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第二章 隠されたホムラの陰謀

第六十話 もう一人のシルバーウルフ

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 領主一家との戦いが終わった後、零夜達はホムラ騎士団へと帰還。アルフレッドは集中治療室へと運ばれ、グレゴリー達は牢獄へと入れられた。
 零夜達は騎士団の建物前でヒミカと話をしていて、今回の件を振り返っていた。

「戦いの後に領主一家の家宅捜索をしたが、やはり違法品や麻薬栽培などが隠されていた。こうなると言い逃れはできず、王都に移送されて裁判を受ける事になる」

 ヒミカからの話に零夜達は納得の表情をしつつ、真剣に頷いていた。これだけ多くの証拠が残されていたら起訴されるのも無理はなく、大人しく刑罰を受けなければならないと感じている。
 まさに自業自得というよりは因果応報であり、あの親子は重罪となるのは確定だ。

「救出された女性達に関しては家族や関係者の元に送られ、涙を流しながら再会を喜んでいた」
「けど、心の傷はまだ残っているからね……」

 ヒミカは救出された女性達についても話をしていて、ヒカリは俯きながら心配の表情をしていた。
 彼女達は救出されても、アルフレッドによってやられた傷はまだ残っている。その為、しばらくは心のケアが必要になるので、完全回復は時間が掛かりそうだ。
 それによって関係者や家族がアルフレッドに対してまだ怒りを募らせている為、殴り込みに向かうのも時間の問題だと言える。
 するとトラマツはすぐにバングルからウインドウを召喚したと同時に、ホムラの街と周辺のマップが画面に映される。すると次の目的地であるホムラ支部基地の場所が赤く点滅していて、領主のいた屋敷は黒く潰されているのだ。

「これで残るはべムール率いるホムラ支部基地となった。奴等は協力者までやられた以上、僕達に対して宣戦布告をする可能性がある」
「何れにしても戦うのは決まっているが、その事については問題なく対処できる。皆もそうだよな」

 トラマツの推測とアカヤマの呼びかけに、零夜達は冷静にコクリと頷く。彼等はアークスレイヤーを倒す役目を背負っている以上、この宿命は最後までやり遂げる覚悟がある。更にべムールのこれまでの悪事は判明されている以上、黙ってはいられないだろう。
 ミミ、キララ、ジェニーの三人も同意しながら頷き、零夜達と共に戦う覚悟で決意を固めていた。

「ここまで来た以上はやるしかありません!」
「私も覚悟は決めているわ!」
「私も戦います!」

 ルリカ達の決意に全員が真剣な表情で頷いたその時、一匹のシルバーウルフが彼等の前に姿を現した。
 その姿はパーカーとジーンズを着用していて、年齢は零夜達と同じぐらいだ。

「あなたは?」
「俺はバルク。エヴァさんの後輩で格闘家をしています」
「バルク……もしかして君がそうなのか!?」

 バルクの自己紹介にヒューゴ達が反応し、彼等は集まって再会を喜びあう。これでヒューゴ達のチームは一人増えてあと三人となったのだ。

「まさかここで会うなんて驚いたわ!」
「ええ。故郷が襲われた事は聞いたっす!女性達は無事で良かったけど、村の皆を殺したのは許せないっす……!」

 バルクは俯きながら悔しそうに拳を震わせ、ヒューゴ達も同様にアークスレイヤーに対して怒りを感じていた。自身達が早く向かえばこんな展開にはならずに済んだと思っているが、後悔先に役立たずである。
 しかしバルクは前を向いたと同時に、仲間達に笑顔で視線を移す。

「けど、エヴァさん達がお墓を建てられたのを確認して駆け付けたっすけど、まさかヒューゴ達と出会えるなんて驚いたっす」
「おいも同じでごわす。こげん偶然もあっとはたまがったな」

 バルクの話にガンテツも頷きながら笑顔で同意する中、エヴァが彼に近付いて安堵の表情を見せる。シルバーウルフの男性は滅亡したかと思ったが、一人生き残っていて本当に良かったと感じているのだ。

「バルク、あなたが無事で良かったわ……」

 エヴァは涙目でバルクの無事を喜ぶ中、彼は真剣な表情で彼女の方を向く。何かあったのだろうか気になるが、全員で話を聞く事にした。
 
「ええ。実は大変な事が起きたっす。しかも重大な事が」
「何かあったのか?」

 バルクの説明に零夜は真剣な表情で疑問に感じ、ミミ達も同様に彼の説明を聞き始める。

「べムールがこれまでの作戦をぶち壊してくれた怒りで、このホムラを滅ぼそうと企んでいるッス!!」
「「「!?」」」

 バルクからの真剣な表情での衝撃説明に、零夜達だけでなく、この場にいる全員が驚きを隠せずにいた。しかし、ヒミカは冷静な表情をしながら推測をしていて、何故こうなったのかまとめていた。

「恐らく奴等は自身の作戦を台無しにされた怒りで、この作戦を決行したに違いない。その狙いは明らかにお前達だ」

 ヒミカが冷静に零夜達を指さしながら説明し、その内容を聞いた彼等は冷静に判断し始める。確かにベイブ、ルシア、グレゴリー領主親子を倒した以上、ベムールが怒るのも無理もない。更に騎士団まで潰された以上は後がないと感じた為、この様な作戦を考えたのだ。
 まさに一か八かの作戦であり、彼にとってのラストチャンスでもあるだろう。

「べムールが動き出した以上、戦うしかないな。バルク、奴等はいつ動き出す?」
「明日ッス!」
「了解。だったらその前に攻め込めばこっちの物だ!」

 バルクの話を聞いた零夜は納得の表情をし、すぐに腕を鳴らしながらウォーミングアップを始める。ジャンプ、ストレッチ、筋トレを行った後、シャドートレーニングを行って調整する。零夜はいつもこのウォーミングアップを毎日欠かさず行っていて、今の様な強い身体となっているのだ。
 ウォーミングアップを終えた零夜は深呼吸をした後、真剣な表情をしながら全員の方を向く。

「奴は領主親子と手を組んだり、エヴァの故郷を滅茶苦茶にした。今度はホムラを目茶苦茶にするつもりなら、先手必勝で攻めるしかない!」
「私達も覚悟はできているわ!やるからには倒しに行くわよ!」
「「「おう!」」」

 零夜は拳を打ち鳴らして気合を入れ、ホムラを守る為にもべムールを倒す事を決断。エヴァも同様に頷きながら応え、ミミ達も拳を上げながら決意を固めていた。
 零夜達は最後まで諦めない覚悟がある為、どんなピンチの時でも最後まで立ち向かう事が出来るのだ。

「僕等も放ってはいけないからね。奴等が襲撃する前に攻め込めばこっちの物だ!」
「その方がホムラへの襲撃を未然に防げるし、アークスレイヤーのアジトも減らして一石二鳥だ」

 トラマツとノースマンも全身全霊でべムールと戦う事を決断する中、アカヤマは真剣な表情でバングルを起動させてウインドウを召喚する。同時にウインドウの画面には、今海のターゲットであるべムールの画像が映し出された。

「ボスの名はべムール。残虐非道で鞭を使って攻撃するが、闇の魔術も使うのでかなり手強いぞ」
「闇となると光がカギか……幸い光の魔法は覚えているけど、油断は禁物ね」

 アカヤマはウインドウの画面に映っているべムールについて説明し、アミリス達は真剣な表情で考えていた。
 べムールは説明の通り闇の魔術を使うのが主である。しかし、支部基地の隊長といえども、その強さはこれまでの敵とは一味違う。実力も一人前と呼べる強さは勿論、隠された能力もあるので油断禁物は確定となるだろう。

「何れにしても、零夜達は戦う覚悟を決めている。僕等も共に戦うよ!」
「ええ!私達も協力します!」
「やるからには覚悟決めておかないとね!」
「だな!」

 ヒューゴ達もべムールと戦う事を決断し、零夜達も勿論承諾しながら頷く。これで選ばれし戦士達全員がべムールのアジトに向かう事になり、こちらから攻め込んで滅ぼす作戦が確定的となった。

「私はこのホムラを守る義務がある。頼んだぞ、戦士達よ!」
「任せてください!必ず倒しに向かいます!」

 ヒミカからのエールに、ジャンヌが代表して真剣な表情で応える。この戦いこそホムラの運命を決める大事な戦いであるからこそ、責任は重大なのは確定。更に全員が生き残って帰る必要もある為、プレッシャーが強くなってしまうのは無理もないだろう。

「時間も惜しい。すぐに向かうぞ!」

 トラマツの合図と同時に彼等はホムラ支部基地へと駆け出していき、ホムラを巡る戦いも最終決戦へと突入したのだった。
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