6 / 9
第6話 黒の貴婦人
しおりを挟む
約三ヶ月前の事です。
私は意を決して、馬車で深淵の森に足を踏み入れました。馬車は侯爵家にばれないように貸馬車を利用しました。目的は恋愛フィクサーと呼ばれる漆黒の貴婦人に会うために。
暫く森の中を進むと黒い霧が現れました。
馭者は途中まで行くと突然馬車を止め、私に問いかけます。
「お嬢さん、本当にこの先に行くのですか? 霧が大分濃くなって来ましたが」
「問題有りませんわ。このまま進んで頂戴」
私は馭者になんでもないかのように答えました。
何故なら、この光景は事前にメリッサに聞いていた通りだったからです。
暫く行くと錆びた門の前で馬車が止まりました。
するとその門は自動的に開き敷地内の通路の脇にある外灯が道案内をするかのように手前から順に灯って行きました。
馬車が止まり、馬車から降りると目の前に石造りの蔦に絡まれた邸があることが分かりました。
エントランスが自動に開き私を招いているようです。
邸内に入ると直ぐに執事服を着た銀髪碧眼の若い男性が私の目の前に現れました。執事にしておくのは勿体ないくらい我国の王子様よりも王子らしい見た目です。
外観は廃墟の様だったのに、室内は荘厳な調度品で溢れています。
「ようこそお出で下さいました。主がお待ちです」
恭しく頭を下げ挨拶し、すぐに歩き始めたので私は慌ててその後に着いて行きました。
案内された部屋には黒いシンプルなドレスを着た妖艶な美女が執務机の前に座っていました。
真っ直ぐに腰まで流れる烏の濡れ羽色の髪はどこまでも艶やかで妖しげな紅い瞳に妖艶に輝く紅い唇。
人外のように美しい女性に私の目は一瞬釘付けになってしまいました。
「いらっしゃい、リリアンナさん。お待ちしておりましたわ」
先触れも出していないばかりか初めて会ったというのに名前も私が来る事も分かっていたことに驚きました。
「どうして、私が来ると……? それに私の名前も……」
「クスクスッ。それは水鏡に映っていたからよ。近いうちに必ず来るだろうとは思っていたのよ。私の名前はアメリア。よろしくね」
笑みを浮かべるアメリア様の妖しげな瞳が揺らめきました。
水鏡? 何のことか私は瞬時に理解できませんでした。
「あっ、あの……こちらこそよろしくお願いします」
ハッとして焦ったようにお辞儀をする私。危なく挨拶することさえも忘れてしまいそうになりました。
「早速だけど、貴方の望みは何かしら? メリッサさんを通してだからチラッとしか貴女のことが見えなかったの。こちらに来てこの水鏡に貴女の血を一滴貰っていいかしら?」
私は意を決して、馬車で深淵の森に足を踏み入れました。馬車は侯爵家にばれないように貸馬車を利用しました。目的は恋愛フィクサーと呼ばれる漆黒の貴婦人に会うために。
暫く森の中を進むと黒い霧が現れました。
馭者は途中まで行くと突然馬車を止め、私に問いかけます。
「お嬢さん、本当にこの先に行くのですか? 霧が大分濃くなって来ましたが」
「問題有りませんわ。このまま進んで頂戴」
私は馭者になんでもないかのように答えました。
何故なら、この光景は事前にメリッサに聞いていた通りだったからです。
暫く行くと錆びた門の前で馬車が止まりました。
するとその門は自動的に開き敷地内の通路の脇にある外灯が道案内をするかのように手前から順に灯って行きました。
馬車が止まり、馬車から降りると目の前に石造りの蔦に絡まれた邸があることが分かりました。
エントランスが自動に開き私を招いているようです。
邸内に入ると直ぐに執事服を着た銀髪碧眼の若い男性が私の目の前に現れました。執事にしておくのは勿体ないくらい我国の王子様よりも王子らしい見た目です。
外観は廃墟の様だったのに、室内は荘厳な調度品で溢れています。
「ようこそお出で下さいました。主がお待ちです」
恭しく頭を下げ挨拶し、すぐに歩き始めたので私は慌ててその後に着いて行きました。
案内された部屋には黒いシンプルなドレスを着た妖艶な美女が執務机の前に座っていました。
真っ直ぐに腰まで流れる烏の濡れ羽色の髪はどこまでも艶やかで妖しげな紅い瞳に妖艶に輝く紅い唇。
人外のように美しい女性に私の目は一瞬釘付けになってしまいました。
「いらっしゃい、リリアンナさん。お待ちしておりましたわ」
先触れも出していないばかりか初めて会ったというのに名前も私が来る事も分かっていたことに驚きました。
「どうして、私が来ると……? それに私の名前も……」
「クスクスッ。それは水鏡に映っていたからよ。近いうちに必ず来るだろうとは思っていたのよ。私の名前はアメリア。よろしくね」
笑みを浮かべるアメリア様の妖しげな瞳が揺らめきました。
水鏡? 何のことか私は瞬時に理解できませんでした。
「あっ、あの……こちらこそよろしくお願いします」
ハッとして焦ったようにお辞儀をする私。危なく挨拶することさえも忘れてしまいそうになりました。
「早速だけど、貴方の望みは何かしら? メリッサさんを通してだからチラッとしか貴女のことが見えなかったの。こちらに来てこの水鏡に貴女の血を一滴貰っていいかしら?」
7
あなたにおすすめの小説
愛を騙るな
篠月珪霞
恋愛
「王妃よ、そなた一体何が不満だというのだ」
「………」
「贅を尽くした食事、ドレス、宝石、アクセサリー、部屋の調度も最高品質のもの。王妃という地位も用意した。およそ世の女性が望むものすべてを手に入れているというのに、何が不満だというのだ!」
王妃は表情を変えない。何を言っても宥めてもすかしても脅しても変わらない王妃に、苛立った王は声を荒げる。
「何とか言わぬか! 不敬だぞ!」
「……でしたら、牢に入れるなり、処罰するなりお好きに」
「い、いや、それはできぬ」
「何故? 陛下の望むままなさればよろしい」
「余は、そなたを愛しているのだ。愛するものにそのような仕打ち、到底考えられぬ」
途端、王妃の嘲る笑い声が響く。
「畜生にも劣る陛下が、愛を騙るなどおこがましいですわね」
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』
鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。
だからこそ転生後に誓った――
「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。
気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。
「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」
――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。
なぜか気づけば、
・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変
・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功
・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす
・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末
「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」
自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、
“やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。
一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、
実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。
「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」
働かないつもりだった貴族夫人が、
自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。
これは、
何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜
夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」
婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。
彼女は涙を見せず、静かに笑った。
──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。
「そなたに、我が祝福を授けよう」
神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。
だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。
──そして半年後。
隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、
ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。
「……この命、お前に捧げよう」
「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」
かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。
──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、
“氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
不実なあなたに感謝を
黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。
※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。
※曖昧設定。
※一旦完結。
※性描写は匂わせ程度。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる