128 / 130
連載
第百五十三話 希望の光
しおりを挟む
エミュウさんとノアの話を聞いた私は、思わず涙が溢れそうになっていた。
私が気がつかないうちに私を助けてくれて人達がここにもいたなんて……
生きることを諦めてしまった嘗ての私……ベアトリーチェの心の底に沈んでいた罪悪感が浮上してくる。
心が未熟だった私。
何も考えられなかった私。
全てに絶望した私。
そんなベアトリーチェの心をカリンの記憶で強化された私の心が宥める。
もういいよ……ベアトリーチェ。
貴方はもう大丈夫。
辛いことはもう訪れないよ。
貴方には私がいるし、周りにはこんなにも優しい人達で溢れている。
これからも私を助けてくれるだろうし、きっとみんなで幸せになれる。
私がお店を開いて得意な料理をみんなに振る舞えばきっとその場所は笑顔で溢れるから。
胸に手を当てて心中に語りかけると僅かに残っていたベアトリーチェの自責の念が浄化されるように感じた。
「カリンちゃん、私の話から分かったと思うけど、私と私の父はクラレシアの結界を破るための魔導具を開発してしまったの。その時はまさかそんな魔導具だと思わなかったけど、後で知ってとても後悔したわ。謝っても許されることではないけど本当にごめんなさい」
『いや、エミュウ……僕の魔力がなければあの魔導具は起動しなかった。僕の責任の方が大きいよ。今更だけどそれでも僕を助けてくれてありがとう』
「エミュウさん、ノア、あの魔導具を起動させたのは私なの。そんな魔導具だと知らなかったとはいえ……」
エミュウさんとノアの告白に私は言葉を詰まらせた。
「ねえ、カリンちゃん。私達は間違いを犯してしまったわ。間違いを犯さない人なんていないと思うの……まぁ、ノアは人では無いけど……。過ぎてしまったことを悔やんでも仕方がないと思うの。もうどんなことをしたって元には戻せないもの。だから、これからどう生きるかだと思うのよ。私はね、これからももっとたくさん魔導具を開発してこの世界をもっと住みやすくしようと思っているのよ。カリンちゃんだってお店を開いてたくさんの人を笑顔にしたいって言ってたじゃない?」
エミュウさんは穏やかな笑顔を向けて私の瞳を見つめた。その瞳の中には後悔の念よりも希望の光が宿っているみたいにキラキラしていた。
ああ、そうだ。ついつい過去の後悔に囚われそうになってしまったけど、希望の光はいつだって直ぐそこにあったんだ。
きっとこれからも私が困ったときは周りに居る優しい人達が助けてくれる。私はただみんなを信じて、自分を信じて私がやりたいことをすれば良いんだ。
みんなを笑顔にする為に、私自身が笑顔になる為に。
「ありがとう、エミュウさん、ノア」
ここで私が言うべき言葉は、後悔の言葉ではなくて感謝の言葉だと思った。
「私こそありがとう、カリンちゃん。カリンちゃんの料理を初めて食べたとき、あまりに懐かしくて涙が出そうになったわ。本当においしくて……」
「ふふふっ、こう見えても私、前世ではプロの料理人だったから。料理だけは得意なの。ねぇ、よかったら夕飯も食べていかない? 栗ご飯もあるのよ」
「うれしい! 栗ご飯! 私、栗が大好きなの。さっきの栗のスイーツ盛り合わせも美味しかったわ」
私の誘いにエミュウさんの瞳が輝いた。その横で黒猫の瞳も輝いている。
白猫の瞳も輝いているがこれはいつものことだ。スルーで良いだろう。
「クスッ、もちろんノアにも用意するわね」
私はそう言って食品庫に作り置きしていた料理をテーブルに運ぼうとするとエミュウさんも手伝ってくれた。
エミュウさんと前世のことを話しながら夕食をしていて分かったのだが、何とエミュウさんは前世で天寿を全うしたそうだ。
「正確には覚えてないけど、日本人の平均寿命は生きたと思うわ」と言っていたから、きっと80才は超えていたのだろう。
今は29才だと言っていたからトータルすると私の倍以上は人生経験が豊富だと言うことだ。
どうりで落ち着いていると思った私だった。
私が気がつかないうちに私を助けてくれて人達がここにもいたなんて……
生きることを諦めてしまった嘗ての私……ベアトリーチェの心の底に沈んでいた罪悪感が浮上してくる。
心が未熟だった私。
何も考えられなかった私。
全てに絶望した私。
そんなベアトリーチェの心をカリンの記憶で強化された私の心が宥める。
もういいよ……ベアトリーチェ。
貴方はもう大丈夫。
辛いことはもう訪れないよ。
貴方には私がいるし、周りにはこんなにも優しい人達で溢れている。
これからも私を助けてくれるだろうし、きっとみんなで幸せになれる。
私がお店を開いて得意な料理をみんなに振る舞えばきっとその場所は笑顔で溢れるから。
胸に手を当てて心中に語りかけると僅かに残っていたベアトリーチェの自責の念が浄化されるように感じた。
「カリンちゃん、私の話から分かったと思うけど、私と私の父はクラレシアの結界を破るための魔導具を開発してしまったの。その時はまさかそんな魔導具だと思わなかったけど、後で知ってとても後悔したわ。謝っても許されることではないけど本当にごめんなさい」
『いや、エミュウ……僕の魔力がなければあの魔導具は起動しなかった。僕の責任の方が大きいよ。今更だけどそれでも僕を助けてくれてありがとう』
「エミュウさん、ノア、あの魔導具を起動させたのは私なの。そんな魔導具だと知らなかったとはいえ……」
エミュウさんとノアの告白に私は言葉を詰まらせた。
「ねえ、カリンちゃん。私達は間違いを犯してしまったわ。間違いを犯さない人なんていないと思うの……まぁ、ノアは人では無いけど……。過ぎてしまったことを悔やんでも仕方がないと思うの。もうどんなことをしたって元には戻せないもの。だから、これからどう生きるかだと思うのよ。私はね、これからももっとたくさん魔導具を開発してこの世界をもっと住みやすくしようと思っているのよ。カリンちゃんだってお店を開いてたくさんの人を笑顔にしたいって言ってたじゃない?」
エミュウさんは穏やかな笑顔を向けて私の瞳を見つめた。その瞳の中には後悔の念よりも希望の光が宿っているみたいにキラキラしていた。
ああ、そうだ。ついつい過去の後悔に囚われそうになってしまったけど、希望の光はいつだって直ぐそこにあったんだ。
きっとこれからも私が困ったときは周りに居る優しい人達が助けてくれる。私はただみんなを信じて、自分を信じて私がやりたいことをすれば良いんだ。
みんなを笑顔にする為に、私自身が笑顔になる為に。
「ありがとう、エミュウさん、ノア」
ここで私が言うべき言葉は、後悔の言葉ではなくて感謝の言葉だと思った。
「私こそありがとう、カリンちゃん。カリンちゃんの料理を初めて食べたとき、あまりに懐かしくて涙が出そうになったわ。本当においしくて……」
「ふふふっ、こう見えても私、前世ではプロの料理人だったから。料理だけは得意なの。ねぇ、よかったら夕飯も食べていかない? 栗ご飯もあるのよ」
「うれしい! 栗ご飯! 私、栗が大好きなの。さっきの栗のスイーツ盛り合わせも美味しかったわ」
私の誘いにエミュウさんの瞳が輝いた。その横で黒猫の瞳も輝いている。
白猫の瞳も輝いているがこれはいつものことだ。スルーで良いだろう。
「クスッ、もちろんノアにも用意するわね」
私はそう言って食品庫に作り置きしていた料理をテーブルに運ぼうとするとエミュウさんも手伝ってくれた。
エミュウさんと前世のことを話しながら夕食をしていて分かったのだが、何とエミュウさんは前世で天寿を全うしたそうだ。
「正確には覚えてないけど、日本人の平均寿命は生きたと思うわ」と言っていたから、きっと80才は超えていたのだろう。
今は29才だと言っていたからトータルすると私の倍以上は人生経験が豊富だと言うことだ。
どうりで落ち着いていると思った私だった。
371
お気に入りに追加
2,433
あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました

家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
追放された薬師は騎士と王子に溺愛される 薬を作るしか能がないのに、騎士団の皆さんが離してくれません!
沙寺絃
ファンタジー
唯一の肉親の母と死に別れ、田舎から王都にやってきて2年半。これまで薬師としてパーティーに尽くしてきた16歳の少女リゼットは、ある日突然追放を言い渡される。
「リゼット、お前はクビだ。お前がいるせいで俺たちはSランクパーティーになれないんだ。明日から俺たちに近付くんじゃないぞ、このお荷物が!」
Sランクパーティーを目指す仲間から、薬作りしかできないリゼットは疫病神扱いされ追放されてしまう。
さらにタイミングの悪いことに、下宿先の宿代が値上がりする。節約の為ダンジョンへ採取に出ると、魔物討伐任務中の王国騎士団と出くわした。
毒を受けた騎士団はリゼットの作る解毒薬に助けられる。そして最新の解析装置によると、リゼットは冒険者としてはFランクだが【調合師】としてはSSSランクだったと判明。騎士団はリゼットに感謝して、専属薬師として雇うことに決める。
騎士団で認められ、才能を開花させていくリゼット。一方でリゼットを追放したパーティーでは、クエストが失敗続き。連携も取りにくくなり、雲行きが怪しくなり始めていた――。
滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!
白夢
ファンタジー
何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。
そう言われて、異世界に転生することになった。
でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。
どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。
だからわたしは旅に出た。
これは一人の幼女と小さな幻獣の、
世界なんて救わないつもりの放浪記。
〜〜〜
ご訪問ありがとうございます。
可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。
ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。
お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします!
23/01/08 表紙画像を変更しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。