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第一章 戦士達の集結

第三十一話 奴隷の真実

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「ここにいる奴隷達が……滅ぼされた世界の出身だなんて……」
「信じられない……事実なのかしら……」

 零夜から発せられた衝撃の真実に、ミミ達は信じられない表情でいた。囚われた女性達が滅ぼされた世界の出身だという事は分かるが、まさか各世界の主人公の仲間達である事は驚くのも無理ないのだ。

「紛れもない事実だ。アークスレイヤーの奴等は自ら滅ぼした世界のヒロイン達を奴隷にして、酒池肉林しゅちにくりんを築こうとしている」
「トラマツの言う通りだ。俺も彼奴等のやり方には賛同できない……!」

 トラマツとノースマンは意見を述べるが、その表情はアークスレイヤーに対しての怒りを込めていた。彼等の外道な行動は卑劣にしか過ぎず、自身の野望の為なら邪魔する奴は始末する。たとえどの様な手段を使っても構わない精神が強いに違いない。

「ああ……俺はハーレムを築こうとしたり、仲間を身代わりにしたりする奴等は大嫌いだからな。奴等にはトラウマを植え付けながら殺すのみだ……!」

 零夜はギロリと目を光らせ、憎しみのオーラを一気に放出してしまう。アークスレイヤーだけでなく、理不尽な行動をする者まで怒りを込めていた。選ばれし戦士達になる前は我慢できていたが、今では力を得た以上、徹底的に始末しようと考えている。
 それを見たミミはすぐに彼に近付き、その額にデコピンを当てる。

「痛っ!」
「何馬鹿な事を言ってんのよ。そう言うアンタも同じでしょ」
「う……ミミ姉に言われちゃ逆らえないや……」

 ミミからの真剣な指摘に零夜はがっくりと項垂れるが、彼女はすぐに優しく彼の頭を撫でる。

「でも、私達の事を思ってくれているのは嬉しいと思うわ。仲間を大切にする心、自ら先陣に立つ勇気、何事も諦めない覚悟が零夜にはある。私達はあなたの様になりたいからね」

 ミミの優しい笑みに、零夜は思わず照れ臭そうに頬を掻いてしまう。一緒にいてくれる幼馴染がいるからこそ、今の彼がいるのだ。
 その事に感謝しつつ、零夜はミミをぎゅっと抱き締める。
 
「ミミ姉……何から何まで悪いな……」
「気にしないの。だって私は零夜のパートナーなんだから!さっ、奴隷を解放させないと!」

 ミミの合図に倫子達も笑顔で頷き、囚われの奴隷女性達の解放に取り掛かる。彼女達はすぐにミミ達に近付き、バラバラにならないように一塊になり始める。

「まずは奴隷紋だけど、身体には付いている?」
「右の手の甲です」

 奴隷女性達は手の甲に刻まれている奴隷紋をミミ達に見せる。手の甲に刻まれているのは紛れもなく奴隷紋であり、それをミミ達は確認をしていく。

「なるほど……私の光の魔術なら消せますよ」
「本当なの?」

 ジャンヌは確認した後に手を挙げながら自身の意見を述べ、ミミ達は疑問に感じながら一斉に彼女の方に視線を移す。

「ええ。アークスレイヤーの奴隷紋は闇属性。私の光の魔術なら打ち消せます!」

 ジャンヌは両手を合わせながら神経を集中し始め、そのまま光の魔術を発動させたと同時に、奴隷達の奴隷紋を打ち消し始める。

「邪悪なる紋章よ。光の魔術で消え給え。ホーリーマジック!」

 すると光の魔術によって奴隷紋は次々と塵となって消滅し、綺麗さっぱり無くなった。
 それと同時に奴隷達は自由の身になる事ができ、彼女達は嬉しそうな表情を浮かべながら喜びを分かち合っていた。

「はい。これで大丈夫!」
「「「ありがとうございます!」」」

 奴隷女性達が笑みを浮かべながらジャンヌに一礼をしたその時、扉が乱暴に開かれる。その様子だとどうやら敵が来たようだ。

「何者だ?」

 零夜達が真剣な表情で扉の方を向くと、そこにはナマハゲが扉の前に立っていてズンズンと中に入ってきた。その表情は冷静となっていたが、心の中では怒りに震えている。どうやら奴隷部屋を勝手に開けられた事について怒っているのだろう。

「奴隷部屋が開かれていると思ったら、こういう事だったのか……」

 ナマハゲはこの状況を見て、奴隷達が既に解放されている事を悟っていた。それを知ったナマハゲは怒りに震えるのも無理はなく、ボキボキと腕を鳴らし始めながら殺気を漂わせ始める。

「お前がボルグレンなのか?」
「違うな。俺はオーガ族のナマハゲ!ボルグレン様の幹部の一人だ!」

 ナマハゲは自己紹介をしたと同時に、すぐに戦闘態勢に入り始める。その手には金棒が握られていて、重さは百トンぐらいあるだろう。
 ナマハゲは怪力である為、どんな物でも持ち上げられる。手にしている百トンの金棒も余裕で持ち上げられるのが証拠だ。

「幹部の一人と遭遇するとはね……けど、ここで倒さなければボルグレンを倒す事は難しくなるわ!」
「相手が誰であろうとも負けられないし、絶対に倒してやるんだから!」

 ヒカリとアミリスが気合を入れて戦闘態勢に入り、倫子達も後に続いて武器を構える。それを見たナマハゲは金棒を振り回し始め、すぐに彼女達に襲い掛かる。

「悪い子はいねがァァァァァ!」
「躱せ!」

 ナマハゲは金棒をブンブン振り回しながら倫子達に襲い掛かるが、零夜の合図と同時に彼女達は素早い動きで次々と回避していく。
 奴隷達は邪魔にならないよう隅っこで待機していて、トラマツとノースマンが彼女達の前に立って守り通しているのだ。

「まるで本物のなまはげ其の物じゃねーか!アンタの喋り方、やっぱりなまはげだよ!」
「うるせー!この方が俺にピッタリ合うんだよ!」
「逆に本物のなまはげにやられてしまえ!」

 零夜のツッコミにナマハゲは反論し始め、そこからアホらしい口論へと変わってしまう。さっきの戦闘シーンから一変してしまい、唖然としたギャグ展開に皆が呆れるのも無理ないのだ。

「まあ、この件についてはしょうがないと思ったけどね……」
「うん。私もそう思った」

 ミミと倫子が唖然とした表情でポカンと見つめている中、ナマハゲは我慢できずに金棒を振り回し、それを零夜に向かって投げ飛ばした。

「させないわ!」

 しかし、エヴァが金棒の柄を片手でキャッチし、そのままブンブンと振り回して床に置いた。
 今の彼女の目は真剣な表情をしていて、そのままコツコツとナマハゲに立ち向かう。

「まさかお前が金棒を止めるとは驚いたな。やる気か?」
「ええ。力なら私だって負けないからね。覚悟しなさい!」

 エヴァは腕を鳴らしたと同時に格闘技の構えに入り、ナマハゲも同様にレスリングの構えに入る。どうやら武器を使わずに拳を使っての戦いに切り替える様だ。
 両者は間合いを取ったままジリジリと円を描くように移動し、真剣な表情で獲物を狙う目をしている。いつ飛び出してもおかしくないだろう。

「この戦いはどちらが勝ってもおかしくない。上手く勝てば良いのだけど……」

 ミミが心配そうな表情をしながら二人の戦いを見つめる中、お互い飛び出したと同時に激しい殴り合いが始まった。
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