転生少女は異世界で理想のお店を始めたい 猫すぎる神獣と一緒に、自由気ままにがんばります!

梅丸みかん

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第五十六話 幼馴染み

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 ショウの知り合いかしら? でも、ショウの様子を見ると眉間に皺を寄せて機嫌が悪そうだ。

「あっ、ロゼッタお姉ちゃん!」
 ラルクがその女性を見て叫んだ。

「あら、ラルクね。随分大きくなったわね。久しぶり」
 ロゼッタお姉ちゃんと呼ばれた女性がラルクに微笑んだ。

「ショウとラルクがここにいるってことは、もしかしてクランリー農場でお店を出すの?」
「いや、俺とラルクはタダの手伝いだ。店を出すのはカリンだ」
「カリン……?」
 ショウが私の方を見て言ったので、その女性もこちらに目を向けた。

 焦茶色の勝ち気そうな瞳が私を捉え、私の方に近づいて来た。

「あっ、あの……初めまして、カリンといいます。ショウとラルクのお知り合いですか?」
 
「ええ、幼馴染みなの。ショウとは昔から仲が良いのよ。ラルクも弟みたいに思っているの。私はロゼッタ、町一番美味しいレストランの娘なのよ。よろしくね」

 そうか、あのレストランの……それにしても綺麗な人……

「……はい、こちらこそよろしくお願いします」
 ロゼッタさんの笑顔に見惚れながら私は慌てて挨拶を返した。

 ロゼッタさんが近づいて来て気付いたのだが彼女は私よりも頭一つも背が高い。ショウの背が結構高いのでさっきはあまり分からなかった。

 背が高くてもウエストは細く胸も十分すぎるくらいある。羨ましい体型だ。

「あら、あなた珍しい髪色と瞳ね。もしかして外国から来たのかしら?」
「えーと、はい、そうなんです」
 私はロゼッタさんにそう答えながら「たぶん」という言葉を飲み込んだ。

「そう、それにしてもショウとラルクと随分仲が良さそうね」
 そう言ったロゼッタさんに私は思わずハッとした。

 こっ、このパターンはショウに好意がある幼馴染みの女性が横から入り込んできた謎の美少女(私の事だけど)に牽制するシーンではないかしら?

 物語でよくあるよね。

 そう思って身構えたのだが、ロゼッタさんはまったく思いも寄らぬ言葉を発した。

「よかったわぁ、あなたのようながショウのそばにいてくれて。ショウったら無愛想だし、感情がすぐに顔に出るのよ。それに、あまり他人に心を開かないから心配していたの。これからもショウをよろしくね。と言っても私がお願いする義理じゃないけどね」

 そう言って微笑むロゼッタさんを見ると本心から発した言葉に感じた。

 どうやら私の心配は杞憂だったらしい。牽制どころか私がショウのそばにいることを心底喜んでいるように見える。

「ねぇ、カリンちゃん。私の家でもスープの店として出店するからよろしくね。暑い夏にピッタリの冷製スープを出すのよ」

「そうなんですね。こちらこそよろしくお願いします」
 私はロゼッタさんに軽く頭を下げた。

「ねぇ、ところでショウはどういう経緯でカリンさんのお店を手伝っているの?」
「関係無いだろ?」
 少し離れた場所にいるショウにロゼッタさんの質問が飛んだ。

 ロゼッタさんの質問に対してショウは睨むような目を向け冷たく答えた。

 その様子に私は首を傾げる。

 あれ? さっきロゼッタさんは昔から仲が良いと言っていたわよね。それにしてはちょっとショウの態度が冷たいような……

 ああ、でもショウって最初に私に会ったときもあんな感じだったような気がするわ。久しぶりに会って緊張しているのかしら?

「クスクスッ、ショウったら久しぶりに会ったもんだから照れちゃって。まあ、いいわ。ねぇ、カリンさん、私にもアイスクリーム、貰えるかしら。もちろん後で私の店に来てくれればスープを提供するわ。実際にお店をやっているのは私の両親だけど」

「もちろん、アイスクリーム食べていって下さい」

 そう言って私はロゼッタさんにアイスクリームを渡した。
「あら、美味しいわね。これはクランリー農場の牛乳を使っているのかしら?」

「はい、牛乳だけじゃなく卵も使っています」
 やはりロゼッタさんはレストランの娘だけあってしっかり素材まで吟味しているようだ。

「綺麗な子がいると思ったらロゼッタね」
「あら、ほんとだわぁ。そう言えば、アルスさんが今年も出店するって言っていたわねぇ」

「こんにちは、エミュウさん、フランさん。父から出店のこと聞いていたんですね」
 エミュウさんとフランさんもロゼッタさんと顔見知りらしい。

 アルスさんと言うのはロゼッタさんのお父さん。と言うことは『町一番美味しいレストラン』の店主なんだろう。

「こうしてみると今年の『精霊姫』はきっとロゼッタねぇ」
「うん、私もそう思う。ロゼッタ綺麗になったものねぇ。エントリーしているんでしょ?」
「ええ、もちろんよ。エミュウさんとフランさんにそう言って貰えると嬉しいわ」

 ん? 精霊姫? 何のことかしら?

 私は、エミュウさんとフランさんがロゼッタさんと話している内容に首を傾げた。

「ああ、カリンちゃんは初めてのお祭りだから知らないのかもね。この祭りは大地の精霊を奉る祭りなのよ。毎年お祭りでは『ミス精霊姫』が選ばれるの」
「そうなのよぉ。15才~20才までの女性がエントリーするのよ。『精霊姫』に選ばれると様々な特典があるのよねぇ」

 私の様子に気がついたエミュウさんとフランさんが説明してくれた。

 どうやら『ミス精霊姫』というのは前世で言う『ミスコン』のようなものらしい。

「特典?」
「そう、ミス精霊姫に選ばれると領主様が開催する晩餐会に呼ばれるのよ。もちろん、領都までの旅費はタダ。絶対に選ばれてみせるわ!」
 そう言ったロゼッタさんの瞳は闘志に燃えていた。

「カリンちゃんも15才になったらエントリーするといいわ」
「そうねぇ、カリンちゃんはこれからどんどん綺麗になりそうだし、きっと精霊姫になれると思うわ」

 エミュウさんとフランさんがそう言ってくれたが、私はあまりミスコンには興味がない。それに晩餐会にもそんなに出たいとは思わない。只、晩餐会で出される料理には興味があるが……

 私はエミュウさんとフランさんの言葉に苦笑するしかなかった。
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