20 / 24
第20話 確執
しおりを挟む
第二皇妃ソフィア・ミディ・スレイルは隣国、クレミア王国の第一王女だった。
目立たず穏やかでいつも微笑んでいるのが印象的で、雰囲気はいつも艶やかに着飾っている第一皇妃ヘレンとは対照的だった。
皇帝グラント・ジェンセン・スレイルがソフィアを第二皇妃として迎えたのは、皇妃ヘレンが第一皇子を産んでから二年後のことだった。
スレイル帝國の公爵家で育った第一皇妃ヘレンは、これまで自分より身分の高い女性が周りにいなかったためか最初からソフィアのことを疎ましく思っていた。
況してや自分の息子の立場を脅かす恐れのある第二皇子を産んだ後はそれが一層エスカレートし、邪魔者を排除しようと画策していた。
しかし、ソフィアはスレイル帝國より国力が落ちるとは言え元は一国の王女である。
故にそう簡単に暗殺するわけにはいかない。
ではどうするか?
そうだ、死因が病気なら問題ないわね。
ヘレンの中で黒い陰謀が頭を掲げ、恐ろしい策略は秘密裏に実行されたのだった。
ソフィアはディーンを産んですぐに病に倒れた。
最初は、誰もが産後の肥立ちが悪いせいだと考えていたが、どんな高名な医師にかかっても回復することは無かった。
結果的には、原因不明の不治の病と言うことで結論づけられ、ディーンが3歳の時に亡くなった。
病床で優しく微笑む姿だけがディーンの心の中に思い浮かぶ最後の母親の姿だった。
そして、ソフィアが輿入れした時から着いて来たばあやがディーンの唯一の味方だった。
「ディーン様、これからはばあやが出したもの以外召し上がらないでくださいませ」
ソフィアが亡くなって5年程が経過したとき、度々体調不良になるディーンに向かってばあやが唐突に言った。
ばあやは長年の感故か、ディーンの体調不良は外部からの干渉を疑っていた。
つまり毒だ。
ディーンを守るべく尽力するばあやだったが、それを許すヘレンではなかった。
それから数年後、ディーンが10歳になる前にばあやは病に倒れ帰らぬ人となってしまった。
ディーンは唯一の味方であったばあやを亡くして悲嘆に暮れていた。
幼いディーンには為す術もなくジッと耐えるしかなかった。
皇居の別館に住むディーンは本館に住むヘレンと第一皇子である兄のクラウスとは滅多に会うことはなかった。
しかし、年に数回の行事の際には嫌でも顔を合わせなければならなかった。
睥睨する冷たい目はいつもディーンの心に暗い影を落とした。
クラウスはいつもディーンを疎ましく思っていたのだ。
正妃でありクラウスの実母であるヘレンと同じように。
皇帝である父はそんな確執を知ってか知らずか介入することはなかった。
多分ヘレンを怒らせて余計な波風を立てたくなかったのだろう。
それからもディーンは度々原因不明の体調不良に見舞われることがあった。
しかし、不思議と朝になるといつも回復していた。
目立たず穏やかでいつも微笑んでいるのが印象的で、雰囲気はいつも艶やかに着飾っている第一皇妃ヘレンとは対照的だった。
皇帝グラント・ジェンセン・スレイルがソフィアを第二皇妃として迎えたのは、皇妃ヘレンが第一皇子を産んでから二年後のことだった。
スレイル帝國の公爵家で育った第一皇妃ヘレンは、これまで自分より身分の高い女性が周りにいなかったためか最初からソフィアのことを疎ましく思っていた。
況してや自分の息子の立場を脅かす恐れのある第二皇子を産んだ後はそれが一層エスカレートし、邪魔者を排除しようと画策していた。
しかし、ソフィアはスレイル帝國より国力が落ちるとは言え元は一国の王女である。
故にそう簡単に暗殺するわけにはいかない。
ではどうするか?
そうだ、死因が病気なら問題ないわね。
ヘレンの中で黒い陰謀が頭を掲げ、恐ろしい策略は秘密裏に実行されたのだった。
ソフィアはディーンを産んですぐに病に倒れた。
最初は、誰もが産後の肥立ちが悪いせいだと考えていたが、どんな高名な医師にかかっても回復することは無かった。
結果的には、原因不明の不治の病と言うことで結論づけられ、ディーンが3歳の時に亡くなった。
病床で優しく微笑む姿だけがディーンの心の中に思い浮かぶ最後の母親の姿だった。
そして、ソフィアが輿入れした時から着いて来たばあやがディーンの唯一の味方だった。
「ディーン様、これからはばあやが出したもの以外召し上がらないでくださいませ」
ソフィアが亡くなって5年程が経過したとき、度々体調不良になるディーンに向かってばあやが唐突に言った。
ばあやは長年の感故か、ディーンの体調不良は外部からの干渉を疑っていた。
つまり毒だ。
ディーンを守るべく尽力するばあやだったが、それを許すヘレンではなかった。
それから数年後、ディーンが10歳になる前にばあやは病に倒れ帰らぬ人となってしまった。
ディーンは唯一の味方であったばあやを亡くして悲嘆に暮れていた。
幼いディーンには為す術もなくジッと耐えるしかなかった。
皇居の別館に住むディーンは本館に住むヘレンと第一皇子である兄のクラウスとは滅多に会うことはなかった。
しかし、年に数回の行事の際には嫌でも顔を合わせなければならなかった。
睥睨する冷たい目はいつもディーンの心に暗い影を落とした。
クラウスはいつもディーンを疎ましく思っていたのだ。
正妃でありクラウスの実母であるヘレンと同じように。
皇帝である父はそんな確執を知ってか知らずか介入することはなかった。
多分ヘレンを怒らせて余計な波風を立てたくなかったのだろう。
それからもディーンは度々原因不明の体調不良に見舞われることがあった。
しかし、不思議と朝になるといつも回復していた。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました
しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。
そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。
そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。
全身包帯で覆われ、顔も見えない。
所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。
「なぜこのようなことに…」
愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。
同名キャラで複数の話を書いています。
作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。
この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。
皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。
短めの話なのですが、重めな愛です。
お楽しみいただければと思います。
小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
悪役令嬢は王子の溺愛を終わらせない~ヒロイン遭遇で婚約破棄されたくないので、彼と国外に脱出します~
可児 うさこ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。第二王子の婚約者として溺愛されて暮らしていたが、ヒロインが登場。第二王子はヒロインと幼なじみで、シナリオでは真っ先に攻略されてしまう。婚約破棄されて幸せを手放したくない私は、彼に言った。「ハネムーン(国外脱出)したいです」。私の願いなら何でも叶えてくれる彼は、すぐに手際を整えてくれた。幸せなハネムーンを楽しんでいると、ヒロインの影が追ってきて……※ハッピーエンドです※
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる
雨野
恋愛
難病に罹り、15歳で人生を終えた私。
だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?
でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!
ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?
1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。
ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!
主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!
愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。
予告なく痛々しい、残酷な描写あり。
サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。
小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。
こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。
本編完結。番外編を順次公開していきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。
石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。
ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。
そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。
真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
氷の公爵と契約結婚したら、いつの間にか溺愛されていました 〜冷徹な夫が“絶対に手放さない”と言って離してくれません〜
ゆる
恋愛
「この結婚に愛は不要だ」
——そう言い放ったのは、王国随一の冷徹な公爵・ヴァレリウス・フォン・アイゼンベルク。
辺境の子爵家の娘アドリアナ・ローランは、家の存続のために彼との政略結婚を強いられる。
冷たく距離を取る夫との結婚生活は、まるで契約のようなもの。
——そう思っていたのに、いつの間にか状況は一変!?
そんな中、アドリアナの実家ローラン子爵領で疫病が発生!
夫に頼るわけにはいかない——そう決意して故郷へ向かうが、そこには陰謀を巡らす貴族たちの罠が待ち受けていた……!
「お前は俺の妻だ。だから、もう一人で背負うな」
冷たかったはずの夫は、まるで別人のように甘くなり、時には公然と独占欲を隠さない!?
愛などない契約結婚だったはずが、いつの間にか溺愛されていました——!
-
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる