4 / 24
第4話 玄の書
しおりを挟む
ある夜、ドラキュリア伯爵邸では家族の者しか入れない秘密の部屋で家族会議が開かれていた。
その部屋は、結界が張られた本邸の地下室から秘密路で繋がれた場所にあった。
招集したのは当然のことながらドラキュリア伯爵家当主フレデリックである。
冥界神ハデスによってもたらされた神の書である「玄の書」が突然明滅し封印が解かれた為、緊急に対策する必要があったのだ。
なぜなら、封印が解かれたと言うことはドラキュリア一族の危機を察知したことを意味するからだ。
「玄の書」はドラキュリア一族の当主のみに伝わる神書であり、一族の絶滅を避けるべく冥界神との血の契約について示されていると言われている。
神力によって成されるその契約は一族の当主にのみ伝えられていた。
今までどんなにその硬い表紙を開こうとしても開くことが出来なかった「玄の書」はその事が嘘のようにひとりでにページが捲られたのだった。
そこには光を帯びた文字でこう書かれていた。
ーーーー血の儀式を遂行せよ さもなくば血が途絶えるのを覚悟せよーーーー
それは冥界神ハデスの啓示であった。
これは由々しき事態である。もし、このまま何もしなければドラキュリア一族は神の啓示の通り滅びの一途を辿るであろうことは明白であったのだから。
ドラキュリア一族の本家であるドラキュリア伯爵の家族が顔を揃えていた。
そこに座するのは、ドラキュリア伯爵家当主フレデリック、その夫人のミルドレッド、嫡男のレイナード、長女のアメリア、次女のメイファの五人である。
白い壁で覆われた会議室には10人程が座れる楕円形の黒いテーブルがあり、その奥には「玄の祭壇」があった。
「玄の祭壇」の中央の高い位置には黒曜石で造られた冥界の神ハデスの像があり、その両側には同じく黒曜石で造られた柱がある。
その中央にある腰ほどの高さの黒曜石の台座には神書である「玄の書」が開かれたままで置かれていた。
「玄の書」は台座の上で未だに明滅している。この明滅が切れるまでに血の儀式を終えなければ一族が滅びることになるのだ。
会議室の上座には短めの金髪に深緑の瞳を持つドラキュリア伯爵家当主フレデリックが座っている。アメリアの容貌はフレデリックの血を濃く受け継いでいた。
隣に麻色の髪と薄茶の瞳のドラキュリア伯爵夫人ミルドレット、フレデリックと向かい合って座るのは麻色の髪と深緑の瞳のレイナードである。
その隣にはアメリア、アメリアより二つ年下のレイナードと同じ色を持つメイファが続いて座っていた。
緊張の面持ちで当主の言葉を待つ面々。
これから話される言葉は、明るい話では無いことだけは確かだと誰もが分かっていた。
ここ最近、フレデリックが何らかの対策に追われて食事は疎か睡眠さえ碌に取れてないことはその顔色を見れば明白だった。
伯爵夫人のミルドレッドは夫のことが心配で仕方が無かったが、よっぽどの事態であることを肌で感じていたので何も言うことは出来なかった。
空気の流れさえ感じられるほどの静寂の中、フレデリックが覚悟を決めたように重い口を開いた。
「…………ダリル一家が殺された……」
その部屋は、結界が張られた本邸の地下室から秘密路で繋がれた場所にあった。
招集したのは当然のことながらドラキュリア伯爵家当主フレデリックである。
冥界神ハデスによってもたらされた神の書である「玄の書」が突然明滅し封印が解かれた為、緊急に対策する必要があったのだ。
なぜなら、封印が解かれたと言うことはドラキュリア一族の危機を察知したことを意味するからだ。
「玄の書」はドラキュリア一族の当主のみに伝わる神書であり、一族の絶滅を避けるべく冥界神との血の契約について示されていると言われている。
神力によって成されるその契約は一族の当主にのみ伝えられていた。
今までどんなにその硬い表紙を開こうとしても開くことが出来なかった「玄の書」はその事が嘘のようにひとりでにページが捲られたのだった。
そこには光を帯びた文字でこう書かれていた。
ーーーー血の儀式を遂行せよ さもなくば血が途絶えるのを覚悟せよーーーー
それは冥界神ハデスの啓示であった。
これは由々しき事態である。もし、このまま何もしなければドラキュリア一族は神の啓示の通り滅びの一途を辿るであろうことは明白であったのだから。
ドラキュリア一族の本家であるドラキュリア伯爵の家族が顔を揃えていた。
そこに座するのは、ドラキュリア伯爵家当主フレデリック、その夫人のミルドレッド、嫡男のレイナード、長女のアメリア、次女のメイファの五人である。
白い壁で覆われた会議室には10人程が座れる楕円形の黒いテーブルがあり、その奥には「玄の祭壇」があった。
「玄の祭壇」の中央の高い位置には黒曜石で造られた冥界の神ハデスの像があり、その両側には同じく黒曜石で造られた柱がある。
その中央にある腰ほどの高さの黒曜石の台座には神書である「玄の書」が開かれたままで置かれていた。
「玄の書」は台座の上で未だに明滅している。この明滅が切れるまでに血の儀式を終えなければ一族が滅びることになるのだ。
会議室の上座には短めの金髪に深緑の瞳を持つドラキュリア伯爵家当主フレデリックが座っている。アメリアの容貌はフレデリックの血を濃く受け継いでいた。
隣に麻色の髪と薄茶の瞳のドラキュリア伯爵夫人ミルドレット、フレデリックと向かい合って座るのは麻色の髪と深緑の瞳のレイナードである。
その隣にはアメリア、アメリアより二つ年下のレイナードと同じ色を持つメイファが続いて座っていた。
緊張の面持ちで当主の言葉を待つ面々。
これから話される言葉は、明るい話では無いことだけは確かだと誰もが分かっていた。
ここ最近、フレデリックが何らかの対策に追われて食事は疎か睡眠さえ碌に取れてないことはその顔色を見れば明白だった。
伯爵夫人のミルドレッドは夫のことが心配で仕方が無かったが、よっぽどの事態であることを肌で感じていたので何も言うことは出来なかった。
空気の流れさえ感じられるほどの静寂の中、フレデリックが覚悟を決めたように重い口を開いた。
「…………ダリル一家が殺された……」
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
[連載中]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ@異世界恋愛ざまぁ連載
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢に転生したはずなのに!?
もふきゅな
恋愛
現代日本の普通一般人だった主人公は、突然異世界の豪華なベッドで目を覚ます。鏡に映るのは見たこともない美しい少女、アリシア・フォン・ルーベンス。悪役令嬢として知られるアリシアは、王子レオンハルトとの婚約破棄寸前にあるという。彼女は、王子の恋人に嫌がらせをしたとされていた。
王子との初対面で冷たく婚約破棄を告げられるが、美咲はアリシアとして無実を訴える。彼女の誠実な態度に次第に心を開くレオンハルト
悪役令嬢としてのレッテルを払拭し、彼と共に幸せな日々を歩もうと試みるアリシア。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる