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第20話 確執
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第二皇妃ソフィア・ミディ・スレイルは隣国、クレミア王国の第一王女だった。
目立たず穏やかでいつも微笑んでいるのが印象的で、雰囲気はいつも艶やかに着飾っている第一皇妃ヘレンとは対照的だった。
皇帝グラント・ジェンセン・スレイルがソフィアを第二皇妃として迎えたのは、皇妃ヘレンが第一皇子を産んでから二年後のことだった。
スレイル帝國の公爵家で育った第一皇妃ヘレンは、これまで自分より身分の高い女性が周りにいなかったためか最初からソフィアのことを疎ましく思っていた。
況してや自分の息子の立場を脅かす恐れのある第二皇子を産んだ後はそれが一層エスカレートし、邪魔者を排除しようと画策していた。
しかし、ソフィアはスレイル帝國より国力が落ちるとは言え元は一国の王女である。
故にそう簡単に暗殺するわけにはいかない。
ではどうするか?
そうだ、死因が病気なら問題ないわね。
ヘレンの中で黒い陰謀が頭を掲げ、恐ろしい策略は秘密裏に実行されたのだった。
ソフィアはディーンを産んですぐに病に倒れた。
最初は、誰もが産後の肥立ちが悪いせいだと考えていたが、どんな高名な医師にかかっても回復することは無かった。
結果的には、原因不明の不治の病と言うことで結論づけられ、ディーンが3歳の時に亡くなった。
病床で優しく微笑む姿だけがディーンの心の中に思い浮かぶ最後の母親の姿だった。
そして、ソフィアが輿入れした時から着いて来たばあやがディーンの唯一の味方だった。
「ディーン様、これからはばあやが出したもの以外召し上がらないでくださいませ」
ソフィアが亡くなって5年程が経過したとき、度々体調不良になるディーンに向かってばあやが唐突に言った。
ばあやは長年の感故か、ディーンの体調不良は外部からの干渉を疑っていた。
つまり毒だ。
ディーンを守るべく尽力するばあやだったが、それを許すヘレンではなかった。
それから数年後、ディーンが10歳になる前にばあやは病に倒れ帰らぬ人となってしまった。
ディーンは唯一の味方であったばあやを亡くして悲嘆に暮れていた。
幼いディーンには為す術もなくジッと耐えるしかなかった。
皇居の別館に住むディーンは本館に住むヘレンと第一皇子である兄のクラウスとは滅多に会うことはなかった。
しかし、年に数回の行事の際には嫌でも顔を合わせなければならなかった。
睥睨する冷たい目はいつもディーンの心に暗い影を落とした。
クラウスはいつもディーンを疎ましく思っていたのだ。
正妃でありクラウスの実母であるヘレンと同じように。
皇帝である父はそんな確執を知ってか知らずか介入することはなかった。
多分ヘレンを怒らせて余計な波風を立てたくなかったのだろう。
それからもディーンは度々原因不明の体調不良に見舞われることがあった。
しかし、不思議と朝になるといつも回復していた。
目立たず穏やかでいつも微笑んでいるのが印象的で、雰囲気はいつも艶やかに着飾っている第一皇妃ヘレンとは対照的だった。
皇帝グラント・ジェンセン・スレイルがソフィアを第二皇妃として迎えたのは、皇妃ヘレンが第一皇子を産んでから二年後のことだった。
スレイル帝國の公爵家で育った第一皇妃ヘレンは、これまで自分より身分の高い女性が周りにいなかったためか最初からソフィアのことを疎ましく思っていた。
況してや自分の息子の立場を脅かす恐れのある第二皇子を産んだ後はそれが一層エスカレートし、邪魔者を排除しようと画策していた。
しかし、ソフィアはスレイル帝國より国力が落ちるとは言え元は一国の王女である。
故にそう簡単に暗殺するわけにはいかない。
ではどうするか?
そうだ、死因が病気なら問題ないわね。
ヘレンの中で黒い陰謀が頭を掲げ、恐ろしい策略は秘密裏に実行されたのだった。
ソフィアはディーンを産んですぐに病に倒れた。
最初は、誰もが産後の肥立ちが悪いせいだと考えていたが、どんな高名な医師にかかっても回復することは無かった。
結果的には、原因不明の不治の病と言うことで結論づけられ、ディーンが3歳の時に亡くなった。
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そして、ソフィアが輿入れした時から着いて来たばあやがディーンの唯一の味方だった。
「ディーン様、これからはばあやが出したもの以外召し上がらないでくださいませ」
ソフィアが亡くなって5年程が経過したとき、度々体調不良になるディーンに向かってばあやが唐突に言った。
ばあやは長年の感故か、ディーンの体調不良は外部からの干渉を疑っていた。
つまり毒だ。
ディーンを守るべく尽力するばあやだったが、それを許すヘレンではなかった。
それから数年後、ディーンが10歳になる前にばあやは病に倒れ帰らぬ人となってしまった。
ディーンは唯一の味方であったばあやを亡くして悲嘆に暮れていた。
幼いディーンには為す術もなくジッと耐えるしかなかった。
皇居の別館に住むディーンは本館に住むヘレンと第一皇子である兄のクラウスとは滅多に会うことはなかった。
しかし、年に数回の行事の際には嫌でも顔を合わせなければならなかった。
睥睨する冷たい目はいつもディーンの心に暗い影を落とした。
クラウスはいつもディーンを疎ましく思っていたのだ。
正妃でありクラウスの実母であるヘレンと同じように。
皇帝である父はそんな確執を知ってか知らずか介入することはなかった。
多分ヘレンを怒らせて余計な波風を立てたくなかったのだろう。
それからもディーンは度々原因不明の体調不良に見舞われることがあった。
しかし、不思議と朝になるといつも回復していた。
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