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第3話 婚約破棄
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「そんな、殿下は私をもう愛しては下さらないのですか?」
「何を言っている? 私は初めから君のことなど眼中にない」
奇しくも、今現在も婚約者である私にかける言葉とは思えません。
「そんな……」
私はめいっぱい哀しそうな顔をして涙を流します。
ああ、どうしましょう。中々涙が零れませんわ。
そうですわ。昨年亡くなった私が飼っていたカナリアのピピちゃんを思い出しましょう。
ピピちゃんの元気だった姿を思い出した途端、私の瞳が潤んで一筋の涙が流れてきました。
「殿下に愛する人が出来たのなら仕方がありません。私は殿下の幸せの為に身を引きましょう。婚約破棄の件、承りました」
私は涙を流しながら、態とらしいくらいに恭しく殿下に頭を下げました。
ーーーーいいですか? リリアンナさん。貴女は殿下のことを心から愛しているという素振りをして下さいね。貴女が彼を求める程に彼は貴女から逃げようとするでしょうからーーーー
「そうか、では改めて婚約破棄の書類を届けようとしよう」
「その必要はございません。こちらにサインをお願いします。婚約破棄証明書でございます」
私は、バッグから書面を取り出すとすぐさま殿下にそれを差し出しました。殿下が戸惑うのも無理はありません。
黒の貴婦人の助言が私の頭を掠めました。
「こんなものを準備しているとは! 君は私を愛していると言いながら何故こんな物を持っているのだ?」
殿下が訝しげに私に問いかけました。
「これは私に取ってお守りだったのです。殿下が私を愛していないことはうすうす感づいておりました。ですから、私は万が一他に殿下に愛する人が現れたら最初から身を引くつもりだったのです。恋する気持ちは誰にも止められませんもの。私はただ、殿下には愛する人と幸せになって欲しいと思っているのです」
「君は、本当にいいのか? 俺と婚約破棄しても」
あら? おかしな事を言うものですね。そう仰ったのは殿下の筈ですのに。
心の中でそう返事をしつつ哀しそうに言葉を発する。
「ええ、殿下の幸せを願うなら仕方がありませんわ。ですからご遠慮なさらないで下さいませ。この書類を提出すれば婚約破棄は叶います。私のお父様には私から言っておきますわ。ですから陛下には殿下からお伝え下さいね」
私がそこまで言うと、殿下は覚悟を決めたように婚約破棄証書にサインをしたのでした。
ーーーー考える時間を与えてはいけませんよ。口約束もいけません。その場所で直ぐに書面にサインをしてもらう為に事前に準備をして置いて下さいーーーー
黒の貴婦人に言われたとおりにこうして書面を準備していたお陰ですんなり婚約破棄の手続きが進んでいくことでしょう。
彼女には感謝しても感謝仕切れません。これで私は愛する人と婚姻することが出来るのですから……。
「何を言っている? 私は初めから君のことなど眼中にない」
奇しくも、今現在も婚約者である私にかける言葉とは思えません。
「そんな……」
私はめいっぱい哀しそうな顔をして涙を流します。
ああ、どうしましょう。中々涙が零れませんわ。
そうですわ。昨年亡くなった私が飼っていたカナリアのピピちゃんを思い出しましょう。
ピピちゃんの元気だった姿を思い出した途端、私の瞳が潤んで一筋の涙が流れてきました。
「殿下に愛する人が出来たのなら仕方がありません。私は殿下の幸せの為に身を引きましょう。婚約破棄の件、承りました」
私は涙を流しながら、態とらしいくらいに恭しく殿下に頭を下げました。
ーーーーいいですか? リリアンナさん。貴女は殿下のことを心から愛しているという素振りをして下さいね。貴女が彼を求める程に彼は貴女から逃げようとするでしょうからーーーー
「そうか、では改めて婚約破棄の書類を届けようとしよう」
「その必要はございません。こちらにサインをお願いします。婚約破棄証明書でございます」
私は、バッグから書面を取り出すとすぐさま殿下にそれを差し出しました。殿下が戸惑うのも無理はありません。
黒の貴婦人の助言が私の頭を掠めました。
「こんなものを準備しているとは! 君は私を愛していると言いながら何故こんな物を持っているのだ?」
殿下が訝しげに私に問いかけました。
「これは私に取ってお守りだったのです。殿下が私を愛していないことはうすうす感づいておりました。ですから、私は万が一他に殿下に愛する人が現れたら最初から身を引くつもりだったのです。恋する気持ちは誰にも止められませんもの。私はただ、殿下には愛する人と幸せになって欲しいと思っているのです」
「君は、本当にいいのか? 俺と婚約破棄しても」
あら? おかしな事を言うものですね。そう仰ったのは殿下の筈ですのに。
心の中でそう返事をしつつ哀しそうに言葉を発する。
「ええ、殿下の幸せを願うなら仕方がありませんわ。ですからご遠慮なさらないで下さいませ。この書類を提出すれば婚約破棄は叶います。私のお父様には私から言っておきますわ。ですから陛下には殿下からお伝え下さいね」
私がそこまで言うと、殿下は覚悟を決めたように婚約破棄証書にサインをしたのでした。
ーーーー考える時間を与えてはいけませんよ。口約束もいけません。その場所で直ぐに書面にサインをしてもらう為に事前に準備をして置いて下さいーーーー
黒の貴婦人に言われたとおりにこうして書面を準備していたお陰ですんなり婚約破棄の手続きが進んでいくことでしょう。
彼女には感謝しても感謝仕切れません。これで私は愛する人と婚姻することが出来るのですから……。
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