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第15話 交わる視線
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アメリアは、そのパーティーに参加すべく準備を整えていた。
(人間界から抹消されていてもパーティーに参加する人数を考えれば私1人紛れても分からないわね。それに万が一の場合は異能で記憶を消しちゃいましょ)
アメリアは、ディーンに会いたいが為だけにパーティーに参加することにしたのだった。
コンコン。
ノック音に反応してアメリアは扉を開けた。
そこにはアメリアの母であるミルドレッドが微笑みを浮かべて立っていた。
「アメリア、楽しんで来なさい。どんな事が有っても私たちはみんなあなたの味方よ。あなたの思うとおりにしないさい」
薄水色のドレスを纏うアメリアを励ますミルドレッドの言葉はどこまでも優しかった。
これまでずっとこの日を待っていたアメリアをミルドレッドだけではなく家族みんなが知っていたのだ。
「お母様、ありがとうございます」
そう一言告げると、アメリアは心に勇気がわき上がるのを感じた。
アメリアは人の目に止まらない速さで皇宮に向けて駆けていった。
ドレスのままで。
アメリアはドレスが乱れても、髪が乱れても気にしない。何故なら、アメリアの異能によって瞬時に戻すことが出来るからだ。
正面から行くことは出来ないため、自分の背の3倍以上もある皇宮の塀を跳び越えパーティー会場に向かった。
徐々に人のざわめきが聞こえてきた。
会場に続く庭には人の影は見当たらない。
アメリアはその会場からそっと会場内に潜り込んだ。
煌びやかなドレスやタキシードを身に纏い貴族だった頃の苦い記憶が一瞬アメリアの頭を掠めた。
どうやらまだパーティーは開始していないようだ。城内では招待客達が歓談している。
そろそろ皇族の入場が始まるらしく、人々は正面に向かった。後ろから入ってきたアメリアには誰も気付かない。
数分後、ファンファーレと共に皇族達が会場内に入場してきた。
蒼色の瞳を持つ皇帝陛下の精悍な顔立ちは、その横に並ぶ二人の皇子達に血のつながりを確かに感じさせていた。
その中でも第二皇子のディーンの瞳が一番濃く、海の色のように深い蒼色をしていた。
会場が静まり、誰もが皇帝の声に注目していた。
皇帝が参加者に向かってなにやら話しているがアメリアはディーンの姿に囚われ何も耳に入ってこなかった。
(これだけ離れているんだもの、私に気付かなくて当然よね・・・うううん、例え気付いてもディーンにとっては会ったことも無い私なんて目にも止めないわね)
自嘲気味に考えながらもアメリアはディーンから目を離すことが出来なかった。
すると、ドキンとアメリアの胸の鼓動が一瞬跳ね上がった。ディーンがこちらに視線を向けているような気がしたのだ。
(えっ? こっちを見てる? ……気のせいよね)
そう思おうとしたが、やはりディーンの視線がこっちを見ているような気がして落ち着かない。
後ろの人を見ているのかと思って振り返って見てもアメリアの後ろには誰もいなかった。
(やっぱり私を見ているのかしら? もしかして、私に気がついてくれたの?)
しかし、期待したのも束の間。
ディーンの傍に金髪の女性が近づき、耳元で何やら囁いていた。
その後、音楽が鳴り始めダンスが始まるとディーンはその女性の手を取りホールの真ん中に足を向けた。
二人が踊る姿に目を逸らすアメリア。あまりのショックに胸が締め付けられ、庭の入り口から一旦外に出ることにした。
手入れが十分に行き届いてるせいか庭には様々な花が咲き乱れその美しさが心の動揺を落ち着かせてくれるようだ。
右手を見ると綺麗に剪定された灌木が並んでおり、その奥の小高い丘には薔薇の花に囲まれたガゼボが見える。
アメリアはガゼボに向かって歩き、そこで暫く気持ちを落ち着かせることにした。
椅子に腰掛けこれまでのことを反芻しながら溜息を零す。
何とか意を決し、立ち上がろうとしたとき煌びやかな衣装に身を包んだ懐かしい顔がこちらに向かってくることに気付いた。
「どうして……」
アメリアは我を忘れ、咄嗟に立ち上がり呟いた。
「やぁ、君、以前私と会ったことはない?」
「えっ?」
近づきながら問いかけるディーンの問いにアメリアは言葉を詰まらせた。
(人間界から抹消されていてもパーティーに参加する人数を考えれば私1人紛れても分からないわね。それに万が一の場合は異能で記憶を消しちゃいましょ)
アメリアは、ディーンに会いたいが為だけにパーティーに参加することにしたのだった。
コンコン。
ノック音に反応してアメリアは扉を開けた。
そこにはアメリアの母であるミルドレッドが微笑みを浮かべて立っていた。
「アメリア、楽しんで来なさい。どんな事が有っても私たちはみんなあなたの味方よ。あなたの思うとおりにしないさい」
薄水色のドレスを纏うアメリアを励ますミルドレッドの言葉はどこまでも優しかった。
これまでずっとこの日を待っていたアメリアをミルドレッドだけではなく家族みんなが知っていたのだ。
「お母様、ありがとうございます」
そう一言告げると、アメリアは心に勇気がわき上がるのを感じた。
アメリアは人の目に止まらない速さで皇宮に向けて駆けていった。
ドレスのままで。
アメリアはドレスが乱れても、髪が乱れても気にしない。何故なら、アメリアの異能によって瞬時に戻すことが出来るからだ。
正面から行くことは出来ないため、自分の背の3倍以上もある皇宮の塀を跳び越えパーティー会場に向かった。
徐々に人のざわめきが聞こえてきた。
会場に続く庭には人の影は見当たらない。
アメリアはその会場からそっと会場内に潜り込んだ。
煌びやかなドレスやタキシードを身に纏い貴族だった頃の苦い記憶が一瞬アメリアの頭を掠めた。
どうやらまだパーティーは開始していないようだ。城内では招待客達が歓談している。
そろそろ皇族の入場が始まるらしく、人々は正面に向かった。後ろから入ってきたアメリアには誰も気付かない。
数分後、ファンファーレと共に皇族達が会場内に入場してきた。
蒼色の瞳を持つ皇帝陛下の精悍な顔立ちは、その横に並ぶ二人の皇子達に血のつながりを確かに感じさせていた。
その中でも第二皇子のディーンの瞳が一番濃く、海の色のように深い蒼色をしていた。
会場が静まり、誰もが皇帝の声に注目していた。
皇帝が参加者に向かってなにやら話しているがアメリアはディーンの姿に囚われ何も耳に入ってこなかった。
(これだけ離れているんだもの、私に気付かなくて当然よね・・・うううん、例え気付いてもディーンにとっては会ったことも無い私なんて目にも止めないわね)
自嘲気味に考えながらもアメリアはディーンから目を離すことが出来なかった。
すると、ドキンとアメリアの胸の鼓動が一瞬跳ね上がった。ディーンがこちらに視線を向けているような気がしたのだ。
(えっ? こっちを見てる? ……気のせいよね)
そう思おうとしたが、やはりディーンの視線がこっちを見ているような気がして落ち着かない。
後ろの人を見ているのかと思って振り返って見てもアメリアの後ろには誰もいなかった。
(やっぱり私を見ているのかしら? もしかして、私に気がついてくれたの?)
しかし、期待したのも束の間。
ディーンの傍に金髪の女性が近づき、耳元で何やら囁いていた。
その後、音楽が鳴り始めダンスが始まるとディーンはその女性の手を取りホールの真ん中に足を向けた。
二人が踊る姿に目を逸らすアメリア。あまりのショックに胸が締め付けられ、庭の入り口から一旦外に出ることにした。
手入れが十分に行き届いてるせいか庭には様々な花が咲き乱れその美しさが心の動揺を落ち着かせてくれるようだ。
右手を見ると綺麗に剪定された灌木が並んでおり、その奥の小高い丘には薔薇の花に囲まれたガゼボが見える。
アメリアはガゼボに向かって歩き、そこで暫く気持ちを落ち着かせることにした。
椅子に腰掛けこれまでのことを反芻しながら溜息を零す。
何とか意を決し、立ち上がろうとしたとき煌びやかな衣装に身を包んだ懐かしい顔がこちらに向かってくることに気付いた。
「どうして……」
アメリアは我を忘れ、咄嗟に立ち上がり呟いた。
「やぁ、君、以前私と会ったことはない?」
「えっ?」
近づきながら問いかけるディーンの問いにアメリアは言葉を詰まらせた。
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