転生少女は異世界で理想のお店を始めたい 猫すぎる神獣と一緒に、自由気ままにがんばります!

梅丸みかん

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連載

第九十六話 エンサの町【海の幸を手に入れよう】

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「ああ、俺は強いからね。心配しなくても大丈夫さ」

 私はショウの元気そうな声を聞いて安堵した。

「ショウ、私ねもうすぐお店をオープン出来ると思うの。今着々と準備中よ。オープンしたら是非ショウにも食べに来て貰いたいわ」
「そうか、それは楽しみだな。絶対食べに行くよ。それにしてもカリンに会いたいなぁ。離れてから少ししか経っていないのにカリンが恋しいよ」

 ショウは恥ずかしげもなくそんな言葉を宣う。

 いや、私達恋人同士とかじゃないよね。

 頬が火照ってくるのを感じつつ心の中で突っ込む。

 あっ、でも私が恋しいのじゃなく私の作った料理が恋しいのかも。

 危ない、危ない。すっかり勘違いしそうになったわ。

「ショウが帰ってくるまでメニューも色々考えながら待っているわね。無理しないで頑張ってね」

「カリンも無理するなよ。早く帰れるように頑張るよ。カリンの料理楽しみにしているよ」

 私はショウと夫婦の様な会話をしながら、やっぱり私の料理が恋しいのねと確信した。



 ショウの元気そうな声を聞いて安心した私は、お店をオープンする為に準備を進めることにした。

 調味料は何とか手に入れることが出来た。

「さて、次は……そうねぇ、海の幸でも手に入れましょうか」

『ほう、海の幸とな。それは美味そうだな』

 多分海の幸が何かを分かってはいないのだろうが、知らないくせに目を輝かせるグレン。

「グレン、海に行きたいんだけど、グレンの背に乗せて貰っていいかしら?」

『むろん、構わぬぞ。いざ参ろうではないか』

 グレンはどうやら行く来満々の様だ。

 海のある街と言えば一番近いのはこのタングスティン領のエンサの町だったかしら?

 私はグレンの背に乗りエンサの町に向かった。

 グレンの背に乗り、草原を駆け抜け二つの村を通り過ぎる。

 認識阻害の魔法のお陰で誰も私達に気がつくものはいなかった。

 疎らな林の中を通り過ぎると高台の上から町を見下ろすことが出来た。

 左右に高い塀が広がり、その中にカラフルな町並みが展開している。

 更にその奥には、エメラルドとコバルトブルーの海原が水平線を描いていた。

 潮風が頬を撫で私の藍色の髪を揺らしているのを感じる。

 この世界に来て見る初めての海に感動しながら猫の姿に戻ったグレンと一緒に町の門まで辿り着いた。

 身分証にもなる商カードを見せると難なくエンサの町に踏み入れることが出来た。

「取り敢えず、港をめざそうか」
 そう呟くと私はグレンと共にさっき見えた海の方に向かって歩き出した。

 白い煉瓦造りの石畳の周辺に立ち並ぶパステルカラーの建物をぬって波の音を頼りに海を目指して進む私とグレン。

 心なしかグレンの足取りが軽く感じる。

『海の幸~』

 うん? グレンの独り言……ならぬ独り念話かな?

 よっぽど海の幸が楽しみらしい。

 それにしても海の幸がどんなものか分かっているのだろうか?

 港に近づくと魚の焼ける美味しそうな匂いが漂ってきた。

 グレンの鼻がヒクヒクしたと思ったら瞳がキラキラと輝いたのが分かった。

 美味しいものの匂いに期待を膨らませているのだろう。

 海が見えてくると港を囲うように屋台が並んでいた。

 旅人らしき人や地元民らしき人達が屋台で購入したり、近くのベンチに座り購入したものを食べたりしているのが見えた。

 私もグレンと一緒に一つの屋台に近づいて行った。

 どうやら魚を串に挿して焼いているらしい。

「こんにちは。それって何の魚ですか?」

 私は屋台の上のグリルで魚を焼いている恰幅の良いおばさんに声をかけてみた。

「あら、いらっしゃい。お嬢さんこの町の子じゃないね。この魚はスレイという魚さ。一つどうかね?」

 どうやらスレイという魚らしい。名前を聞いただけじゃ分からないので食べてみることにする。

「じゃあ、二つ貰えますか?」
「二つ? ああ、そこの猫ちゃんの分もだね。猫は魚が好きだからねぇ。でもこの魚は塩がかかっているけど大丈夫かい?

「あっ、大丈夫です。問題有りません」

 グレンはタダの猫じゃ無いからね~。何てったって神獣だからね~。

 心の中でそう答えながら私は魚の串焼きを二つ購入した。

「あの、お魚ってどこに行けば購入できますか?」

「魚かい? 向こうの市場でも買えるけど……あら、今漁船が港に着いたようだね。もしかしたらあの漁船の漁師に言えば捕れたてを安く譲ってくれるかも知れないよ」

 なんと! 漁師さんから直接譲って貰えるらしい。

 いや、ここは敬意を払って漁師様と呼ばせて頂こう。

「ホントですかぁ? 教えてくれてありがとうございます!」

 私は嬉しさのあまり、テンション高めで屋台のおばさんにお礼を言った。

 港に行くと大小様々な船が碇泊していてその中で中間の大きさの船の上で屈強そうな男性達が作業しているのが見えた。

 何をしているのかよく見てみると…………網の中にたくさんの魚!

 おお! 私が追い求めていた魚ではないか!

 どうやらこのお方達は漁師様達らしい。

「あの、漁師様、お魚少し譲って貰えないでしょうか?」

「漁師様ぁ?」

 私が声をかけると怪訝な顔で独りの男性がこちらを振り向いた。

 赤茶の五分刈りに鳶色の鋭い眼差しが私を見据える。

 タンクトップにたくましい筋肉、海の男の特徴の様によく日焼けした肌は太陽の光がよく似合っていた。

「ハハハッ、初めて漁師様なんて言われたよ」

 私の父親ほどの年齢であろうその男性の目線にビクリとしてしまった私を察知した様に彼は大きな笑い声を上げた。

「あっ、あのぉ」

「ああ、悪い悪い、様なんてつけなくていいよ。俺の名前はカイトだ。もちろん、魚なんていくらでもくれてやるよ。今日は大漁で売れ残るほど捕れたからな」

「カイトさん、ありがとうございます。でも、ちゃんとお金は払いますよ。私、これでもお金持ちなんです」

 何てったって領主様から報奨金を頂いたからね。

「いや、いいよ。どうせ余ったら処分するしかないんだ。どれ、今袋に詰めてやる」

「そうだぞ、嬢ちゃんいいから貰っとけ」

 カイトさんの後ろから他の漁師の声が聞こえた。どうやら私達の話を聞いていたらしい。

「今袋持ってくるからちょっと待っててくれ」

 そう言って、カイトさんは船の奥に引っ込むと直ぐに網目状の袋を持って来た。

「この魚は塩を振っただけで上手いんだ。ああ、これはスープにすれば出しが出る」

 一つ一つ魚を大きな網から小さな網の袋に説明しながら入れていくカイトさん。

 私が口を出す間もない。

「ん? これはブラックシュリだな。これはいらんな」
「あーっ! ちょっと待って下さい! それは捨てちゃダメです!」

 私はカイトさんが手に持って捨てようとしたものを慌てて止めた。

 だって、それって黒いけど、前世のものと色は違うけど、どう見ても海老だよね。

 それも車海老。

 捨てるなんて考えられない。

 でも、この国、もしかしたらこの世界では海老は食べないのかしら?

 毒があるとか?

 そう思ってこっそりタブレットで鑑定してみたけど毒はないみたい。

 なら何故?

「嬢ちゃん、これはブラックシュリと言って海虫の一種だぞ。こんなの食べるのか?」

 私はカイトさんの言葉に何となく納得した。

 日本でも虫は毒が無くても食べないよね。気持ち悪いし。

 もちろん、イナゴとか蜂の子とか食べる地域はあったけどとっても少なかった。

 だからきっとこの世界でもそう言う認識なのだろう。

 確かに海老はよく見ると気持ち悪い。足がいっぱいあるし。

 でも食べると美味しいのよ。

 海老フライ、天ぷら、エビチリ、グラタン……

 もう、これはゲットするしかないでしょう。

「あの、カイトさん。私にそれ頂けますか? 食べると美味しいんですよ。よかったら私、お礼に海老……じゃなくてブラックシュリ料理を作りますよ。作る場所を提供して頂ければ」

「本当にそれ食えるのか? 美味いのか?」

 最初は私の言葉を聞いて目を丸くしていたカイトさんだったけど、どうやら興味を持ったようだった。

 私はカイトさんの知り合いのレストランの厨房を借りて海老料理……ブラックシュリ料理を作ることになったのだった。
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