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第11話 辺境の町ガラト
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翌朝、最初の鐘と共にウェステリア王国辺境の町ガラトへの門が開いた。
「リューク、カザン、こっちだ」
リラの声に急かされてリュークとカザンはテントを片付けるとリラが待つ門の前に近づいた。
「おお、リラ殿、今回も大量に仕留めた様だな」
ダブルボタンの黄土色の隊服に身を包んだ門衛の一人がリラが引く荷馬車に目を向けると親しげに声をかけた。ミリタリーキャップを被っているせいか若く見えた門衛は落ち着いた口調からそこそこ年齢が行っているように見える。
「ん? そこの少年達はリラ殿の連れか? やけに綺麗な顔をしているな、貴族……ではない様だが……」
リュークとカザンの姿を捉えたもう一人の門衛は二人の顔を見た後、直ぐに服装に目を移すと思案しながら言った。
「ああそうだ。冒険者希望のリュークとカザンだ」
「そうか、君達こっちに来たまえ」
リラが何の躊躇なく返答すると門衛はリュークとカザンに声をかけ、二人は彼に素直に従った。
「君達、身分証はあるかい?」
門衛の言葉に二人は首を傾げる。
「身分証? って何だ?」
「さあ?」
リュークが小さくカザンに問うとカザンは首を傾げた。
「ふむ、なるほど」
門衛は二人の様子を見てリラの方に顔を向けた。身分証も知らないなら身分証を持っていないのだろうと確信した。
「リラ殿、貴方が彼らの保証人で良いか?」
「ああ、構わない」
即答するリラにリュークとカザンは目を丸くしてお互いに顔を見合わせた。
「え? リラさん、保証人って?」
戸惑いながらリュークはリラに問いかけた。
「えーとね、入国の際は身分証が必要なんだ。君達の様子を見るとどうやら身分証を持ってない様に見える。だから私が保証人になろうと思ってね。まあ、リュークとカザン次第だけどね。どうする?」
「「いいんですか?」」
リュークとカザンはリラの提案に驚きながらも是非お願いしたいと思った。
出会ったばかりの二人の保証人になると言ってくれたリラはかなりお人好しの様だと二人は彼女の心根に密かに感動していた。
「「リラさん、ありがとうございます!!」」
「ハハハッ、いいっていいって」
リュークとカザンの言葉にリラは照れくさそうに掌を振る。
「よかったな、坊主達。保証人がいなければ保証金が必要なんだ」
「保証金? お金ならもってるよ、ほら。父様が当面の旅費だと言ってくれたんだ」
リュークはウエストポーチから金貨が入った布袋を取りだした。
布袋に片手を突っ込んで金貨を取り出すリューク。
リラと門衛は目を丸くして驚いているがリュークとカザンは気付かない。
「いくら必要なんだ?」
唖然とするリラと門衛にリュークはお構いなしに尋ねた。
「えっと……リラさんが保証人になるみたいだからいらないよ」
我に返った門衛はリュークに答えた。
「へぇ、君の家は随分と金持ちらしいな。そうか、リュークの父さんは腕の良い魔導具師だったな」
リラはリュークが大金を持っていることに昨日の彼の言っていた事を思い出し納得したように呟いた。
平民の一月の生活は金貨4枚程あれば十分賄える。リュークが持っている金貨は袋の大きさからすると30枚はあるように思えた。普通は例え息子の門出だとしてもそんな大金を渡すのは難しいだろう。
そのことからリラはそんな大金を準備出来るリュークの家はかなり裕福なのだろうと推測した。
「さてと、討伐した獲物もあるから私はこのまま冒険者ギルドに行くがリュークとカザンも一緒に行くか? 君達は冒険者になるつもりなんだろう?」
「「はい、一緒に行かせて下さい」」
二人は声を揃えて元気よく返事をした。
「ハハハッ、やっぱり君達は仲が良いなぁ、じゃあ私の隣に乗りな」
リラは荷馬車の馭者台に乗るとリュークとカザンに自分の隣を指して乗るように促した。
無事に国境門を通りすぎると、リラが操縦する馬車で街中にある石畳の広い道路を進んで行く。様々な商店があり、辺境にある割に中々大きな街だ。初めて見る人間の街にリュークとカザンはキョロキョロと辺りを見回す。道を歩く者が殆ど見あたらない。
「街は結構大きい様だけど、あまり人がいないんだね」
「ああ、まだ朝早いからな。だが、ギルド内はもう混み始める頃だ。冒険者は早く行って出来るだけ良い依頼を受けたいからな」
リュークの疑問に答えるリラ。
「あっ、君達、そのフード被った方がいいな。目立ちすぎるのはトラブルの元だ」
ふと、リラはリュークとカザンの顔を眺めて思い立ったように言った。
二人はお互いに顔を見合わせ首を傾げた。
「おい、カザン。俺達って目立つのか?」
「んー、俺は大丈夫だがお前は目立つかも」
「何でだよ」
「えーと、ほら、お前の母ちゃんも言っていただろ? お前は父ちゃんに似て将来イケメンになるから心配だって」
「なんだよ、イケメンって。意味わかんねー」
「だから……」
「ほら、もう着くぞ」
リュークとカザンが言い合いをしているところでリラが告げた。
「ああ、言っておくけど、カザンも十分目立つからな」
二人の話を聞いていたリラはカザンにも釘を刺した。
「目立つってなんだよ。何でだよ……」
カザンは納得がいかずブツブツと小さな声で呟き
「ハハハッ、やっぱりカザンもじゃないか」
リュークは何故か嬉しそうに小さく笑ったのだった。
「リューク、カザン、こっちだ」
リラの声に急かされてリュークとカザンはテントを片付けるとリラが待つ門の前に近づいた。
「おお、リラ殿、今回も大量に仕留めた様だな」
ダブルボタンの黄土色の隊服に身を包んだ門衛の一人がリラが引く荷馬車に目を向けると親しげに声をかけた。ミリタリーキャップを被っているせいか若く見えた門衛は落ち着いた口調からそこそこ年齢が行っているように見える。
「ん? そこの少年達はリラ殿の連れか? やけに綺麗な顔をしているな、貴族……ではない様だが……」
リュークとカザンの姿を捉えたもう一人の門衛は二人の顔を見た後、直ぐに服装に目を移すと思案しながら言った。
「ああそうだ。冒険者希望のリュークとカザンだ」
「そうか、君達こっちに来たまえ」
リラが何の躊躇なく返答すると門衛はリュークとカザンに声をかけ、二人は彼に素直に従った。
「君達、身分証はあるかい?」
門衛の言葉に二人は首を傾げる。
「身分証? って何だ?」
「さあ?」
リュークが小さくカザンに問うとカザンは首を傾げた。
「ふむ、なるほど」
門衛は二人の様子を見てリラの方に顔を向けた。身分証も知らないなら身分証を持っていないのだろうと確信した。
「リラ殿、貴方が彼らの保証人で良いか?」
「ああ、構わない」
即答するリラにリュークとカザンは目を丸くしてお互いに顔を見合わせた。
「え? リラさん、保証人って?」
戸惑いながらリュークはリラに問いかけた。
「えーとね、入国の際は身分証が必要なんだ。君達の様子を見るとどうやら身分証を持ってない様に見える。だから私が保証人になろうと思ってね。まあ、リュークとカザン次第だけどね。どうする?」
「「いいんですか?」」
リュークとカザンはリラの提案に驚きながらも是非お願いしたいと思った。
出会ったばかりの二人の保証人になると言ってくれたリラはかなりお人好しの様だと二人は彼女の心根に密かに感動していた。
「「リラさん、ありがとうございます!!」」
「ハハハッ、いいっていいって」
リュークとカザンの言葉にリラは照れくさそうに掌を振る。
「よかったな、坊主達。保証人がいなければ保証金が必要なんだ」
「保証金? お金ならもってるよ、ほら。父様が当面の旅費だと言ってくれたんだ」
リュークはウエストポーチから金貨が入った布袋を取りだした。
布袋に片手を突っ込んで金貨を取り出すリューク。
リラと門衛は目を丸くして驚いているがリュークとカザンは気付かない。
「いくら必要なんだ?」
唖然とするリラと門衛にリュークはお構いなしに尋ねた。
「えっと……リラさんが保証人になるみたいだからいらないよ」
我に返った門衛はリュークに答えた。
「へぇ、君の家は随分と金持ちらしいな。そうか、リュークの父さんは腕の良い魔導具師だったな」
リラはリュークが大金を持っていることに昨日の彼の言っていた事を思い出し納得したように呟いた。
平民の一月の生活は金貨4枚程あれば十分賄える。リュークが持っている金貨は袋の大きさからすると30枚はあるように思えた。普通は例え息子の門出だとしてもそんな大金を渡すのは難しいだろう。
そのことからリラはそんな大金を準備出来るリュークの家はかなり裕福なのだろうと推測した。
「さてと、討伐した獲物もあるから私はこのまま冒険者ギルドに行くがリュークとカザンも一緒に行くか? 君達は冒険者になるつもりなんだろう?」
「「はい、一緒に行かせて下さい」」
二人は声を揃えて元気よく返事をした。
「ハハハッ、やっぱり君達は仲が良いなぁ、じゃあ私の隣に乗りな」
リラは荷馬車の馭者台に乗るとリュークとカザンに自分の隣を指して乗るように促した。
無事に国境門を通りすぎると、リラが操縦する馬車で街中にある石畳の広い道路を進んで行く。様々な商店があり、辺境にある割に中々大きな街だ。初めて見る人間の街にリュークとカザンはキョロキョロと辺りを見回す。道を歩く者が殆ど見あたらない。
「街は結構大きい様だけど、あまり人がいないんだね」
「ああ、まだ朝早いからな。だが、ギルド内はもう混み始める頃だ。冒険者は早く行って出来るだけ良い依頼を受けたいからな」
リュークの疑問に答えるリラ。
「あっ、君達、そのフード被った方がいいな。目立ちすぎるのはトラブルの元だ」
ふと、リラはリュークとカザンの顔を眺めて思い立ったように言った。
二人はお互いに顔を見合わせ首を傾げた。
「おい、カザン。俺達って目立つのか?」
「んー、俺は大丈夫だがお前は目立つかも」
「何でだよ」
「えーと、ほら、お前の母ちゃんも言っていただろ? お前は父ちゃんに似て将来イケメンになるから心配だって」
「なんだよ、イケメンって。意味わかんねー」
「だから……」
「ほら、もう着くぞ」
リュークとカザンが言い合いをしているところでリラが告げた。
「ああ、言っておくけど、カザンも十分目立つからな」
二人の話を聞いていたリラはカザンにも釘を刺した。
「目立つってなんだよ。何でだよ……」
カザンは納得がいかずブツブツと小さな声で呟き
「ハハハッ、やっぱりカザンもじゃないか」
リュークは何故か嬉しそうに小さく笑ったのだった。
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