転生少女は異世界で理想のお店を始めたい 猫すぎる神獣と一緒に、自由気ままにがんばります!

梅丸みかん

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第百話 王女の足取り

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 荒れ果てた祖国の地を後にしてクラレシア神聖王国の王女ベアトリーチェを捜しながら旅をするアーニャ、ワシリー、エゴンの三剣士はラナン連合国からティディアール王国最北端パスティナ領に足を踏み入れた。

 この地はクラレシアの難民を最も多く受け入れてくれた場所だった。だが、何度も足を運び王女ベアトリーチェを捜したが彼女を見つけることが出来なかった。

 ふと気がつくと何やら兵士が難民達に呼びかけている事に気がついた。

「何かあったのか?」
 アーニャは独りの兵士に近づくと問いかけた。

「君達は?」
「私は元クラレシア神聖王国の騎士で三剣士の一人と言われている、アーニャ・カミンスキだ」
「同じくワシリー・コレニアだ」
「私はエゴン・パスティアだ。よろしく頼む」
 兵士の質問にアーニャに続いてワシリー、エゴンが挨拶をした。

「ほう、クラレシアの騎士達か? 実はタングスティン領で人材を募集しているのだ。元クラレシアの民ならば魔力量も多く魔法技術も高いだろうからもってこいだとタングスティン領主様のご要望だ」

「なるほど、確かに我国の民は他国に比べれば魔力量は多いだろう。所でどんな仕事なんだ?」
「いくつか工房を建設しているからそこで働いてくれる者を雇いたいそうだ」

「工房? どんな種類の工房だ?」
「確か、大規模な食品工房や魔導具工房だと聞いている。詳しくは向こうに着いてから説明されると思うが、住居も保証されているし賃金も破格だということだ。待遇はかなりいいと思う」

 アーニャは兵士の言葉に考え込んだ。クラレシア神聖王国の侵略戦争から約2年半が過ぎている。

 ドメル帝国の目的は魔力が多いクラレシアの民を確保すること。その中でも最優先事項は、クラレシア女王メディアーナ様と王女であるベアトリーチェ様であったことは間違いないだろう。

 それに加え、あわよくばクラレシアの豊かな土地を自国の領土に取り込むことも視野に入れていたに違いない。

 しかし、侵略の際にドメル帝国の魔導具を使って撒き散らした瘴気によってクラレシア神聖王国内は見る影もないほど荒れ果ててしまった。そんな場所にはもはや利用価値を見いだせないと知り彼らは撤退したようだが、自分達で我国を汚しながら勝手なものだ。

 元々、クラレシア神聖王国は聖地であり、それを守るのが我々レーシア族の役割であった。それを違えてしまった。聖地を守ることが出来なかったのだ。

 ベアトリーチェ様なら蘇らせることができるだろうが、未だに見つかっていない。

 このままクラレシアの民を難民キャンプに留まらせても先が見えない。ならば、タングスティン領で仕事に就いた方が良いのかも知れない。

 給金も出て住居も提供してくれるのならば待遇は悪くないだろう。

「どれくらいの人数を募集している?」
「特に人数は指定されていない。出来るだけ多くの人材をと言うことだ。その為、ドメル帝国の難民でもいいそうだ」

「何? ドメル帝国だと?」
 アーニャが怒りの表情を露わにして声を荒げた。

「ドメル帝国? いくら人材が欲しいからと言って彼らを受け入れて大丈夫なのか?」
 ワシリーも疑問を投げかけたが、エゴンは無言で眉間に皺を寄せているだけだった。

 このクラレシア神聖王国の難民キャンプから馬車で数時間ほど離れた場所にドメル帝国の難民キャンプも存在することはアーニャ達は確認済みだった。

 クラレシア神聖王国の難民キャンプと違ってぐるりと魔法壁が施されたドメル帝国の難民キャンプは出入りが制限されていた。

 それは、ドメル帝国の国民は例え難民と言えどもティディアール王国から信頼されていないことを如実に表していた。

 それはそうだ。難民の中に間諜が紛れ込んでいないとは言えないのだから。

「ああ、そうだな。貴殿達が訝しがるのも無理はない。しかし、ドメル帝国の難民には隷属魔法の契約を施すとのことだ」

「隷属魔法の契約……そうか。だが、殆どが一般庶民だろう? 大丈夫なのか?」
 ワシリーが心配げに兵士に問うた。

「はははっ、クラレシアの騎士殿はお優しい。仮にも自国を滅ぼした敵国だと言うのに。まあ、騎士殿達の心配には及ばない。隷属魔法とは言え緩い縛りになるだろうからな。そこはタングスティン領の領主と王宮の審議会での決定に従うのだろうけど」

「そうか。仕事を貰えるのは我が民達にとっては願っても無いことだ。それよりもタングスティン領まではどれくらいの日数がかかるのだ?」

 アーニャは兵士の言葉にホッとしたものの、これから行く自国の者達の長い旅路を案じた。

「そうだな。通常なら一週間程だが、大人数で子供や年老いた者もいるようだから十日から二週間位は見ている。但し、出発は一月後だ。それまでに希望者の適性や名簿を作る必要があるからな。もちろん、移動の際は護衛をつけるので心配はいらない。」

「護衛?」

「ああ、シルバーランク以上の冒険者だ。腕も経験も確かだから心配には及ばない。まぁ、一月以内にはこの場所に集まるだろう」

 アーニャは兵士の言葉に少なからず安堵した。ワシリーもエゴンも兵士の言葉に納得したようでそれ以上何も言うことは無かった。

「それで? 騎士殿達はどうされる? 一緒にタングスティン領に向かわれるか?」
「我々も民達の行く末を見届けたいのは山々なのだが、我国の王女殿下を捜さなければならない」
「王女殿下? クラレシア神聖王国の王女殿下ですか? その……王女殿下はご存命なのですか?」
「ああ、間違いない」

 エゴンは兵士の問いにきっぱりと答えた。

「念のため、其方にも問おう。王女殿下はベアトリーチェ様と言う名だ。髪の色は我々と同じ藍色だが、瑠璃色の瞳をしている。年は13才だ。見覚えはないだろうか?」

「藍色の髪に瑠璃色の瞳……。それだけの特徴があれば一度見たら忘れないだろう。申し訳ないが私には心当たりがない。それにこのパスティナ領以外では藍色の髪の民は私は見た事が無い」

 クラレシアの三人の騎士達は兵士の言葉を聞いて僅かな期待も霧散したのだった。
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