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第二章 追放奴隷のシルバーウルフ

第51話 恋の行方は大波乱!?

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 零夜達は市場に寄って買い物をした後、そのまま家に帰宅。すぐに皆で夕食の準備に取り掛かる中、マツリがエヴァの手を取って裏庭に移動し始めた。

「何!?何なの!?」

 驚きを隠せないエヴァに対し、マツリは何も言わずに裏庭へと向かう。そのまま目的地に着いた直後、彼女はエヴァの両肩に手を置いた。

「エヴァ、動くとしたらお風呂の後がチャンスよ。ここは零夜に対して積極的にアピールしておかないと!」
「えっ、アピール!?けど、私にそんな自信は……」

 マツリからのアドバイスに対し、エヴァは慌てながら赤面してしまう。彼女はまだ恋愛経験が皆無的に0なので、その自信がない状態。むしろそのまま積極的に挑もうとしても、恥ずかしさで逃げてしまうのだ。

「何言ってるの!その事については私がアドバイスするから!耳を貸しなさい!」
「ふえ?」

 マツリはエヴァの狼の耳に、ボソボソとアドバイスを送る。その内容を聞いたエヴァは驚きを隠せず、思わず赤面してしまった。

「そ、その作戦でやるの!?」
「ええ。後はあなたのやり方次第よ。さっ、戻りましょう!」
「うん……」

 エヴァはマツリの作戦に驚いてしまうが、こうなると背に腹は変えられない。零夜との距離を接近する為にはそれしか方法は無いのだ。
 彼女達はそのままキッチンへと戻り始め、すぐに夕食の支度を始めたのだった。

 ※

 夕食が終わって風呂に入った後、零夜は背伸びしながら自分の部屋に入り始める。そのまま彼は自分の椅子に座り、バングルを起動しながらウインドウを召喚する。
 その画面には現在のステータス。更には自身の使える武器と手に入れたモンスター娘の内容も映されていた。

「ハァ……今のままじゃ駄目だ。レベルは45に上がっているが、もう少し上に行かないと駄目かもな……タマズサはこの程度では倒す事さえ不可能だし……」

 零夜は自身のステータスを見ながら憂鬱な表情となり、ため息を盛大に吐いてしまった。それ程彼にとっては深刻な問題で、問題を解決するには時間が掛かるだろう。
 零夜の最終目標はタマズサを倒す事だが、八つの珠を持つ戦士達を集めるだけじゃない。共に戦うモンスターや仲間達、更には全員の最強の姿で挑む必要がある。もしそうでなければ返り討ちどころか、全滅して死亡の恐れもあるのだ。

「考えても何も始まらない!もう寝よう……」

 零夜が寝ようとしていたその時、扉の音が聞こえ始める。彼が気になって開けた途端、そこにはエヴァが立っていた。しかも彼女は寝間着に着替えず、普段の服を着ている。

「エヴァ。どうしてここに?」
「話があるの。中に入って良いかな?」
「別に構わないが……」

 零夜はエヴァを中に入らせたと同時に、扉をゆっくり閉める。そのまま二人はベッドに腰掛け、身体を寄せ合いながら話をし始める。

「さっきため息をついたけど、何かあったの?」
「ああ。今のステータスを確認していたんだ。現在のレベルは45。タマズサを倒すにはまだ足りないくらいだ」
「あの女性は強いからね……私は大体レベル50よ」

 零夜の話を聞いたエヴァは、タマズサについて真剣に考えながら自身のレベルを告げる。彼女はS級ランクのパーティーに所属していたので、その分レベルも上がっている。更にマツリもエヴァと同レベルであり、多くの冒険者達を倒した経験が活かしているのだ。

「となると、S級ランクの基本はレベル50以上だな……まずはそのレベルを超えないと」

 零夜が真剣な表情をしながら、今後のレベルの目標を定めておく。S級ランクはレベル50以上がオススメと言えるので、そうで無ければこの先の戦いは苦戦してしまう。其の為にも日々鍛錬は欠かさずに行っているのだ。
 するとエヴァはある事を思い出し、零夜にこう質問してきた。

「ねえ。なんで零夜はタマズサを倒そうとしているの?」

 エヴァは気になる素朴な疑問を零夜に対し、首を傾げながら質問してきた。実はこの質問、マツリがアドバイスをくれた一種である。
 まずはその人の目的を聴く事で、お互いの理解を深める効果がある。恋愛関係を深く強める事もできるので、一石二鳥となる。恋愛関係には欠かせない一つのテクニックと言われているのだ。
 すると零夜は天井を見上げたと同時に、自身の目的を話し始めた。

「俺は元はと言えばプロレスラーになりたかった。だが……後楽園で起きた大量虐殺によって、俺の運命は変わってしまった……」

 零夜は当時の事を思い出しながら、怒りでワナワナと震えてしまう。その張本人であるバンドー達はGブロック基地で始末したが、その時の悔しさと怒りはまだ心の中で残っているのだ。

「倫子から聞いたけど、あの事件があったからこそ今がある。それが今に繋がる原動力となっているのね」
「そうだ。この騒動の元凶はタマズサだとすれば、俺は仲間と共に倒しに向かう。プロレスラーへの道はその次だ」

 零夜の説明にエヴァは納得したと同時に、彼をムギュッと抱き締める。今の話を聞いてお互い辛い思いをした事を感じながら、抱き締めずにはいられなかったのだ。

「エヴァ?」
「零夜も辛い思いをしていたんだね……私とは違うけど、あなたは一人じゃない。その事を忘れないで」
「ありがとな……」

 零夜は照れ臭くなりながらもエヴァにお礼を言い、彼女はニッコリと微笑む。年下にも関わらず、その表情はまるで聖母其の物だ。
 エヴァはそのまま零夜を抱き締めたまま、ベッドの上に仰向けになる。そのまま零夜を彼女の身体の上に乗せたと同時に、抱きながら彼の頭を撫で始めた。すると零夜の顔はますます赤くなってしまい、茹で蛸の様になってしまった。このままだと倒れてしまうのも時間の問題だろう。

「は、恥ずかしい……」
「大丈夫。よしよし」

 顔が赤くなっている零夜に対し、エヴァは優しく彼の頭を撫でる。これが彼女なりのスキンシップであるが、零夜がこんな状態だとプラスマイナス0としか言えないのだ。

「はいはい。スキンシップはそこまで」
「うわっ!」
 
 すると倫子が突然姿を現し、零夜をエヴァから引き離してしまう。それに零夜は驚いてしまい、エヴァは嫉妬で頬を膨らましてしまう。

「何してくれるのよ!良いところなのに!」
「零夜君はウチの大切は人なの。勝手に奪い取るのは止めてくれん?」

 倫子の挑発にエヴァは乗ってしまい、ベッドから起き上がって立ち上がる。大切な人をこのまま野放しにしておけないと、自ら動き出したのだ。

「そう言う倫子だって、零夜といつも抱っこしまくっているじゃない!もしかしてアンタも零夜が好きなんでしょ!」
「うっ!?そんな事はないから!ウチにとって零夜君は弟の存在なのだから!」
「だったら私に渡しなさいよ!」
「や!」

 エヴァと倫子の口論はエスカレートしてしまい、零夜は放ったらかしで呆然としてしまう。同時に零夜を巡る恋の戦いは、ここから始まりを告げられてしまったのだ。
 その様子をドア越しから、こっそりとマツリ達が見ていた。倫子が零夜の部屋に入ったのを見て、心配で様子を見に来ていたそうだ。

「やっぱりこうなったか……」
「マツリがエヴァに余計なアドバイスをするから、こうなったんじゃない?」

 マツリはあちゃあと頭を押さえながらため息をつき、ルイザはジト目で彼女に視線を移していた。そもそもマツリがエヴァにアドバイスをしていなければ、こういう修羅場が出る事はなかっただろう。

「言われてみればそうかもね……じゃあ、早く止めに行かないと……」
「そうね……零夜の恋はどうなる事やら……」
「私達も不安になりそうね……」

 マツリ達は盛大なため息をついた後、倫子とエヴァの言い争いを止める為に、次々と部屋に入り始めた。その騒動が収まったのは数分後であり、彼女達はそのまま零夜の部屋で寝る事になったのは言うまでもなかったのだった。
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