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第一章 戦士達の集結

第二十八話 鉱山を守る戦いへ

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「う……」

 ハプニングから数分後、零夜がゆっくりと目を覚ましたと同時に、ミミ達が彼の顔を覗き込む。
 あの後、零夜は失神したままエヴァによって休憩室に運ばれ、彼女達によって看病されていたのだ。

「目が覚めたけど、大丈夫?」
「なんとかな……」
 
 零夜は起き上がって辺りを見回した後、すぐにベッドから降りて立ち上がった。

「うう……まさかあのキスで失神してしまうなんて情けないぜ……」

 零夜が倫子にキスをされて失神した事に項垂れた直後、彼女とミミが彼の下に駆け寄ってきた。

「ごめんね、零夜君。こうなる事は知らなかったの」
「いや……大した事は無いのですが……」

 倫子の謝罪に零夜が苦笑いで返す中、ミミがよしよしと彼の頭を撫で始める。零夜にとっては災難としか言えないのも無理ないだろう。

「零夜はこの様な事が苦手だし、私達で耐性をつけておかないとね。あと……私も零夜にキスをしたから……」
「いつの間にしたのか!?」

 ミミの赤面しながらの告白に零夜は驚きを隠せずにいた。まさか失神している時にキスをされたのは予想外であり、零夜はため息をつくしかなかった。

「まさか二度もされるとは驚いたけど、ここで倒れる理由にもいかないからな」

 零夜は気を切り替えた後に頬を叩き、倫子に真剣な表情で視線を移す。

「倫子さん、もう一本お願いします!俺……このままでは彼奴等に勝てない……何としてでも強くなりたいんです!」

 零夜は真剣な表情で倫子にお願いするが、彼女は彼を抱き締めてポンポンと背中を叩き始める。

「今日は駄目。あの後、キスによって気絶していたし、まだ戦いの疲れも残っているでしょ?」
「言われてみれば……まだまだ修行が足りないな……」

 倫子からの指摘に零夜はがっくりと項垂れてしまい、エヴァ達は苦笑いしながら笑っていた。途中までは良かったが、キスを受けて失神してしまう様ではまだまだと言える。
 更に戦いの疲れもある為、また倒れてしまったらどう責任を取るつもりなのかと言われるのも無理はない。

「分かりました……でも、耐性をつけるにはどうすれば良いのですか?」

 零夜からの質問にミミはある事をピンと思いつき、そのまま説明を始める。

「零夜はスキンシップが足りないから、まずはそこから始めた方が良いと思うわ」
「スキンシップ……?まさか……」

 零夜が危機感を感じたその時、倫子は彼を後ろに回して自身の身体を押し付ける。それと同時にミミが彼に近付き、そのままギューッと抱き締めてサンドイッチ状態にしてしまった。
 普通の男性にしては羨ましいと言えるが、零夜にとっては地獄としか思えない。

「零夜!耐えている?」
「いや、これは流石に……うう……」

 ミミの呼びかけに零夜は顔を少し赤くしながらも応えるが、恥ずかしさのあまり赤面してしまう事態となっていた。
 いきなりこんな事をされたら赤面したりするか、興奮して襲い掛かるのどちらかになる。因みに零夜は赤面するタイプだ。

「まだまだこれからよ!気合い入れて!」
「へ?まさか!?」

 更にヒカリ、エヴァ、アミリス、ソニア、ジャンヌも後に続いて零夜を抱き締めまくり、彼はますます赤面してしまう事態となってしまう。

「しっかりしろ、零夜!お前ならできる!」
「だからこそ、挫けたら駄目!」
「私達はあなたを信じています!だから耐えてください!」

 ソニア、アミリス、ジャンヌからのエールを受けた零夜は、心の中で自身の今の状況を感じ始める。それと同時に自身に何ができるのか考え始めた。

・自身の頑張りによって皆がやる気になってくれる
・自身がいるからこそ皆を導ける
・アークスレイヤーを倒す為にどんな困難でも乗り越える

 三つのできる事を思い出した零夜は真剣な表情で前を向き、すぐに皆をギュッと抱き締めた。

「という事は……もう大丈夫なの?」

 零夜の突然の行動が気になったエヴァの質問に、彼は笑顔でコクリと頷いた。
 その様子だと完全に克服できたという事だ。

「一時はどうなる事かと思ったけど……本当に良かった!」

 ミミは嬉しさで涙を流しながら零夜を抱き締め、その様子を見たヒカリは優しく彼女の頭を撫で始める。
 エヴァ達もホッとした表情で喜んでいて、零夜は彼女達に視線を移す。

「迷惑をかけてすいませんでした。俺、もう大丈夫です!明日からの訓練も集中して取り組む事ができます!」

 零夜は皆に謝罪をした後、自身が訓練に参加できる事をアピールしながら伝える。女性に抱き締められたり、キスされたりすると赤面してしまう事態を乗り越えた以上、失神してしまう事態は二度とないだろう。

「それなら大丈夫やね。明日は休んだ分頑張ろう!」
「はい!」

 倫子の笑顔に零夜も笑顔で返しながら応え、その様子にミミ達も釣られて微笑んでいた。
 その様子を扉越しからトラマツとノースマンが見ていて、今の状況を見ながらホッとしていた。

「まさか零夜が弱点を克服するとはな」
「しかし、今後はどの様に成長するかだな」
「そうだな……にしても、キスされるなんて驚いたな……当分この災難は続きそうだ……」

 トラマツは零夜達が笑い合う姿を見ながら、キスの事で思わず苦笑いしてしまった。今後もこの様なハプニングが続くだろうと思いながら……



 それから一週間後の当日。ヘンダル鉱山の中にある採掘場ではドワーフ達とヒューゴ達が話をしていた。どうやら鉱山を守る事についての話をしていたのだろう。

「すまないな。わし等の鉱山を守る為に協力してくれるとは」
「いえいえ。フルーラ基地を攻めるのは零夜達の役目ですが、僕等はこの鉱山を守る事に専念します!」

 ヒューゴの宣言に紬達が頷く中、クロエが零夜達がまだこの場所に来ていない事に気付く。

「そう言えば零夜達は修行していたけど、どうなったのかしら?」
「彼奴等の事だ。もしかすると前より強く……おっ!来たか!」

 タカゾウの視線の先には、修業を終えてボロボロ姿の零夜達が歩きながら姿を現した。身体中には傷ができていて、服も汚れているのが目に映っている。その姿こそ、修行をすべて終える事ができたという証だ。
 その姿を見たヒューゴ達は、すぐに彼等の元に駆け寄っていく。

「その様子だと……成功したみたいだね」
「ああ……お陰でレベルは20ぐらいに上がっている」
「おお!そこまでやっとはたまがったぞ!」

 零夜の話にガンテツは感心し、ドワーフ達も驚きの声を上げる。僅か一週間でここまで成長する事ができたのは異例で、まさに神童というべきだろう。
 零夜達は自力で傷を治した後、ヒューゴ達に視線を移す。

「零夜……奴等と戦う覚悟はできているな」
「ああ……俺達の手でフルーラ基地を破壊する!行くぞ!」
「「「おう!」」」

 零夜、ミミ、倫子、ヒカリ、エヴァ、アミリス、ソニア、ジャンヌ、トラマツ、ノースマンの八人と二匹はフルーラ基地への破壊に向かい出し、ヒューゴ達は彼等の後ろ姿を見ながら見送っていた。

「基地は彼等が何とかしてくれるが、僕達は襲撃に備えてこの鉱山を守らないと」
「ええ。何れにしても油断は禁物ですからね!」
「その通りだ。アークスレイヤーは何をするか分からねえからな。中には変な奴もいるからな」
(アンタが言っても説得力ないけどね……)

 タカゾウが真面目な事を言うが、クロエが心の中でツッコむのも無理なかった。それと同時にヘンデル鉱山を守る最大の戦いが幕を開いたのだった。
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