上 下
38 / 277
第一章 戦士達の集結

第三十六話 皆と出会えた奇跡

しおりを挟む
 ホムラの街の近くに、黒い和風のお城がある。それこそアークスレイヤーホムラ支部のアジトだ。
 その中にある会議室では緊急会議が行われていて、三人の幹部達が話し合いをしていた。彼等は黒い軍人の服を着ていて、モヒカン、短髪、赤いアフロという髪型だった。

「ボルグレンがやられてしまったようだ。まあ、あいつは俺達ホムラ支部四天王の中でも一番下だからな……」

 ホムラ支部副支部長である短髪のマルセルの発言に、他の二人の幹部達もコクリと頷く。ボルグレンは普通の人間なので魔法などが使える闇の指輪を与えていたが、指輪をキララに奪われた事でノースマンに殺されてしまった。
 その結果、ボルグレンはその程度の人間という事を評価せざるを得なくなったのだ。

「恐らく奴等はホムラを目指しているのは確定である以上、迎え撃つのみだ。」
「そうだ。それにホムラには協力者もいる。後は彼等にも援助をする必要があるだろう」

 モヒカン男のルシア、アフロのベイブの意見にマルセルも真剣な表情で頷いたその時、ウインドウの画面が突然映りだす。そこには貴族の服を着た中年の男が姿を現す。頭の天辺は既に禿げて周りに髪が残っている状態だ。

「べムール様!」

 マルセルの叫びにルシアとベイブも真剣な表情で一礼し、画面越しのべムールはコクリと頷く。

『今回のボルグレンについての事だが、闇の魔道具を与えたにも関わらず敗れてしまうとは……やはり彼を幹部にしたのは間違いだったな』
「ええ。我等ホムラ四天王の恥晒しですよ」

 べムールは苦虫を噛み潰したような表情をしながら、ボルグレンを幹部にした事を後悔していた。マルセル達もボルグレンの事を批判していて、恥晒しだと本心を露わにしていた。
 ボルグレンが一般人で魔道具に頼り過ぎていたからこそ、こうなるのも無理なかった。

『で、選ばれし戦士達はホムラへ向かっているのか』
「はい。勇者ヒューゴ一味は勿論ですが、最近活躍が目立ってきている零夜一味もいます。ボルグレンも彼等によって倒されました」

 ルシアからの真剣な報告に、べムールは眉をひそめながらも真剣な表情で聞いていた。
 ヒューゴ達の事は知っているが、零夜達の事は全然知らずにいた。新参者がボルグレンを倒す事はあり得ないと感じていたし、まだまだ知らない事が沢山あるのも無理ないだろう。

『そうか……それにしても零夜一味か……奴等は必ずホムラに向かうだろう……』

 べムールは真剣な表情をしながらどうするか考え始め、マルセル達も真剣な表情をしながら見守っていた。
 それから一分後、べムールは真剣な表情で今後の計画を決めたと同時に、マルセル達に伝え始める。

『今後の計画について話すぞ。まずマルセルはこのホムラ支部を守る事に専念。お前の統率力なら基地を守る事が出来る』
「必ずやご期待に応えてみせましょう」

 マルセルはホムラ支部基地を守る事になり、彼は承諾しながら一礼する。
 マルセルは兵士達をまとめる統率力が売りなので、基地の守りに関しては彼の方が適任である。その為、副支部長に任命されたのも無理なかった。

『ルシアについてはホムラに向かえ。そこには協力者がいるので彼等と共に行動してくれ』
「承知!」

 ルシアはホムラへと向かう事になり、彼も同様に承諾する。
 ルシアは外部との交渉を得意としている暗殺者であり、その交渉力で協力者を得たのは見事としか言えないだろう。

『ベイブについては侵略活動だ。我々に抵抗するシルバーウルフの村に向かい、襲撃活動を行う様に。また、若い女性の奴隷に関しては連行しておく事も忘れるな。因みに三十九歳以下なら大丈夫だが、ブスやデブは駄目だからな』
「無茶苦茶な注文ですが、やってみましょう」

 ベイブは侵略専門の幹部であり、今回の任務も承諾する。しかし、べムールの無茶な内容については心の中で唖然としているのも無理なく、苦笑いしながらも承諾せざるを得なかったのだろう。
 因みにアークスレイヤーでの奴隷の基準に関しては、十三歳以上三十九歳以下。美人や可愛いのは大丈夫だが、ブスやデブは駄目という厳しい決まりがある。間違えてブスやデブを連れてきたら、彼女達だけでなく、連れてきた本人も殺される厳しい掟があるのだ。

『これで会議は終了だ。各自それぞれの任務に取り掛かれ!』
「「「はっ!」」」

 べムールの合図と共に会議は終了し、ウインドウはそのまま切られる。マルセル達はべムールの指示に従いながら、それぞれの持ち場に移動し始めた。



 それから翌日、零夜達はヘンダル鉱山から出発する事になった。アークスレイヤーを倒す為にも戦士達に休息はなく、すぐに行かなければアークスレイヤーによって村や街などに被害が起きてしまうからだ。

「もう行くのか。ゆっくりすれば良いのに」
「いや、ここで休むわけにはいかないからな。倒さなければいけない奴等もいるし」

 ドワーフの声掛けに零夜は苦笑いしながらも応える。倒さなければならないアークスレイヤーの基地があるので、ここで止まる事は許されないからだ。
 すると、零夜とミミのパートナーであるルリカとキララが駆け寄ってきた。ルリカの衣装は白いへそ出しチューブトップと青いデニムオーバーオール、キララはピンク色のキャミソールとサスペンダー付属のデニムカーゴジーンズを着用。この衣装こそ彼女達の本来の姿であり、本人が一番好きな服装でもあるのだ。

「零夜様。準備はできました!何時でも出発できます!」
「早くしないとホムラに着くのが遅くなるからね」
「そうだな……そろそろ行くか!」

 零夜の合図と同時に全員が頷き、彼等はヘンダル鉱山から立ち去ってホムラへと向かい出した。

「「「元気でなー!」」」

 ドワーフ達は旅立つ零夜達にエールを送り、それに彼は拳を上げながら応えていた。



 ヘンダル鉱山を出た零夜達は、トラマツの案内でそのままホムラへと向かっていた。すると、零夜は雲一つ無い青空を見上げながら歩いていた。

「零夜、どうしたんだい?」

 ヒューゴは零夜の様子が気になって彼の方を向き、零夜は笑みを浮かべながらヒューゴに視線を移す。

「俺、この世界に来て良かったと思っているんだ。今までは普通にプロレスラーを目指していたけど、メディア様やトラマツ達と出会ってから、選ばれし戦士としての毎日が楽しく感じている」

 零夜の話にヒューゴだけでなく、ミミ達も立ち止まって彼に視線を向けながら話を聞き始める。どうやら零夜が突然立ち止まった事が気になっていたのだろう。

「もし、そうでなければ今の俺はいなかったし、ヒューゴ達も出会わなかった。だからこそ、この感謝の気持を忘れずに旅を続けたい。皆に出会えた事が奇跡だという事を!」

 零夜の飛び切りの笑顔にヒューゴも微笑み、彼の肩に手を置く。

「僕も同じだよ。零夜達と出会ってから良き友であり、ライバルができた。君とは切磋琢磨せっさたくましながら頑張っていきたい。これからも宜しく頼む!」
「おう!」

 零夜とヒューゴは握手を交わし、この光景にトラマツ達もウンウン頷き、ミミ達は笑みを浮かべていた。

「さっ、無駄話はそこまでだ。ホムラまでもう少し!頑張っていくぞ!」
「「「おう!」」」

 トラマツの合図と同時に、零夜達は急いでホムラへと再び歩み始めた。彼等の物語はまだまだ始まったばかり。雲一つない青空が広がっていて、太陽が彼等を照らしていたのだった。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【R18】異世界なら彼女の母親とラブラブでもいいよね!

SoftCareer
ファンタジー
幼なじみの彼女の母親と二人っきりで、期せずして異世界に飛ばされてしまった主人公が、 帰還の方法を模索しながら、その母親や異世界の人達との絆を深めていくというストーリーです。 性的描写のガイドラインに抵触してカクヨムから、R-18のミッドナイトノベルズに引っ越して、 お陰様で好評をいただきましたので、こちらにもお世話になれればとやって参りました。 (こちらとミッドナイトノベルズでの同時掲載です)

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった

ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」  15歳の春。  念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。 「隊長とか面倒くさいんですけど」  S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは…… 「部下は美女揃いだぞ?」 「やらせていただきます!」  こうして俺は仕方なく隊長となった。  渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。  女騎士二人は17歳。  もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。   「あの……みんな年上なんですが」 「だが美人揃いだぞ?」 「がんばります!」  とは言ったものの。  俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?  と思っていた翌日の朝。  実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた! ★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。 ※2023年11月25日に書籍が発売!  イラストレーターはiltusa先生です! ※コミカライズも進行中!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

処理中です...