出てってやる!」
「「「ええっ!?」」」

 アンジェリックは我慢できず、仰天発言で出て行くと宣言。ノア達は当然驚いてしまい、彼女は駆け出しながらすぐに自分の部屋に戻った。
 荷物をまとめてリュックに入れ終えたアンジェリックは、窓から飛び降りて地面に着地した。

「待ちなさい、アンジェリック!」
「待つと言われて待つ馬鹿はいないわよ!けど、有名になったら戻ってくるから!」

 コルディの制止も聞かず、アンジェリックは彼女に約束して走り去っていく。残されたノア達は呆然と立ち尽くすしかなかった。



「なるほど……シスターコルディがそんな事をしていたとは……」

 アンジェリックの話を聞いた零夜は唖然としていて、エヴァ達は口を押さえながら笑いを堪えていた。まあ、あの話を聞けば笑いそうになるのも無理はない。

「踊り子……プッ……」
「良い歳してあれはないだろ……」

 エヴァ達が必死でコルディの行動に堪える中、アンジェリックは彼女達に対して話を続ける。

「事実よ。それに私はミュージシャンになる夢があるし、自身の才能を潰してしまうなんて事は嫌なの。やるなら成長させて精一杯夢を目指したい」
「そうなの……でも、シスターコルディは今、あなたを心配しているのよ。今、孤児達が増えて大変らしいの」
「えっ!?孤児達が増えた!?まさかそんな事になっているなんて……」

 マリーは心配そうな表情で孤児院の現状を説明し、アンジェリックは驚きを隠せなかった。
 革命によって孤児達が続出し、今では十四人に増えている。ノア達も面倒を手伝いながら見ているので、彼等だけでは倒れるのも時間の問題だ。
 アンジェリックが信じられない表情をしてしまうのも無理なく、ヒカリ達が更に話を付け加える。

「本当なら私達も手伝いたいけど、零夜君が許してくれないの」
「おまけに私達はアークスレイヤーを倒さなくてはならない使命を持っているし、世話させろと言っても無理だからね」

 ヒカリと倫子は零夜をジト目で見ながらアンジェリックに説明し、アミリス達も彼に対して頬を膨らましながら訴えていた。
 ロベリアの孤児院がピンチだというのに、零夜は戦士達の自覚を持っているのでそれを優先としている。子供達の面倒を見ている暇なんてなく、それにヒカリ達は不満を持っているのだ。

「お前等が選ばれし戦士達の自覚がないからそう言えるんだ!少しは自覚しろ!」

 零夜は赤面しながら反論するが、ミミ達は聞いていない。話を横に流しているので馬の耳に念仏だ。

「零夜は頭固すぎ。もう少し子供達の事を考えないと」
「職員さんを増やすまでは私達で面倒を見ましょう」
「ロベリアに永住するつもりか!」
「プッ……ハハハ!」
「「「?」」」

 零夜達はギャーギャー言いながら漫才風のやり取りをしてしまい、それを見ていたアンジェリックは思わず笑ってしまう。それを見た零夜達は疑問に感じながら、彼女に視線を移していた。

「ごめんなさい。なんか面白おかしくて……」
「いつもの事だけどな……」

 アンジェリックは笑いながら謝罪し、零夜達は苦笑いしてしまう。彼はミミ達の我儘な行動に振り回されている事が時々あるので、いつも苦労しているのだ。
 するとアンジェリックは新たな決意を固め、そのまま立ち上がって前を向く。

「私、すぐに孤児院に戻らないと!お祖母ちゃんに謝りたいし、ノア達に迷惑を掛けている。今すぐにでも戻らないと!」
「そうだな。けど……そう簡単には帰れないかもな」

 アンジェリックの決意に零夜達は賛同するが、彼は視線を凝らして周りを見た途端……ジャコバンズの党員達が姿を現したのだ。その数は五十人ぐらいだが、零夜達に近付いて戦う構えに入ろうとしている。対する彼等も戦闘態勢に入り、敵を睨みつけ始める。
 緊迫した空気の中、戦いは既に始まりを告げようとしているのだ。

「結局こうなるな……戦いの始まりだ!」
「「「おう!」」」

 零夜の合図と同時にミミ達は一斉に応えた直後、ジャコバンズとの戦いに立ち向かった。
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