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第一章 珠に導かれし戦士達

第8話 ボスゴブリンとの戦い

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 ボスゴブリンの宣言に倫子は思わずキョトンとする中、零夜は彼を睨みつけている。憧れの人が狙われているのを聞くと黙っていられず、自身がやるしかないと決意しているのだろう。

「ボスゴブリンだったな。倫子さんを奪ってどうするつもりだ」

 零夜はギロリと鋭い目をしながら、ボスゴブリンを睨みつける。彼のやる事はロクでもない事しかしないと思い、こうでもしなければ倫子を取られてしまう可能性もあり得るからだ。

「セクハラだよ。俺は美しい女性を手に入れて、自分だけの女にするんだ!勿論衣食住は与えるが」
(セクハラ……)

 ボスゴブリンの発言を聞いた零夜は怒りに震えたと同時に、倫子の前に移動して戦闘態勢に入る。セクハラという言葉を聞いた途端、この様な行動に出るのは当然である。

「だったらアンタを倒すのみだ!これ以上倫子さんに手を出すのなら、俺が始末してやる!」
(零夜君……)

 零夜はボスゴブリンに対して真剣な宣言をした直後、すぐに忍者刀を手元に召喚する。それを見た倫子は嬉しさで頬を赤く染め、心臓の鼓動もドクンドクンと高鳴り始める。もしかすると好きである事を自覚するのは、遠くない未来となるだろう。

「おのれ!野郎共、戦闘態勢に入れ!」

 ボスゴブリンは怒りで震え、彼の合図と同時にゴブリン達が戦闘態勢に入る。彼等は棍棒と弓矢をそれぞれ構え、鋭い視線を零夜に向けていた。

「ここはウチに任せて!」
「倫子さん!」

 すると倫子が前に出たと同時に、両手でハートの形を作る。この光景にゴブリン達は思わず疑問に感じ、動きを止めてしまった。

「悪い子はお仕置きだから!マジカルハート!」

 倫子は両手からマジカルハートを放ち、ゴブリン達に次々と直撃する。するとゴブリン達は倫子に視線を移したと同時に、彼女に対して一礼をする。

「我々ゴブリン達はあなたに忠誠を誓います!」
「うん。宜しくね」
「な!?」

 ゴブリン達が自身裏切ってしまった事に、ボスゴブリンが驚きを隠せないのも無理はない。するとゴブリン達はそのままスピリットに変化し、倫子のバングルの中に入って行ったのだ。

「よくも部下を奪い取ったな!こうなったら俺だけでもやってやる!」

 ボスゴブリンは怒りの表情をしながら戦闘態勢に入り、零夜達はすぐに警戒態勢に入る。部下を奪われてしまえば当然怒るのも無理ないだろう。

「ボスゴブリンのレベルは?」
「レベルは5ぐらいある。奴はでかいばかりで、実力についてはそんなに強くないだろう」
「なるほどな。ここは忍者刀でやるしかない!」

 ヤツフサからの説明に零夜は納得したと同時に、二本の忍者刀を手元に召喚。そのまま戦闘態勢に入り、素早く終わらせようとしているのだ。

「そっちがその気なら……先手必勝のラリアットだ!」

 ボスゴブリンは強烈なラリアットを零夜に仕掛けるが、彼は跳躍しながら回避してしまった。更に宙回転をしながら見事に着地し、素早くボスゴブリンに視線を移す。

「ほう。俺のラリアットを躱すとはやるじゃねえか」
「こう見えてもプロレスという格闘技を習っているからな。甘く見ると痛い目に遭うぜ!」

 零夜は忍者刀を粒子化させてバングルに収めたと同時に、ボスゴブリンに接近してハイキックを喰らわせる。しかし彼は頑丈である為、この程度では倒れないのだ。

「なるほど。なかなかやるみたいだな。だが、こいつは痛いぞ!」
「ぐほっ!」

 ボスゴブリンは素早く零夜にタックルを仕掛け、そのまま彼をダウンさせる事に成功。すかさず彼の両足首を素早く掴み、一気に回転し始めた。

「ジャイアントスイング!」
「うわあああああ!」

 零夜はボスゴブリンによって勢いよく回転させられ、そのまま強く投げ飛ばされてしまった。彼は二、三回転しながら地面に激突しまくり、そのまま地面を引きずりながら倒れてしまう。

「零夜君!」
(今のジャイアントスイングは強烈だった。あのボスゴブリンはプロレスラー向きかも知れないけど、敵であるのなら侮れない相手ね……)

 倒れている零夜の姿に倫子が急いで彼の元に駆け寄る中、日和はボスゴブリンの姿を見て冷静に判断していた。あの様な技を出すならプロレスラーになれるが、敵となれば手強さを感じてしまうのは当然であるのだ。

「どうした?まだやる気か?」
「当たり前だ!ここで俺がやられてたまるか!」 

 ボスゴブリンが倒れている零夜に対して挑発をしたその時、素早く彼は立ち上がって戦闘態勢に入る。ボスゴブリンは腕を鳴らしながら彼を睨みつけ、次の一撃で倒そうとしているのだ。

(奴は頑丈なら、今の打撃では勝てない。それなら別の技で!)

 零夜は心の中で考えたと同時に、ボスゴブリンに素早く接近する。それを見たボスゴブリンは強烈な張り手で彼を倒そうとしている。猪突猛進で突っ込んでくる者には、この方が手っ取り早いと感じただろう。

「もらった!」

 強烈な張り手が零夜に襲い掛かるが、彼は跳躍しながら回避する。そのまま彼は手刀の態勢に入り、ボスゴブリンに襲い掛かってきた。

「そこだ!」
「!?」

 そのままボスゴブリンの首筋に強烈な一撃を放ち、零夜は地面に着地する。するとボスゴブリンは前のめりにゆっくりと倒れてしまい、ズシンと倒れ込んでしまったのだ。

「俺の手刀は強烈なのでね。ここから反撃開始だ!」

 零夜がすぐに反撃の狼煙を上げようとしたその時、ボスゴブリンは金貨と素材であるゴブリンの牙に変化してしまった。あの手刀による一撃が強烈であった為、ボスゴブリンはその攻撃に耐え切る事ができなかったのだ。

「まさか手刀で倒れてしまうとは……もう少しトレーニングした方が良いかもな」

 零夜は苦笑いしながら金貨とゴブリンの牙を拾い、ボスゴブリンに対してもう少し鍛えた方が良いと指摘をする。同時に倫子と日和が零夜の元に駆け寄り、笑顔で彼を褒め始めた。

「やるじゃない!ボスゴブリンを手刀で倒すなんて!」
「あの手刀、凄く威力があるなんて驚いたわ」
「大した事じゃないですけどね。上手く成功して良かったです」

 零夜は苦笑いしながらも、ボスゴブリンを倒した事に実感を持っている。あの手刀があったからこそ、勝つ事ができたのだ。その様子を見たアイリンは彼に近付き、ニッコリと笑顔を見せる。

「あのボスゴブリンを倒したのは凄かったわ。けど、まだまだこれからだからね」
「ああ。タマズサを倒すにはまだ遠いし、ここから強くならないとな」

 アイリンからの忠告に零夜は真剣な表情で頷き、更に強くなる事を決意。タマズサの強さは彼等よりも遥かに高いので、まだまだ経験を積みながら強くなる必要があるのだ。

「さて、そろそろ……ん?」
「どうした?」
 
 するとアイリンは目の前の光景に視線を移すと、目的となる街が見えていた。西洋風の建物が多く、賑やかな雰囲気が漂わせている。この街こそクローバールだ。

「間違いないわ!あの街こそクローバールよ!」
「という事は……目的地までもう少しという事か!」

 アイリンは目的の街が見えた事に、喜びの表情をしていた。異世界である地球に飛ばされてから戻れないのか心配していたが、零夜達の助けもあって無事に戻る事が出来る様になった。喜ばれずにいられないのも無理はないだろう。

「ええ!そうと決まれば早速向かうわよ!」
「お、おい!待ってくれよ!」
「ウチ等も急がんと!」
「は、はい!」

 アイリンは我慢できずにクローバールへ向かって走り出し、零夜達も慌てながら後を追いかける。彼等の様子を見ていたヤツフサは微笑んだ後、急いで後を追いかけ始めたのだった。
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