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第14話 会いたくて
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アメリアは迷っていた。
ずっとディーンを待ち続けてきたけれど、今世のディーンは前世のディーンとは違う生がある。
だから、もしディーンが今世で幸せを掴むのならアメリアの出る幕は無い。
アメリアの瞳に哀愁が漂い始めていた。
ディーンの転生を知った時は喜びに溢れていたのにアメリアは度々ディーンを水鏡で見る内に見た目は同じでも前世と違う立場であることを知り戸惑っていた。
しかし、次第にディーンにとってそれ程今の生が幸せでは無いことにアメリアは気が付いた。
それは、第二皇妃であるディーンの母親やその母親に付き従っていた乳母が何者かによって毒殺されたことからも明らかだった。
犯人が誰かアメリアには分かっていたが、それを皇宮に知らせる術は無かった。
しかも、その犯人は皇宮内にいる高位の人物であったため、追求するには確固たる証拠が必要であることもそれを困難にさせる理由だった。
ディーンの母親である第二皇妃は即効性の毒物ではなく遅効性の毒物によって死に至った。
そのため、皇宮内での第二皇妃の死因は病気によるものだと判定されてしまった。
真実を知るのはアメリアのみである。
第二皇妃が無くなるとディーンの生活は益々辛いものになった。
ディーンが体調不良に見舞われることも何度もあった。乳母が何とかディーンを守っていた様だが、その乳母もディーンが10才の時に亡くなってしまった。
ディーンの体調不良の原因が第二皇妃が亡くなった時の毒物による物であることをアメリアは知った。
巷では第二皇子は身体が弱いと言われていたが、そうではない。体調を崩していたのは、度々毒物を飲まされていたのが原因だ。
アメリアは、ディーンが体調不良になる度に夜中にディーンの部屋まで行き解毒薬を飲ませて事なきを得ていた。
ある夜、アメリアは例によってディーンの部屋を訪れていた。
その日は、満月のためいつもより部屋の中の様子が明るく感じられた。ディーンの部屋には皇子であることを象徴するように品の良い調度品が置かれていた。
部屋の奥には天蓋付きの大きなベッドがあることが直ぐに分かった。天蓋から下ろされた薄いカーテンの奥からはハァハァと荒い息づかいが聞こえてくる。
苦しそうに呼吸するディーンは額に汗を浮かべながら苦しそうに顔を歪めて寝ていた。
アメリアの記憶の中に居る17才のディーンよりも3才も若いせいかとても幼く見える。
アメリアは小さな小瓶に入った液体を口に含み、眠っているディーンの唇に自分の唇を合わせ流し込んだ。口端から僅かに零れる液体をハンカチで拭う。
「これでもう大丈夫ね」
立ち去ろうとした瞬間、手首を掴まれた。
驚き振り向くとアメリアの赤い瞳とディーンの見開いた深蒼の瞳の視線がぶつかった。
「君は……だれ?」
「誰でもないわ」
アメリアは微笑を携えて答えるとディーンの額に唇を落とした。
深蒼の瞳は更に見開き、アメリアを凝視したまま固まった。
「今は眠りなさい」
アメリアがそう言ってディーンの目の前に手を翳すとディーンの瞼はゆっくりと閉じ深い眠りの中に沈んでいった。
アメリアは異能力によってディーンの記憶を消し去った。
(これで私と今日会ったことは覚えてないわね)
安心してアメリアはその場を立ち去った。
(根本的な対策が必要だわ)
アメリアはそう考えていたが、貴族界は疎か人間界からさえも抹消されているアメリアには為す術がなかった。
(いっそのこと、ディーンに害為す者どもを全て消し去りたいわ。でも、余り人間界に干渉するとバランスを崩しすぎるってお父様が言っていたし。とりあえず、出来る限りディーンのことを見守るしかないわね)
そう心に決めるアリシアだった。
少しずつ時が流れ、スレイル帝國では第二王子の成人を祝うパーティーが行われる日となった。
スレイル帝國の成人は17歳。
前世で17歳で亡くなったディーンは、この時には転生前と同じ姿に成長していた。
そして、アメリアはただの令嬢としてディーンに会うべく計画を立てていた。
ディーンに再会するまであと少し。
アメリアの心は期待に胸を膨らませていた。
ずっとディーンを待ち続けてきたけれど、今世のディーンは前世のディーンとは違う生がある。
だから、もしディーンが今世で幸せを掴むのならアメリアの出る幕は無い。
アメリアの瞳に哀愁が漂い始めていた。
ディーンの転生を知った時は喜びに溢れていたのにアメリアは度々ディーンを水鏡で見る内に見た目は同じでも前世と違う立場であることを知り戸惑っていた。
しかし、次第にディーンにとってそれ程今の生が幸せでは無いことにアメリアは気が付いた。
それは、第二皇妃であるディーンの母親やその母親に付き従っていた乳母が何者かによって毒殺されたことからも明らかだった。
犯人が誰かアメリアには分かっていたが、それを皇宮に知らせる術は無かった。
しかも、その犯人は皇宮内にいる高位の人物であったため、追求するには確固たる証拠が必要であることもそれを困難にさせる理由だった。
ディーンの母親である第二皇妃は即効性の毒物ではなく遅効性の毒物によって死に至った。
そのため、皇宮内での第二皇妃の死因は病気によるものだと判定されてしまった。
真実を知るのはアメリアのみである。
第二皇妃が無くなるとディーンの生活は益々辛いものになった。
ディーンが体調不良に見舞われることも何度もあった。乳母が何とかディーンを守っていた様だが、その乳母もディーンが10才の時に亡くなってしまった。
ディーンの体調不良の原因が第二皇妃が亡くなった時の毒物による物であることをアメリアは知った。
巷では第二皇子は身体が弱いと言われていたが、そうではない。体調を崩していたのは、度々毒物を飲まされていたのが原因だ。
アメリアは、ディーンが体調不良になる度に夜中にディーンの部屋まで行き解毒薬を飲ませて事なきを得ていた。
ある夜、アメリアは例によってディーンの部屋を訪れていた。
その日は、満月のためいつもより部屋の中の様子が明るく感じられた。ディーンの部屋には皇子であることを象徴するように品の良い調度品が置かれていた。
部屋の奥には天蓋付きの大きなベッドがあることが直ぐに分かった。天蓋から下ろされた薄いカーテンの奥からはハァハァと荒い息づかいが聞こえてくる。
苦しそうに呼吸するディーンは額に汗を浮かべながら苦しそうに顔を歪めて寝ていた。
アメリアの記憶の中に居る17才のディーンよりも3才も若いせいかとても幼く見える。
アメリアは小さな小瓶に入った液体を口に含み、眠っているディーンの唇に自分の唇を合わせ流し込んだ。口端から僅かに零れる液体をハンカチで拭う。
「これでもう大丈夫ね」
立ち去ろうとした瞬間、手首を掴まれた。
驚き振り向くとアメリアの赤い瞳とディーンの見開いた深蒼の瞳の視線がぶつかった。
「君は……だれ?」
「誰でもないわ」
アメリアは微笑を携えて答えるとディーンの額に唇を落とした。
深蒼の瞳は更に見開き、アメリアを凝視したまま固まった。
「今は眠りなさい」
アメリアがそう言ってディーンの目の前に手を翳すとディーンの瞼はゆっくりと閉じ深い眠りの中に沈んでいった。
アメリアは異能力によってディーンの記憶を消し去った。
(これで私と今日会ったことは覚えてないわね)
安心してアメリアはその場を立ち去った。
(根本的な対策が必要だわ)
アメリアはそう考えていたが、貴族界は疎か人間界からさえも抹消されているアメリアには為す術がなかった。
(いっそのこと、ディーンに害為す者どもを全て消し去りたいわ。でも、余り人間界に干渉するとバランスを崩しすぎるってお父様が言っていたし。とりあえず、出来る限りディーンのことを見守るしかないわね)
そう心に決めるアリシアだった。
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前世で17歳で亡くなったディーンは、この時には転生前と同じ姿に成長していた。
そして、アメリアはただの令嬢としてディーンに会うべく計画を立てていた。
ディーンに再会するまであと少し。
アメリアの心は期待に胸を膨らませていた。
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