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第七十話 異世界で女子会
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思いもよらずカクオだけでは無くコーフィーまで手に入れる事ができ、ホクホク顔で家に帰って来た。
本当に良かった。これでチョコレートだけではなく、コーヒー……もとい、コーフィーも楽しめる。
徐々ににやけて行く顔がこのまま治らなくなるんじゃないかと言うくらい顔が緩む。
時計に目をやるともう六時近い。外がまだ明るいからそんな時間になっているとは気がつかなかった。
カクオとコーフィーを前に直ぐにでも作業に取りかかりたいけど今からでは夜中になってしまうかも知れない。
逸る気持ちを抑えて、楽しみは明日に取っておくことにした。
厨房に立ち、昨日買った戦利品を前に考える。
さて、まず初めに何を作ろうか?
「うーん、やっぱりチョコレートかなぁ‥‥‥」
薬屋で買ってきたカクオはすり潰し固めたものだ。
瓶の蓋を開けるとカクオの香りが鼻腔に届く。
試しに薬屋のお婆さんに教えてもらった通り、お湯に溶かして飲んでみた。
「うわっ、ニガっ!」
やっぱりこのままでは苦過ぎて飲むのは困難だ。
薬湯と割り切って飲めば良いのかも知れないけど、私が求めているのは薬ではない。
前世のカカオとまったく同じかどうかは分からないが、香りは間違いなく前世と相違ない。
それでは、早速チョコレートを作ってみようか。
カクオを湯煎で溶かし、生クリームと砂糖を混ぜる。カクオの実はかなり細かくすり潰されているようで滑らかだ。
少し味見をしてみるとまだ少し苦いけど、あの懐かしのチョコレートの味に限りなく近い。
更に味見をしながら砂糖と生クリームを追加していく。かなり砂糖を入れたところで満足のいく甘さになった。
こんだけ砂糖を入れたら、太りそうだけど前世なら兎も角この身体は痩せ気味なのできっと大丈夫だろう。
そう自分に言い聞かせ作業を進める。
四角いバットに1㎝弱の厚さになるように均等に流して固めてから食べやすい大きさに包丁で切っていった。
可愛らしい形のチョコレートにしたいけど今はこれで我慢しよう。
一口口に入れると、舌の上でとけてカクオの香りと甘さが口の中に広がった。生クリームを入れたのでまろやかさが出て苦みが大分薄れている。
「おいしい! チョコレートだわ!」
思わず声が出る。
カクオもかなり細かくすり潰されていて滑らかで口溶けもいい。エミュウさんが作った粉砕器のお陰だろう。
前世で食べたミルクチョコレートを彷彿とさせる味に満足しながら笑みを浮かべた。
『カリン、其のことを忘れてないか?』
私がチョコレートに夢中になっていると、今まで大人しく私のすることを眺めていたグレンの声が頭に届いた。
「やあねぇ、グレン。忘れるわけないじゃない」
私がグレンに笑みを向ける。
すっかり忘れてたわ……
「グレンもチョコレート味見してみる? あっ、でも猫にはチョコレート食べさせちゃダメなんだっけ」
『カリン、其は猫ではないのだが』
「ふふふっ、冗談よ」
私は出来上がったチョコレートを数個お皿に乗せてカウンターにいるグレンの前に差し出した。
『これは!』
一口食べたグレンの瞳が輝いた。
無言でチョコレートを食べるグレン。
どうやら気に入ったらしい。
チョコレート作りに満足した私は次にコーフィーを入れて飲んで見る事にした。
コーフィーは豆のままだったのでフードプロセッサーで適度な大きさに粉砕する。
あっ、粉砕したのはいいけどサイフォンは疎かコーヒーメーカーもコーヒーフィルターもないわ。
私は苦肉の策として、ザルの上に以前作っておいたキッチンペーパーを敷いてコーフィーを入れた。
香ばしい香りが部屋に漂う。
やっぱり、お店に置くならサイフォンがいいかしら?
私はコーフィーを入れるための道具を準備すべく思考を巡らした。
出来上がった琥珀色のコーフィーを一口飲んでみると仄かな酸味と強めの苦みを感じた。前世で飲んでいたコーヒーよりもちょっと苦くて飲みづらいような気がする。
もしかしたら、そのせいでクスリとしか認識されていないのかも知れない。
ならば、とミルクと砂糖を入れて飲んでみた。前世で飲んだカフェオーレに近い味になり大分苦さが和らいだ。
クランリー農場のミルクは結構濃いめでコクがあるから苦みを和らげるのに最適かもしれない。
それから私はチョコレート入りのお菓子を作り続けた。
チョコレートケーキ、チョコクッキー、チョコプリン、チョコパイにチョコアイス。
気がついたら、購入したカクオを全て使い果たしていた。
薬屋のお婆さんにはカクオとコーフィーをまた買いに来るから多めに仕入れて欲しいとお願いしたけど限度があるだろう。本当に私が買いに行くかなんてお婆さんからしてみたら確信が持てないだろうし……
こうなったら何とか入手経路を確保したい。
もしかしたら、カクオからチョコレートが作れると知ればもっとカクオの需要が増えるだろう。
うーん、ダンテさん達に相談してみようかしら?
その前に、エミュウさん達にも心配かけちゃったしこのお菓子達もお裾分けしようかな。どうせならお菓子パーティーとか……。
そうだわ、女子会を開きましょう。
異世界で女子会……うん、いいわね。
招待するのは、エミュウさん、フランさん、ロゼッタさん。
ショウとラルクは後でダンテさんにチョコレートの相談をしに行くからその時に持って行けばいいわね。
私はそう決めると早速みんなに手紙を書いて宅送鳥を飛ばしたのだった。
本当に良かった。これでチョコレートだけではなく、コーヒー……もとい、コーフィーも楽しめる。
徐々ににやけて行く顔がこのまま治らなくなるんじゃないかと言うくらい顔が緩む。
時計に目をやるともう六時近い。外がまだ明るいからそんな時間になっているとは気がつかなかった。
カクオとコーフィーを前に直ぐにでも作業に取りかかりたいけど今からでは夜中になってしまうかも知れない。
逸る気持ちを抑えて、楽しみは明日に取っておくことにした。
厨房に立ち、昨日買った戦利品を前に考える。
さて、まず初めに何を作ろうか?
「うーん、やっぱりチョコレートかなぁ‥‥‥」
薬屋で買ってきたカクオはすり潰し固めたものだ。
瓶の蓋を開けるとカクオの香りが鼻腔に届く。
試しに薬屋のお婆さんに教えてもらった通り、お湯に溶かして飲んでみた。
「うわっ、ニガっ!」
やっぱりこのままでは苦過ぎて飲むのは困難だ。
薬湯と割り切って飲めば良いのかも知れないけど、私が求めているのは薬ではない。
前世のカカオとまったく同じかどうかは分からないが、香りは間違いなく前世と相違ない。
それでは、早速チョコレートを作ってみようか。
カクオを湯煎で溶かし、生クリームと砂糖を混ぜる。カクオの実はかなり細かくすり潰されているようで滑らかだ。
少し味見をしてみるとまだ少し苦いけど、あの懐かしのチョコレートの味に限りなく近い。
更に味見をしながら砂糖と生クリームを追加していく。かなり砂糖を入れたところで満足のいく甘さになった。
こんだけ砂糖を入れたら、太りそうだけど前世なら兎も角この身体は痩せ気味なのできっと大丈夫だろう。
そう自分に言い聞かせ作業を進める。
四角いバットに1㎝弱の厚さになるように均等に流して固めてから食べやすい大きさに包丁で切っていった。
可愛らしい形のチョコレートにしたいけど今はこれで我慢しよう。
一口口に入れると、舌の上でとけてカクオの香りと甘さが口の中に広がった。生クリームを入れたのでまろやかさが出て苦みが大分薄れている。
「おいしい! チョコレートだわ!」
思わず声が出る。
カクオもかなり細かくすり潰されていて滑らかで口溶けもいい。エミュウさんが作った粉砕器のお陰だろう。
前世で食べたミルクチョコレートを彷彿とさせる味に満足しながら笑みを浮かべた。
『カリン、其のことを忘れてないか?』
私がチョコレートに夢中になっていると、今まで大人しく私のすることを眺めていたグレンの声が頭に届いた。
「やあねぇ、グレン。忘れるわけないじゃない」
私がグレンに笑みを向ける。
すっかり忘れてたわ……
「グレンもチョコレート味見してみる? あっ、でも猫にはチョコレート食べさせちゃダメなんだっけ」
『カリン、其は猫ではないのだが』
「ふふふっ、冗談よ」
私は出来上がったチョコレートを数個お皿に乗せてカウンターにいるグレンの前に差し出した。
『これは!』
一口食べたグレンの瞳が輝いた。
無言でチョコレートを食べるグレン。
どうやら気に入ったらしい。
チョコレート作りに満足した私は次にコーフィーを入れて飲んで見る事にした。
コーフィーは豆のままだったのでフードプロセッサーで適度な大きさに粉砕する。
あっ、粉砕したのはいいけどサイフォンは疎かコーヒーメーカーもコーヒーフィルターもないわ。
私は苦肉の策として、ザルの上に以前作っておいたキッチンペーパーを敷いてコーフィーを入れた。
香ばしい香りが部屋に漂う。
やっぱり、お店に置くならサイフォンがいいかしら?
私はコーフィーを入れるための道具を準備すべく思考を巡らした。
出来上がった琥珀色のコーフィーを一口飲んでみると仄かな酸味と強めの苦みを感じた。前世で飲んでいたコーヒーよりもちょっと苦くて飲みづらいような気がする。
もしかしたら、そのせいでクスリとしか認識されていないのかも知れない。
ならば、とミルクと砂糖を入れて飲んでみた。前世で飲んだカフェオーレに近い味になり大分苦さが和らいだ。
クランリー農場のミルクは結構濃いめでコクがあるから苦みを和らげるのに最適かもしれない。
それから私はチョコレート入りのお菓子を作り続けた。
チョコレートケーキ、チョコクッキー、チョコプリン、チョコパイにチョコアイス。
気がついたら、購入したカクオを全て使い果たしていた。
薬屋のお婆さんにはカクオとコーフィーをまた買いに来るから多めに仕入れて欲しいとお願いしたけど限度があるだろう。本当に私が買いに行くかなんてお婆さんからしてみたら確信が持てないだろうし……
こうなったら何とか入手経路を確保したい。
もしかしたら、カクオからチョコレートが作れると知ればもっとカクオの需要が増えるだろう。
うーん、ダンテさん達に相談してみようかしら?
その前に、エミュウさん達にも心配かけちゃったしこのお菓子達もお裾分けしようかな。どうせならお菓子パーティーとか……。
そうだわ、女子会を開きましょう。
異世界で女子会……うん、いいわね。
招待するのは、エミュウさん、フランさん、ロゼッタさん。
ショウとラルクは後でダンテさんにチョコレートの相談をしに行くからその時に持って行けばいいわね。
私はそう決めると早速みんなに手紙を書いて宅送鳥を飛ばしたのだった。
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