ブレイブエイト〜異世界八犬伝伝説〜

第二章 追放奴隷のシルバーウルフ

第５７話 ギルドからの処罰

　その後、零夜はクエストを続行し、サンベルクの森にいたモンスター娘の二人を手に入れた。この辺りにいるモンスター娘はこれで全部の為、クエストは成功を収めた。
　しかしその代償として倫子とエヴァが嫉妬で頬を膨らましてしまい、その罰として今日一日二人のお世話をする羽目になってしまったのだった。

　※

「なるほど。この三人がですね」

　ギルドに戻った零夜達は、事の全てをメリアに話す。それに彼女も納得の表情をしながら、ハイン達を睨みつける。彼等は零夜達によって縛られていて、身動きできない状態だ。
　罪状については零夜とアイリンから全て聞いていて、メリアは真剣な表情でハイン達に視線を移す。それに彼等は大量の冷や汗を流し、ゴクリと息を飲んでしまう。

「この世界では奴隷制度は廃止となっていて、それにも関わらず続けていた事は重罪に値します。関連した者達も重大な処罰を受けなければなりません」

　メリアは真剣な表情で奴隷制度の廃止を説明し、それにこの場にいる誰もが真剣な表情をしてしまう。しかしハイン達に関しては冷や汗を流していて、これから起きる不幸に不安を感じるしか無かった。

「そしてギルド管理協会でも、奴隷に関しては一切受け付けていません。クエストを引き受けたりした者達や、偉い人からの頼みで引き受けても、重罪となってしまいます！」

　更にギルドでも奴隷に関しては受け付けてない事が発覚し、それに零夜達は驚いてしまう。ギルド内でも奴隷に関しては重罪は勿論、厳しいルールも制限されている。その決まりがあるからこそ、今のギルドが成り立つのだ。
　アイリンに関しては前から聞いているので、頷きながら応えている。ヤツフサも冷静な表情をしながら、真剣に話を聞いているのだ。

「今回の件はエヴァさんは被害者。ルイザさんはエヴァさんの件に関しては重罪ですが、奴隷にされそうになった被害者でもあります」

　ルイザは息を呑みながら、判決の行方を見守り始める。自分は罪を償う為に懸命にやったが、少しでも罪を減らして欲しいと懇願しているのだ。
　勿論エヴァもルイザの罪を軽くして欲しいと願っていて、マツリは彼女の肩に手を置きながら見守っていた。

「被害者への謝罪と和解。更には情報提供をしてくれた実績がある事を判明。更にハイン達と縁を切ったので、無罪となります！」
「ありがとうございます！」

　メリアの笑顔の判決結果に、ルイザは涙を流しながら喜んでいた。それにエヴァも目に涙を浮かべながら笑顔を見せていて、マツリ達も微笑んでいたのだ。
　ルイザが自ら罪を償う為に行動した事が評価され、無罪で済む事ができた。今後彼女は同じ過ちを犯さないように、真剣に取り組んでいくだろう。
　残すはハイン達の判決。どう考えても重罪は免れない。奴隷に関する事をしていたので、責任逃れは不可能。八方塞がりの状態の中、メリアから判決が下されようとしていた。

「ハイン、クルーザ、ザギルの三人の犯行は、所属ギルドにも伝えました。そしてギルドマスターであるフェルネ様からの判決は……重罪確定です！」

　更にメリアは真剣な表情で、ハイン達に現実を突きつける判決を言い渡す。彼等は冷や汗を流しながら俯いてしまい、ここまでかと覚悟していたのだ。あれだけ悪い事をすれば、当然の結果が帰るのも無理はない。

「判決内容は……ランク剥奪、所属ギルド追放、所持品全て没収、そして……無期懲役の強制労働となります！」

　メリアからハイン達に向けた判決内容に、誰もが皆ざわつき始めた。無期懲役の強制労働の判決を聞いたとなれば、ざわついてしまうのも無理はない。
　無期懲役の強制労働は、ギルドにおける最大級の刑罰となっている。死ぬよりはマシかも知れないが、そこに待つのは働かされる地獄の日々。しかも無期懲役の為、その日々が死ぬまで続かされてしまうのだ。

「なお、脱走したら即死刑となりますので。これでも不服はありますか？」

　メリアは鬼の様な睨みで、三人に対して質問をする。それに彼等は何も答えず、俯くばかりとなっていた。零夜達に負けた挙句、ギルドからも追放されてしまった。何が間違っていたのか確認しようとしても、後の祭りとしか言えないだろう。

「ありませんね。では、警備隊の皆さん。お願いします」

　メリアの合図と同時に、扉の向こうから数人の警備隊が姿を現す。彼等は項垂れているハイン達を立たせたと同時に、彼等を連れて外へと向かい出した。　
　外には既に護送用の馬車が用意されていて、ハイン達は次々と護送車の中に入っていく。そして鍵が締められたと同時に、馬車はそのまま中央都市であるメルドランへと向かったのだった。

「なお彼等の所持品に関しては、全て警備隊によって没収されます。後日手柄を立てた貴方方に届ける事になりますので」
「ありがとうございます」

　メリアの笑顔の説明に対し、零夜が代表して一礼する。こうしてハイン達S級パーティー「オパールハーツ」は解散となってしまったが、まだ油断はできない。黒幕であるアリウスがいる以上、エヴァとルイザの身に危険が迫っていくのはまだまだ続くだろう。

「これで残りはアリウスか。となると目的はペンデュラスだが、何かアリウスについて分かる事はあるか？」

　零夜はアリウスについて分かる事をエヴァとルイザに質問し、彼女達は何かあるのか考え始める。するとルイザがある事を思い出し、零夜達にその事を話し始める。

「アリウスについてだけど、彼は元はと言えば民に優しかったわ。領主となればこの街も安心して暮らせると思っていたし、誰よりも皆は彼を期待していたの」
「随分人望があったと言う事ね……」

　アリウスはかつて今の性格ではなく、ペンデュラスの街をより良くする為に働く好青年だった。自ら畑仕事に赴いたり、建築作業の指示をしたり、更には街の発展や設備を整えたりするなど、領主として相応しい行動をしていたのだ。
　しかしそのアリウスが、どうして今の性格になったのか気になるのも無理はない。奴隷商がその街にいるのも違和感があるだろう。

「性格が変わっていたのは……一週間前ぐらいね。確か彼が任務でコパールレイクから帰った時……性格が変わっているのを感じたの」
「となると今の性格になっていたのは……コパールレイクに何か秘密があるかも知れないな……」

　エヴァの説明を聞いた零夜は、真剣な表情で考え始める。アリウスが優しい性格から今の性格になったのは、あのコパールレイクに向かったのが原因と考えるだろう。

「明日、コパールレイクに向かおう。その場所に何か秘密があるかも知れない」
「そうね。アリウスが今の性格になったのも、何か原因がある。それを探る為にも調査は欠かせないし、何者かが彼を殺して本人に変装している事もあるからね」

　零夜の提案にアイリンも同意しながら頷き、アリウスの性格改変となる原因の予測をする。本来の彼はコパールレイクの調査をしている時、何者かに襲われ手殺害されてしまった。そして殺した犯人がアリウスに変身し、この街を乗っ取ろうとしている可能性が高いだろう。

「私もこの事については念入りに調べ、真相を明らかにしていきます。また情報が入り次第、迅速に伝えておこうと思いますので」
「分かりました。後はユウユウの仲間達も救うけど、確か何人囚われているんだ？」
「三人がアリウスに囚われているんよ。早く奴を倒して無事に救出せんと！」

　零夜の質問に対し、ユウユウは真剣な表情で正確に応える。そのまま彼女は決意の表情をしながら、三人の仲間を助ける事を決意。それに零夜達も真剣に頷いたのだった。